» 総合メディカルとみよの台薬局のM&Aが持つ意味とは?

テーマ総合メディカルとみよの台薬局のM&Aについて

調剤薬局業界を揺るがした、総合メディカルとみよの台薬局のM&A。

 

「両者は今後どうなるのか?」

「このM&Aが調剤薬局業界に与える意味とは?」

「調剤薬局業界は今後どうなるのか?」

 

など、各分野の専門家がプロの視点で解説いたします。

「総合メディカルとみよの台薬局のM&Aが持つ意味とは?」

2016年12月14日
平川智章

M&Aアドバイザー
インクグロウ株式会社 事業戦略部 サブマネージャー M&Aシニアエキスパート 1984年1月生まれ 新卒で入社した会社で中小企業の販路拡大支援業務、フランチャイズの法人営業業務を行う。その後、グループより独立したインクグロウに転籍し、中小企業を中心としたM&A仲介業務を行っている。 北海道東北、関東、関西、東海など全国の企業から依頼を受け、M&A仲介業務を行っている。

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【調剤薬局業界とは?】

調剤薬局業界について、そもそもの成立から説明いたします。調剤薬局業界の勃興は1970年代までさかのぼります。「医薬分業」という言葉が、調剤薬局の始まりに深く関わっています。

 

「医薬分業」とは、医師が診療を行い、薬剤師が調剤を担うことです。それぞれ分かれて専門性を活かすことにより、質の高い医療を提供しようという考え方です。ヨーロッパでは1200年代から存在する考え方ですが、日本では歴史が浅く、明治時代に考え方が伝わりました。そのような流れの中、日本でも1970年代に調剤薬局が生まれました。

 

調剤薬局誕生後、20年近くは個人経営がメインでした。1990年代から徐々にチェーン化が始まり、2000年代からM&Aによる買収・合併が盛んになっていきました。今では最もM&Aが盛んな業界と言われ、年間1000店舗近いM&Aが行われています。

とはいえ、調剤薬局は全国に57000店舗あります。(参考までにコンビニは54000店舗です)元々はほとんど個人経営であったため、統合はまだまだ途中に過ぎず、上位10社の合計シェアも15%前後なのが実情です。薬価が仕入れ量に大きく影響する、スケールメリットを活かしやすい業界であるため、M&Aによる統合は今後も進んでいくと想定されます。しかし一方で、法改正等のリスクも孕んでおり、どこまで大手が買い続けるかというのは不透明な部分があります。

 

 

【総合メディカルとは?】

ここで買い手である総合メディカル社(http://www.sogo-medical.co.jp/)についておさえておきましょう。総合メディカル社は福岡市に本社を置く、年商1200億、経常利益60億をあげる東証一部上場企業です。最大株主は三井物産株式会社で25.5%を保有しています。事業分野は大きく以下の3つで構成されています。

一つ目は、医業支援。医療機関向けの経営コンサルティング、医師の開業、転職を支援するDtoD業務、医療機器、テレビ等の病院向けのリース業務等を行っています。

二つ目は、調剤薬局。そうごう薬局をはじめ、全国に600店舗近くを展開しています。

三つ目は、介護事業。住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホーム等を運営しています。

 

売上構成は、

・医業支援:19.3%

・調剤薬局:79.8%

・介護事業:0.9%

となっており、調剤薬局事業が最も大きくなっています。元々は、医業支援の病院向けリース業務から始まった企業ですが、1988年に薬局事業、2001年に医師の開業・転職を支援するDtoD業務、2011年に介護事業をスタートし、現状の売上構成となっています。

2016年3月期の年次報告書(http://www.sogo-medical.co.jp/ir/pdf_ent/38_nenji.pdf)では、「日本型ヘルスケアビジネスへの挑戦」を掲げています。「日本型ヘルスケアビジネスへの挑戦」とは、国民が効率的に質の高い医療を受けることができる医療システム構築のことです。これを実現するための中期的な重点施策として①医療モールの進化、②病院の経営支援、③価値ある薬局の創造をかかげています。

 

 

【調剤薬局業界内での総合メディカルの位置づけは?】

総合メディカルももちろん調剤薬局大手の内の1社になります。以下のサイトに記載されている、業界の売上高ランキングを見ると売上高は業界4位となっていることが分かります。

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https://pcareer.m3.com/plus/article/sales-pharmacies-ranking-2014/

 

このランキングで注目すべきは対前期増減率です。ほとんどの会社が10%以上になっています。先にM&Aが最も盛んな業界と記載しましたが、前年比10%以上の売上アップをしないと置いて行かれる、非常に競争の激しい業界であることが分かります。売上高で見ると、総合メディカルは4位ですから、上位企業に追いつき、追い越そうとするならば相当なスピードでの成長が必要になります。

 

 

【総合メディカルの今後の経営方針、M&A戦略とは?】

総合メディカルの経営に話を戻します。年商1200億、経常利益60億をあげていると記載しましたが、その内訳をみると売上高の8割、営業利益に至っては9割以上を調剤薬局事業が占めていることが分かります。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方から行けば、調剤薬局事業は「花形製品」に位置するでしょうか。「花形製品」とは、シェアを維持し続けることで「金のなる木」に育てたい、一方でシェアが低下すればとたんに「負け犬」になってしまうというポジションです。そう考えると、総合メディカル社は調剤薬局事業のシェアを維持し続け利益を確保し、その間に医療モールなどの新規事業分野を立ち上げようとしていると想定されます。

 

 

【総合メディカルとみよの台薬局のM&Aが持つ意味とは?】

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みよの台薬局は、調剤薬局91店舗を展開する売上高約130億円の企業です。この買収により総合メディカルの売上規模は1300億円を超え、店舗数は700店舗に迫ると予想されます。店舗数ベースで言えば、おそらく業界2位になると思われます。このM&Aにより、業界上位の競争に更なる拍車がかかる見込です。

この買収の行方はもちろんですが、調剤薬局業界自体がこの買収を受けてどのように変化していくのか、非常に注目であると思います。

その他専門家コラム

  • 「総合メディカルとみよの台薬局のM&Aについて」

    漆山伸一

    公認会計士

    公認会計士、税理士、証券アナリスト。監査法人トーマツ、デロイトトーマツコン サルティング合同会社を経て独立、漆山パートナーズ会計事務所(現税理士法人 漆 山パートナーズ)を設立。現在、株式会社アットタックの代表も務め、会計税務業 務、企業再生、事業承継、M&A、海外資産運用サポートなどのコンサルティング業務 にも多く携わる。その他、上場企業の取締役も歴任している。

  • 「総合メディカルによるみよの台薬局グループの買収」

    中島成

    弁護士

    昭和34年8月生 東京大学法学部卒 裁判官を経て昭和63年4月弁護士。中島成総合 法律事務所を主宰。日本商工会議所・東京商工会議所「会社法制の見直しに関する検 討準備会」委員、東京商工会議所「経済法規・CSR委員会」委員等を務める。平成 16年度まで中小企業診断士試験委員(経営法務)。全国地方銀行協会研修所などで の講演多数。『図解 会社法のしくみ』(日本実業出版社)『民事再生法の解説~企 業再生手続~』(ネットスクール)など著書多数。