» 上場かM&Aか

2017年8月24日

インクグロウの照井です。企業経営者が、自身の『EXIT戦略』や『創業者利益』を考える際には、株式上場するか、M&Aをして売却するか。というこの二択が主な方法であります。

それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのかここで整理していきたいと思います。

 

株式上場の場合

まず株式上場についてです。過去にここのコラムで記載のとおり(過去のコラムをこちらをクリック)非常に手間と時間とお金がかかります。それで株式上場出来れば、その苦労も報われるのだろうが、なかなかその壁が高いのも事実です。ここ最近の株式上場数を見ていくと、2011年36社、2012年46社、2013年54社、2015年92社、2016年83社と推移して今年は、今のところ約50社が新規上場している。(上場承認企業含む)このようにみると確かに上場企業は増えてきていると思います。ただし、実際に上場を目指す企業数を考えるとまだまだ狭き門であるといわざるえないです。

私自身、今のM&Aのアドバイザー業務を行う前は、証券会社で引受業務(証券会社の中で株式上場の支援をする部署)を行ってきた。その経験からいくと、上場を目指し、証券会社と契約し、監査法人なども決めて動き出す企業のうち、実際に株式上場までたどり着く企業は、10社に1社程度(もしかするともっと確率は低い)です。つまり、2年から3年後あたりに上場出来るだろうと準備を開始するような企業の中でも10社に1社くらいしか株式上場出来ないものです。だからといって、株式上場を目指すべきではないというわけではありません。もちろん、たとえ株式上場出来ないとしても、その準備の過程に非常に意味があるものもあります。例えば、株式上場の際に必ず必要となるコーポレートガバナンスの強化というものがあります。これは、今までの個人的経営から組織的経営へ制度を整えていくためには必要なことです。またそれを体系的に行うことが出来ることが上場準備の素晴らしいところでもあります。また、監査法人を入れることによって、今までの税務的な考え方とは違う会計的視点を加えることで自社のバランスシートを見直すことも非常に意味があることであると思います。例えば、今まで2年以上赤字の店舗の店舗資産も、バランスシートの資産にあげていたとしたら、その資産を会計上は減損として資産価値を認めてもらえません。つまり、利益が出ない資産は、資産価値がないという判断をされるのであります。このように自信の資産を今一度見直すだけでも、今後の経営を考えた際には意味があることだと思います。このように上場準備をすることは、メリットもありますし、実際に株式上場出来れば、資金調達の他、人材採用や営業面においてもプラスのメリットがあります。

デメリットとすると、株式上場には間接費用がかかることである。いざ上場するとなると、監査法人の監査が必要になるし、コーポレートガバナンスの強化の為に内部監査室や、常勤の監査役などが必要となります。また、管理部門についても、今まで一人でやっていた経理業務を出納担当と記帳担当を分ける必要が出てきたりと費用がかかる。一般的には、年間コストが約1億円くらいあがると考えておいたほうが良いと思います。現在それを払っても十分な利益がある場合は行えば良いが、それで利益が無くなってしまうことがあるのであれば、元も子もありません。もっと収益力を上げてトライするほうが得策であるといえます。

 

M&Aの場合

では、M&AでのEXITの場合を考えていきたいと思います。

最近のソラコムBAKEなどアーリーベンチャーのEXITを見ていると、ただ単に、創業者利益のEXITというよりも、自社をより成長させるために、そのノウハウを持っている企業と組み、さらなる成長を図っていくという意味合いが強いです。実際に、M&Aした後も経営者で残って経営を行ったりするケースが多いのも事実です。

 

M&Aは、「時間を買う」という概念で語られることが多い。これは、今までは、買収側が成長するために、すでに基盤のある企業を買うことによって、成長するという意味合いで語られることが多かったからです。しかしながら最近の事例を見ていると、売却側が成長するために、買収側の経営資源などのインフラを利用するために、売却するという売却側からみた「時間を買う」ということのケースが増えてきています。先にあげた、BAKEなどは、インタビューの中で、株式上場するために、創業者の父親の会社であり自身も株主である、きのとやとの関連当事者取引の問題を解消するために株式を売却したのが一つの理由であると語ってます。また、売却先であるポラリスキャピタルのもつバックアップも期待してということも言ってます。このように自社が成長していくために、それを得意としているところと手を組むためにM&Aするということをいってます。

 

さて、最初の創業者利益に戻り、株式上場とM&A について再度考えていきたいと思います。ここで大切なことは自社をどのように成長させていくか、自社の経営理念を実現するためにはどのようにすべきかということがまずあって、そのための手段として株式上場を目指すのか、M&Aを行うのか、はたまた、一部だけ売却してその後株式上場を目指すのかなどと考える必要があります。その結果の創業者利益なのだと思います。このように色々な方法がある中でじっくりと戦略を練って実行することが大事ですし、専門家に相談して、それぞれの場合どうなるかということをシミュレーションすることが大事だと思います。

 

インクグロウ㈱

取締役 照井 久雄

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