» 中期経営計画の作り方 ~会社を成長させられる経営計画とは~

2016年12月22日

【目次】

1.会社の成長に繋がらない中期経営計画とは

2.会社の成長に繋がる中期経営計画の作り方

3.まとめ

 

1.会社の成長に繋がらない中期経営計画とは

せっかく中期経営計画を作るのであれば、意味のあるものにしたいですよね。しかし、私がこれまでに恐らく1000人以上の企業経営者とお会いし、様々な経営相談にのらせて頂いてきた中で、「企業成長に繋がる」中期経営計画を作っていたという経営者は本当に一握りです。そもそも中期経営計画自体を作っていないという経営者が大半ですが、作っている経営者の中でもその大半は企業成長に繋げられるようなものにはなっていません。

私は、中期経営計画は企業成長のために作るべきものであると考えています。そこで、今回は企業成長に繋げられる中期経営計画の作り方をお伝えしてまいります。

さて、ではまず企業成長に繋がらない、よく作られている経営計画について考えていきます。何故多くの経営者が作っている中期経営計画は企業成長に繋がらないのでしょうか?


失敗経営計画パターン① 数値計画のみ

今期実績 2017年 2018年 2019年
年商 1億 2億 3億 4億
営業利益 500万 1000万 2000万 4000万
純利益 100万 500万 1000万 2000万

例えば上記のような経営計画を作ったとします。これを作っただけでこの通りにいくとすればそんなに楽なことはないのですが、当然そんなうまい話はありません。

<うまくいかない理由>

  1. 3年間毎年1億円ずつ売上を伸ばすにはそれだけの行動が伴わないといけませんが、その行動が明確になっていないため、場当たり的な活動に終始し、終わってみれば全く計画通りにいかなかった、となる。
  2. 何故・何のためにこの計画を実現したいのかが見えないため、これを見た人が社長の味方になってくれないかもしれない。

失敗中期経営計画パターン② 具体的な計画に落とした「つもり」

今期 2017年 2018年 2019年
年商 1億 2億 3億 4億
営業利益 500万 1000万 2000万 3000万
純利益 100万 500万 1000万 1500万

◆2017年に売上を1億円伸ばすために、新規のお客様を新たに100社開拓する

◆5%の営業利益率を2019年に10%にするために、営業利益率15%の商品を新たに開発する

一見すると具体的な計画に見えますが、数値計画の延長線上に過ぎません。実際にはこのような経営計画を作っている経営者が一番多いと感じます。

<うまくいかない理由>

  1. 100社の新規客開拓、営業利益率15%の商品開発の具体的な方法が明示されていないため、結局場当たり的な活動になることに変わりない。
  2. 具体的な方法が考察されていないということは、即ち計画の実現性が検証されていないということのため、いざ動いてみれば全く思うようにいかず、非現実的な計画であったことに後から気づくことになる。

失敗中期経営計画パターン③ 戦術に終始している

今期 2017年 2018年 2019年
年商 1億 2億 3億 4億
営業利益 500万 1000万 2000万 3000万
純利益 100万 500万 1000万 1500万

◆2017年に売上を1億円伸ばすために、新規のお客様を新たに100社開拓する

→飲食店10万店舗にDMを送り、内1000社に提案して100社から契約を獲得する

◆5%の営業利益率を2019年に10%にするために、営業利益率15%の商品を新たに開発する

→商品開発部に人員を二人追加し、3月までに新しい商品を開発する

計画は具体的になっていますが、戦術に終始しているため、そもそもこの方向性で正しいのかが検証されていません。100キロ先に1時間で行くために時速100キロではちゃんと走っているものの、そもそも進んでいる方向が間違っていてゴールにたどり着かない可能性があります。

<うまくいかない理由>

  1. 飲食店100社を開拓ができる根拠がなく、即ち自社の商品にそれだけのニーズがあるのかが検証されていない=戦略がない
  2. どのような業界で、その業界にはどのような課題があり、即ちそこで新しい商品を開発すれば15%の営業利益率の可能性があり、そのために適した人材を2名増員する、というような戦略がないため、増員した2名が全く畑違いだったとなってしまうかもしれない。

 

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2.会社の成長に繋がる中期経営計画の作り方

これまでに記載してきた各<うまくいかない理由>を改善することで、会社の成長に繋がる中期経営計画を作ることができます。具体的にご紹介してまいります。

 

 

