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テーマコロワイドがフレッシュネスバーガーを買収

2016年10月14日、外食大手である株式会社コロワイド(証券コード:7616)は、ハンバーガー国内大手のフレッシュネスネスバーガーを展開するフレッシュネスを買収しました。コロワイドは傘下のレインズインターナショナルを通じて、フレッシュネスの株式を取得しました。

何故、コロワイドはフレッシュネスを買収したのか、この買収の形態はどんなものであるのか、そして、両社の戦略とは。

今回はM&Aに長く携わっておられる3名のプロの視点で解説していきます。

「コロワイドのフレッシュネス買収について」

2016年12月26日
小笠原耕司

弁護士
小笠原 耕司(おがさわら こうじ) 弁護士 一橋大学法学部卒業。東京弁護士会。 現在、小笠原六川国際総合法律事務所代表弁護士を務めるほか、青山学院大学講師(商法)東海大学法科大学院非常勤講師(エンターテインメント法)を務める。全国各地の企業にて企業法務の実務に即したものから、社員のメンタルヘルスや労務管理等、人材面を主眼とした法律問題まで、幅広く講演会、セミナーを行っている。 専門は会社顧問業務、企業法務、事業再生、M&A等幅広い。

レインズ社が、フレッシュネス社が営む外食事業を譲り受けることが正式に発表されました。

平成28年10月14日に居酒屋・レストラン事業を営む株式会社コロワイド社(以下「コロワイド」)傘下の株式会社レインズインターナショナル(以下「レインズ社」)が、ユニマットグループ傘下の株式会社フレッシュネス(以下「フレッシュネス社」)が営む外食事業を譲り受けることが正式に発表されました。

レインズ社は、焼き肉チェーン店の「牛角」、しゃぶしゃぶチェーン店の「温野菜」等を主力ブランドとして保有するフランチャイズ運営会社であり、その店舗数は国内外含め1300店舗を超えています(2016年1月時点)。コロワイドグループが全体で営む店舗数の約半分をこのレインズ社が営んでおり、グループの中でも特にFCに関してノウハウを持つ中核会社として位置づけられます。レインズ社は、その有するFC運営のノウハウを生かして、フレッシュネス社の主力ブランドであるFRESHNESS BURGERのエリア展開・出店を加速することで、事業成長を実現させることを企図した模様です。FRESHNESS BURGERのブランド力に比して、未出店地域があるなど出店が限定的であり「もったいない」との考えが根底にあるようです。

今回のM&Aの手法

今回のM&Aの手法として、レインズ社はフレッシュネス社に対象事業を新設分割で切り出してもらい、その新設会社の株式を取得するスキームを選択しています。このような手法がとられた理由は、フレッシュネス社がもともと飲食業をメインに設立された会社ではないことが大きく起因しているように思われます。すなわち、同社は、1981年に株式会社アメリカンクリエーションの商号で設立され、FRESHNESS BURGER の屋号で現在のハンバーガーチェーン店を運営するようになったのは1995年からです。会社としての歴史は長く、他業種も営んだ経歴のある会社でした。そこで、レインズ社が承継しようとした事業以外に関する資産や負債を抱えている可能性があり、レインズ社はその不必要な部分を売買の対象から外すため、会社の株式をそのまま譲り受けることや、丸ごと合併で抱え込むことをしなかったものと考えられます。

レインズ社としては、純粋にハンバーガーチェーン事業を中心とした飲食事業のみを承継対象として抽出する必要があるわけですが、その際には、事業譲渡を行う方法と会社分割を用いる方法があります。事業譲渡は取引法上の行為といわれ、事業を構成する債務や契約上の地位を移転するには、個別にその契約相手方の同意を必要とします。「テナント」として多くの店舗が賃貸借契約を締結していることが予想される本件において、いちいち許可をとって回るのは大変な作業になるでしょう。ですので、方向性として、組織法上の行為であり包括承継(法律上の手続きにのっとって行うことで、先方の同意なしに権利・義務が包括的に承継される行為)が可能な会社分割が選好されたことは想像に難くありません。また、事業譲渡の場合は、事業主体がかわるため、店舗ごとに保有している飲食業に必要な保健所の営業許可を取り直す必要があります。一方、会社分割の方も、基本的には分割会社が保有していた許認可が取り直しになるのですが、飲食業に必要な保健所の営業許可は、承継届の提出を行えば引き継ぐことができ、取り直しとはなりません。会社分割が組織法上の行為という性質をもっていること、および規制の必要性の点からこのような処理がなされています。ですので、この観点からも本件においては会社分割の方に優位性があったものと思われます。ただ、本件は、承継会社(つまりレインズ社)に事業を吸収させる吸収分割ではなく、新設分割という方法をとっています。この新設分割後の株式譲渡というスキームにはどのような意味があるでしょうか。

吸収分割でなく、新設分割を行いその後新設分割会社の株式を譲渡するというスキームは、M&Aの手法としてままみられます。吸収分割をする場合との違いは、承継会社の内部に新規事業を取り込むかどうかで、レインズ社は「取り込まない」選択をしたことになります。

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PMIの観点から

このような選択がなされたのは、統合後の企業価値向上に向けた統合プロセスの管理(ポスト・マージャー・インベストメント:以下「PMI」といいます)の観点から、同じ業種であっても今まで表立った業務提携関係や資本提携関係をもってこなかった「異質」な事業を一つの法人格に取り込むことに抵抗があったものと思われます。旧会社ごとに派閥が分かれセクショナリズムが生じるなど、一つの企業体の中にほかの会社を直にとりこんだ結果、PMIがうまくいかず期待したシナジーが生かせないケースは、M&Aにおいて多々見受けられます。このようなリスクを回避すべく、一旦フレッシュネス社の事業を社外に置き、そこにレインズ社のノウハウを注入するというやり方を選択したのではないかと考えられます。また、未認識のリスク(特に労務)の排除という側面もあるかもしれません。時間と費用に限りのあるデューディリジェンスでは、契約書や規程、帳簿類にあらわれない組織風土の把握は限定的なものとなります。折から、飲食業界では日本マクドナルドの残業代不払い問題や、株式会社すきやの加重労働問題など、その労務問題について、世間から厳しい目が注がれています。もちろんフレッシュネス社がそのような会社であると言っているわけではありませんが、限定的な理解に基づいて、全面的に被買収会社を信用するのではなく、一旦は子会社とすることで「様子見」するという選択を買収側がしたとしても何ら不思議ではありません。また、こと労務問題に関しては、一つの企業にまとめると待遇等の一本化が必要となってきますので、その折衝をする必要がなく管理しやすいという意味で、別会社にすることは労務管理の点では積極的意味ももっています。

以上のように、本件はM&Aで同一の目的を達成するためには複数の道筋があるということを改めて認識させてくれる事案であるとともに、PMIの履践まで含めてM&Aの実行方法を策定すべきことを示唆してくれた事案かと思われます。今後、レインズ社が意図したシナジーが機能し、FRESHNESS BURGER が全国隅々まで名を知られるようになる日が来るのでしょうか。レインズ社のFCノウハウが、ハンバーガーチェーンという他分野でどれだけ機能するか、注目されるところです。

以上

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    金子博人

    弁護士

    金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所) 事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。

  • 「業界の厳しさはM&Aを求める」

    小黒健三

    公認会計士

    小黒健三 やまと監査法人パートナー 専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。