» 増収増益を続ける外食産業クリエイト・レストランツ・グループ のM&A戦略を見る!

テーマクリエイト・レストランツHDのM&A戦略

磯丸水産を買収し、飲食業界の中でもひときわ多くのM&Aに携わる「クリエイト・レストランツ・ホールディングス」。

その戦略は、立地に合わせて業態を開発する『マルチブランド・マルチロケーション戦略』と言われ、現在100を超えるバラエティーに富んだレストランを運営しています。

彼らはなぜこの戦略をとるに至ったのか、この戦略が今後どうなっていくのか。今回もプロとしての切り口でコメントをして参ります。

「増収増益を続ける外食産業クリエイト・レストランツ・グループ のM&A戦略を見る!」

2017年1月18日
江黒崇史

公認会計士
江黒公認会計士事務所代表 株式会社E-FAS代表取締役 2001年10月公認会計士二次試験合格し大手監査法人にて会計監査・IPO支援業務に従事。 その後ITベンチャー企業取締役CFO就任し、管理本部業務を統括。 次に中堅会計コンサルティンググループに参画し、M&Aアドバイザリー業務に従事。 2014年より独立し2015年2月に株式会社E-FASを設立。 M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。

皆様、2017年明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

新年となると楽しみなのが新年会。一月は皆さん新年会が多く入っているのではないでしょうか。新年会といえば美味しい食事、素敵なレストランが楽しみですが、今回はそんな外食産業で急成長しているクリエイト・レストランツ・ホールディングスを決算情報からみてみたいと思います。

 

さて、皆さまはクリエイト・レストラン・ホールディングスと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

同社は居酒屋の鳥良や磯丸水産、イタリアンのTANTO TANTO、しゃぶしゃぶのしゃぶ菜、ローストビーフ専門店のローストビーフ屋、高級寿司食べ放題の雛寿司などを展開しております。皆さんが行ったことのあるお店も多いのではないかと思います。

これほどの事業の多角化は、やはりM&Aが活用されております。

 

まずは業績からみていきましょう。

 

 

 

 

【売上高、経常利益、純利益の推移】

同社の売上高、経常利益、当期純利益はどのように推移しているのか、まずは連結の業績をチェックしてみましょう。

egurosennsei1

 

 

 

江黒先生②

 

 

 

 

 

 

売上高が順調に右肩成長しておりますね。これはやはりM&Aにより子会社が増え、売上高の増加に貢献しているためです。後述しますが過去四年で6件の大きなM&Aを実施しております。

当期純利益が平成27年2月期に増加しているのは同時期に子会社であるSFPダイニング株式会社が東京証券取引所市場二部へ新規上場した影響により約64億円の特別利益が発生している影響があります。

また飲食業態のため、損益計算書では減損損失や固定資産除却損、年度によっては店舗閉鎖損失を計上しております。

同社の決算書をみてみると同社の事業を示す特徴的な勘定科目が貸借対照表の負債の部に載っております。それは株主優待引当金や店舗損失引当金です。

 

同社は外食産業であることから個人株主の方にファンになってもらうべく自社グループ内で使える「お食事券」を株主優待として実施しております。また平成28年2月29日を基準日に1:3の株式分割を実施しており株式の流動性を高め個人株主の増加を狙っているものと思われます。

そのような同社のため、将来発生する株主優待利用による費用を引当金として計上しております。ベンチャー企業の方で将来株主優待を実施しようと思っている方は、「株主優待引当金」という勘定科目があることを意識しておいてください。余談ですが同社の株主数は平成28年2月末の26,397人から平成28年8月末時点で52,418人へ倍増したということです。株主優待ブームとはいえ、半年で倍増とはすごいですね。

 

また外食産業ですので残念ながら店舗の撤退が生じます。そのため翌年度以降に閉鎖が見込まれる店舗の損失を、あらかじめ「店舗損失引当金」として計上しております。この勘定科目は外食産業のみならず店舗経営をしているビジネスでは検討すべきものですので、自社のビジネスに照らして、計上の必要性など経営者の方は意識しておいてください。

 

さらに同社では「ポイント引当金」も計上しております。これは顧客に付与したポイントが将来使われるであろうという見込み額を引当金として計上しております。この科目は家電量販店をはじめ、ポイント事業を行っている会社ではかなり広く計上されている科目ですので、ご存知の方も多くいらっしゃるでしょう。