何故・何のために計画を実現したいのか

中期経営計画を策定するにあたっては、戦略から作る方法や戦術から作る方法、あるいは数字から作る方法など色々ありますが、どのやり方にしましても営利企業である以上は定量的・定性的な目標は設定されると思います。今回は分かりやすいように、数値計画をまず掲げてからの中期経営計画への落とし込みを行う方法をお伝えします。

今期 2017年 2018年 2019年
年商 1億 2億 3億 4億
営業利益 500万 1000万 2000万 3000万
純利益 100万 500万 1000万 1500万

このような数字計画を実現したいと考えるとします。とすると、まず考えるべきは、何故・何のためにこの経営計画を実現したいのかを明確にすることです。

1.経営理念を明確にする

中期経営計画には前提として、その核となる経営理念が必要です。そもそも何故・何のために自社は存在しているのでしょうか。会社が存在している理由と、今後も継続して存続し続ける目的こそが経営理念です。いくつか、素敵な経営理念をご紹介します。

  • アマゾンジャパン 「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
  • 京セラ 「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」
  • オリエンタルランド(ディズニーランド運営企業) 「自由でみずみずしい発想を原動力に、すばらしい夢と感動、ひととしての喜び、そしてやすらぎを提供します。」

これらを追求し続けることこそがその企業が偏に存在し、尚且つ発展していく理由であり、極論を言えば、仮に京セラの全従業員の物心両面の幸福が完全に満たされ、人類、社会の進歩発展が完了したとすれば、京セラとしての存続理由も終わるということになります。しかし、経営理念というのは完了することを前提としないため、上述のように全従業員の物心両面の幸福が完全に満たされることなどは永久にないでしょうし(追求し続ければいくらでもよくなる余地はあるはず)、人類、社会の進歩発展が完了するときなど来ることもない訳ですから、それをひたすら追求し続けるということになります。そして、その活動が市場のニーズに合致し続けられれば、企業は発展し続けるということになります。

会社としての根本の存在意義と活動理由が経営理念です。

中期経営計画 ~経営理念を明確にする~

2.事業ドメインを考える

経営理念を明確にしたのちに考えるべきは、それを実現するために自社で具体的に事業展開するフィールドを定義するということです。これを考えるときには、「自社は何業か?」という質問をすることが効果的です。

例えば橋を作ることを主な事業とする会社がいたとします。この会社は、業種でいえば橋梁建設とか土建というような分類になるのだと思います。しかし、その会社が自社の事業ドメインを、業種分類と同様に定義してしまうと、それが結果的に自社の成長機会を逸することに繋がる可能性があります。

事業ドメインを考えるときは、自社が何を作っているかとか、物理的に何を提供しているか、というような自社目線ではなく、顧客やユーザーは、自社が提供している商品やサービスを通じて、どのような恩恵に授かっているか、という顧客目線で考えることが必要です。

橋を作っている会社は、物理的には確かに橋を提供しているのですが、橋を使う人たちは、そのコンクリートの塊には関心ありません。利用者は、橋が作られたことにより、隣町への移動が遥かに容易になり、結果として生活が豊かになるとか余剰時間が増える、というような恩恵に授かっていて、それこそが橋を作っている会社が本来定義すべき事業ドメインです。そして、そのように定義することで、橋を作る以外の事業にも参入し、会社としての成長の幅を広げられるのです。

中期経営計画 ~あなたの会社は何業か~

3.企業は環境適応業でなければならない

中期経営計画を策定する上で、気をつけなければならないことは、「企業は環境適応業でなければならない」ということです。自社がどうあるとは無関係に常に時代は流れています。例えばゲーム業界。昔は各家庭にゲーム機が置いてあって家で遊んでいました。しかし、今は通勤時間の暇つぶしに電車内でスマホのゲームアプリをする、通信できる携帯ゲーム機で友達と協力プレイするなど利用シーンが変わってきました。時代が変われば顧客のニーズが変化し、利用シーンが変わったり、そもそもニーズがなくなったりします。過去何故自社は成長できたのか(あるいはできなかったのか)、今後環境はどう変化するのか、今後の環境を踏まえて自社はどう適応するのか、などを踏まえた上で経営計画を策定する必要があります。

中期経営計画~企業は環境適応業でなければならない~

4.経営ビジョンを策定する

中期経営計画を作るタイミングというのは企業の目的やビジョンを明確にする良い機会です。貴社の企業経営の目的、すなわち企業理念は何でしょうか?上記数値計画を実現できると、その目的にはどれぐらい近づけるのでしょうか。どれぐらいの社会的インパクトを実現できるのでしょうか。会社の各利害関係者たちはどのような恩恵に授かることができるでしょうか。例えばお客様にとってはどのようなメリットがあるでしょうか。従業員の労働環境はどのように改善できるでしょうか。株主にはどのように還元できるでしょうか。

経営ビジョンの定義は、『経営理念のもと、自社の目指す将来の具体的な姿を社員や顧客社会に対して表すもの』です。経営理念は、社長の想いや会社の存在意義を明文化した普遍的なものですが、経営ビジョンは経営理念に沿った形で一定期間ごとの展望を社内のみならず社外に対して「見える化」してより具体的にあるべき姿を設定していくものです。『ビジョン』とあるように、鮮明に画像としてイメージできるようなものにすることが望ましいです。

(中期経営計画 ~経営ビジョンを策定する~)

 

前提としまして、中期経営計画は経営者だけが見るものではなく、人に見せるべきものです(中期経営計画を公開すべき理由)。しっかりと作られた中期経営計画は様々な用途に活用することができます。金融機関に見せれば融資が受けられやすくなります。従業員に見せればモチベーションを上げられたり、会社と個人の向かいたい方向性を一致させることができたりします。取引先に見せれば取引の条件に反映させられるかもしれません。株主に見せれば経営者の考えについて理解を得られやすくなるでしょう。

このように人に見せることを前提に、ただ「成長したい!」とか「もっと稼ぎたい!」というようなある種表面的な理由は、それはそれで大事なことではあるのですが、見せた人に応援してもらえるような、より本質的な「何故・何のために」を明確にすることが大切です。

 

<会社の成長に繋がる理由>

  1. 会社の利害関係者たちを自社の応援団にすることができ、様々な協力を得やすくなる
  2. 数字に対する健全な理由があることで、数字に対する健全な執着心が生まれる

①戦略(=誰に何を販売するのか)を明確にする

戦略と戦術の違いをまずご説明します。wikipediaに大変分かりやすい説明がありますので、引用します。

戦略は戦闘部隊戦場で優位に立てるようにするための巨視的な策略であり、<中略>これに対応して戦術は戦闘において勝利を得るために部隊を運用する術

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E7%95%A5

戦略・戦術という言葉はそもそも戦争用語です。上記の説明を企業用語に直すと以下のようになります。

「戦略は企業が競争市場で優位に立てるようにするための巨視的な策略であり、これに対して戦術は競争市場において優位を保つために組織を運用する術」

要するに戦略とは企業の向かうべき方向性を定めることで、戦術とはその決めた方向に辿り着くための方法を定めることです。

では、戦略=企業の向かうべき方向性を決めるとは具体的に何を示すのか。それは、「誰に対して、何を販売するのか」です。企業活動とはドラッカーが言うように「顧客の創造」=誰かに対して何かを販売する、ということです。ですから、誰に対して何を販売するのかを定めることが、即ち会社の向かう方向性を定めることになります

中期経営計画の策定を支える様々なフレームワーク

これを考えるときに大事なのが「検証」です。戦略を考察する際には、その根拠を明確にしないといけません。

例えば、個人経営の飲食店に対してITを駆使した販促商材を販売する、とします。飲食業界という競争市場の中で、この戦略はどのように企業を優位に立たせてくれるでしょうか。

・個人経営されている飲食店の多くは、経営者が現場に入っているため、まともに販促を行う時間がない

・こぢんまりと夫婦経営している店が多く、販促費をあまりかけられない

・設備投資ができるような資本を有していない

・個人店の数はここ5年間減っておらず、今後も横ばい傾向と推定されている

・1か月に一度販促計画を専用端末に入力するだけで1か月分の販促が自動的に行われる

・その結果を元に翌月の販促計画を大まかにサービスが提案してくれる

・クラウドサービスとすることで販促費用を抑えることができる

・予めかける販促予算を定めて、その中で使用することができる

・端末に広告を表示することで、端末は無料で貸出することができる

・これまでにこのようなサービスは存在していない

※これらは事例のために記載したもので、事実とは異なります

仮にこのような根拠がそろっていたとすれば、前述の戦略を遂行することで飲食向けの販促業界において優位性を確保できるかもしれません。このように、戦略を予め検証し、それを実現できるという根拠を示すことが重要です。

検証・根拠のない戦略では、例えば動いてみたらそもそも市場にニーズが全く無かったり、すでに同じような商材が業界で広まっていたり、縮小市場のためせっかく頑張って広めても導入先が減っていく一方になってしまったり、と会社の状況をむしろ悪化させる方向に進ませてしまいかねません。