 

今の会計ではこのように将来発生する費用について、引当金として計上することが必要ですので自社の戦略を考える上で会計のこともしっかりと意識しておいてください。

 

 

 

会計の話が長くなりましたが、同社の単体の売上高、経常利益、純利益の推移もみてみましょう。

江黒先生③

 

 

 

江黒先生④

 

 

 

 

 

 

単体の業績をみると、経常利益率が非常に高いことに驚かされますが、同社は平成22年3月1日より事業持ち株会社体制へ移行しております。

事業持ち株会社なので自社でも事業を行いますが、多くは子会社側でレストラン事業・フードコート事業を担当しているため、単体の財務諸表では収益性が高い決算書となっております。

 

 

【事業の沿革】

同社は、平成9年4月に地ビール製造販売を主な事業とする、株式会社ヨコスカ・ブルーイング・カンパニーとして設立されました。

その後、平成11年4月に株式会社クリエイト・レストランツへと商号変更し、平成11年5月に株式会社徳壽より洋食レストラン5店舗の営業譲渡を受けて、本格的にレストラン事業の展開を開始いたしました。

今やグループで800店舗以上を展開するレストラングループの発祥が地ビール製造会社だったというのはちょっと驚きですね。

レストラン事業は当初洋食レストランを5店舗譲り受けてのスタートということですが、ここ数年はやはり積極的なM&Aの展開により業績を伸ばしております。

 

主なM&Aとしては過去4年間における下記6件のM&Aです(同社、有価証券報告書沿革より)。

江黒先生⑤

 

 

 

 

 

 

上記のM&Aはあくまで一例であり、同社は海外展開における子会社の設立にも積極的です。

その結果、同社の連結子会社数は下記の様に推移しております。

江黒先生⑥

 

 

江黒先生⑦

 

 

 

 

 

同社は今後も積極的にM&Aを検討するということですので、今後どれだけ子会社が増えるのか楽しみですね。

 

 

 

【同社のM&A戦略について】

さて、このように多くの会社をM&Aを実施してきた同社は、今後も下記のようなイメージでM&Aを検討しております。

(同社決算説明資料より)

江黒先生⑧

 

 

 

 

 

この中でも皆さんが関心あるのは、M&Aにおける4つの判断基準ではないでしょうか。

 

①多店舗化が可能なブランド

②競争優位性に基づく高収益性

③売上・利益の継続的な成長性

④経営者の情熱

 

一般に飲食店ですと、店舗数が増えることでブランド価値が毀損するリスクがあります。そのような中、同社は商業施設や繁華街、ロードサイド店、フードコートなど様々な施設に対応できる強いブランドを保持することでグループ全体での売上・利益の持続的成長につなげております。

また業務管理系システムの統一を図ることにより管理コストの削減も見込めます。別の会社で私が関わったM&Aでは、屋号が違う店舗同士でも人の流通があり、繁忙期・閑散期を融通しあい、全体で人件費を下げた例もあります。

外食産業では売上増加、取扱いブランド増加に加えて、共通コストの削減を図ることができるM&Aは重要な経営戦略の一つですね。

 

 

【今後の成長に向けて】

同社は2020年2月期に売上高2,000億円を目指す「VISION2020」をかかげております。

その達成に向けては、①オーガニックな出店、②国内M&A、③更なる海外展開を成長シナリオとしております。

特に②の国内M&Aにおいては今後3年間で売上高300億円の増加を目指す方針です。皆さんが愛用しているレストランが、そのうちクリエイト・レストランツ・ホールディングスグループの傘下に入っているかもしれませんね。

その他専門家コラム

  • 「クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるM&Aとガバナンス」

    清野 訟一

    弁護士

    2008年弁護士登録(第二東京弁護士会)、祝田法律事務所パートナー。大手証券会社M&Aアドバイザリー部門への出向経験も活かし、M&A、会社関係訴訟・非訟、コーポレート・ガバナンス等を中心に手掛ける。株価決定事件や新株発行差止仮処分命令申立事件などのM&A関連の事件を数多く担当し、紛争解決を見据えたM&A対応に強みを有する。著作論文等として『コーポレート・ガバナンスの法律相談』(共著)(青林書院、2016)ほか多数。