②戦略を考える視点

戦略を考える際には、いくつかの視点を持つ必要があります。

特に他社との関係性などを検討して、現状分析と競争戦略を考える必要があります。また、それにあたり、現状分析をする必要があります。

現状分析する際の視点は、例えば3Cモデルなどを活用しながら整理をしていきます。

3Cモデルとは、

プレイヤーを市場(顧客:Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)と3つの視点から分析する手法です。

また、競争戦略などを考える際には、マイケルポーターのファイブフォースモデルが有名です。

これは、以下の5つの競争要因から自社の取りうる戦略を検討する方法です。

(1)新規参入の脅威

(2)代替品の脅威

(3)供給業者の交渉力

(4)買い手の交渉力

(5)競合企業の競争

中期経営計画 現状分析~競争戦略

<会社の成長に繋がる理由>

  1. 事実に基づいて根拠を検証しているため、戦略がうまくいく可能性が高い
  2. 方向性が明確なので、従業員がついてきやすい

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戦術を明確にする

戦術とは、先に記載の通り「競争市場において優位を保つために組織を運用する術」です。結局はどれだけ綺麗・完璧な戦略が描かれていたとしても、それを実行できないことには意味がありません。組織をより効率的に、効果的に運用し、実現したいことを実現していく必要があります。

よく経営者から、経営コンサルティングなんて意味がない、というような話をお聞きします。私も対象が中小企業であることを前提として、これには2つの理由で同意します。

①実行力が伴わない

例えばとてつもなく頭の良い人たちが、市場や競合を隅から隅まで調査し、そして貴社のことも調べ上げたうえで、その強みを最大限に発揮できるであろうマーケットを探り当て、そこで競争的優位を実現する方法を提案してくれたとします。その通りにやれば、そうなるのだと思いますが、多くの中小企業ではそれに組織が付いてこないため、結局やるべきことができずに、ピカピカの戦略が絵に描いた餅で終わってしまいかねません。

②費用対効果を見出しづらい

上述のようなピカピカの戦略を検討しようと思えば相当の費用をコンサルティング会社にはお支払いする必要がありますが、それに対して中小企業はそもそも事業規模が小さいため、それを実行した際の収支インパクトが必ずしもコンサルティング費用を支払っても十分というぐらいにまではならない。

戦術は、戦略を実行するためにどのように組織をよくしていくか、ということなので、現状の組織が力量不足であったとしてもそれを改善する前提で考えればよいのですが、一方で自社組織はあくまで俯瞰して見ることが大事です。戦略を実行するのに100の力が必要だとして、自社の力が50しかないとすれば、50を挽回する戦術を考察するのと同時に、そもそもの戦略の実現性を検討し、場合によっては、戦略自体を見直して70の力でも実行できるものに修正することも考えないといけません

中期経営計画を策定する際には、戦略に戦術を合わせるという考え方が一般的ではありますが、実行できない経営計画ほど意味のないものもありませんので、自社の組織力を決して過信せずに、戦略がピカピカすぎる場合には、少し戦略のレベルを落とすことも経営者として大事な判断となります。

さて、戦術=組織の考え方ですが、まず組織は個々人の集合体ですから、一人一人の能力が高まれば組織は当然パワーアップしますので、個々人の能力向上が必要です。また、組織としてやるからには、100の力を持つ10人が集まって10,000の力を発揮する、という人材シナジーを追求します。具体的には、組織自体をどのような形で運営するかという組織設計(組織図)と、組織の力を最大化させる空気=風土を検討します。

<会社の成長につながる理由>

  1. 成長戦略がちゃんと実行される、実行できるようになる
  2. 組織・ヒトの育成には時間がかかるため、戦術を中期経営計画に落とし込むことで、計画的に育成していくことができる

3.まとめ

会社の成長に繋がる中期経営計画とは、一言で言えば「改善」です。

企業が成長していくということは、即ち今年以上のことを来年以降にやっていくということですから、同じことをやっていてはそれを実現できるわけもなく、これまでの成功を捨ててでもチャレンジして改善していく、ということが必要です。

その改善すべきことを、具体化し、それに根拠を付加し、そして実行計画にまで落とし込むことで、はじめてその中期経営計画は会社の成長に繋がってきます。

年末年始は良い機会ですので、会社の成長に繋がる中期経営計画をおつくり頂いては如何でしょうか。

執筆担当:インクグロウ株式会社 中原 陸

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