» クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるM&Aとガバナンス

テーマクリエイト・レストランツHDのM&A戦略

磯丸水産を買収し、飲食業界の中でもひときわ多くのM&Aに携わる「クリエイト・レストランツ・ホールディングス」。

その戦略は、立地に合わせて業態を開発する『マルチブランド・マルチロケーション戦略』と言われ、現在100を超えるバラエティーに富んだレストランを運営しています。

彼らはなぜこの戦略をとるに至ったのか、この戦略が今後どうなっていくのか。今回もプロとしての切り口でコメントをして参ります。

「クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるM&Aとガバナンス」

2017年1月18日
清野 訟一

弁護士
2008年弁護士登録(第二東京弁護士会)、祝田法律事務所パートナー。大手証券会社M&Aアドバイザリー部門への出向経験も活かし、M&A、会社関係訴訟・非訟、コーポレート・ガバナンス等を中心に手掛ける。株価決定事件や新株発行差止仮処分命令申立事件などのM&A関連の事件を数多く担当し、紛争解決を見据えたM&A対応に強みを有する。著作論文等として『コーポレート・ガバナンスの法律相談』(共著)(青林書院、2016)ほか多数。

これまでの業績推移とM&A実績

クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>が、近年(2014年2月期~2016年2月期)、順調に業績を伸ばしています。直近5事業年度の業績(連結)の推移は以下のとおりです。

 

 

 

 

この業績伸長の主たる要因は積極的なM&A戦略にあると考えられます。

 

クリエイト・レストランツ・ホールディングスの業績が伸長し始めた2014年2月期(2013年3月~2014年2月)以降の主なM&Aは以下のとおりです。

「マルチブランド・マルチロケーション戦略」におけるM&Aの位置付け

クリエイト・レストランツ・ホールディングスでは、立地に合わせて多様な業態を開発し、出店していく「マルチブランド・マルチロケーション戦略」を掲げ、単一ブランド運営では得ることのできない多業態運営ならではのノウハウの蓄積が成長の源であるとしており、以下の4つのカテゴリーが主要カテゴリーとされています。

 

 

 

 

上記のM&A実績と主要カテゴリーを照らし合わせると明らかなとおり、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、「マルチブランド・マルチロケーション戦略」の具体的な施策として、積極的にM&Aを実行し、従前からの主力事業であったCRカテゴリーに加え、SFPカテゴリー及び専門ブランドカテゴリーの中核となる会社を傘下に収めてきました。

「グループ連邦経営」におけるガバナンス体制とM&Aによる利益貢献

M&Aは、自社単独での事業拡大を目指す場合に比べて、「時間を買う」ことにより、圧倒的に早いスピードで事業拡大を実現することができる可能性があります。一方で、グループ全体の戦略をグループ各社に浸透させ、想定していたシナジーを実現するためには、どのようなガバナンス体制を構築するかが重要になってきますし、短期間で数多くのM&Aを実行する場合、適切なガバナンス体制を構築する難易度も高くなります。

この点、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、グループ経営の方針として、「グループ連邦経営」を掲げており、「グループ連邦経営」を推進するにあたり、同社がグループ各社の経営状態を的確に把握できる管理体制の強化に努めるとともに、複数の専門的かつ特徴的な企業文化、戦略を持つ各社の経営陣が、グループ内にてそれぞれのノウハウや情報交換等を密に行い、個々の経営力を拡充することができ、加えて、各グループ事業会社が成長に向け、迅速かつ最適な意思決定が可能となる組織体制及び環境を整えていくとしています。また、グループのホールディング・カンパニーであるクリエイト・レストランツ・ホールディングスの役割として、グループ全体の経営戦略を策定、実行することのほかに、各グループ事業会社が持続的な成長戦略の実行に集中できる環境(プラットフォーム)を提供することも必要であると認識しているとのことです。

以上のような「グループ連邦経営」に対する考え方を踏まえ、クリエイト・レストランツ・ホールディングスによる子会社の経営に対する関与の在り方を議決権の所有割合と役員の兼任という観点からまとめると以下のとおりとなります。

 

 

 

 

以上からは、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、M&Aによって他社を買収する場合、原則として100%の株式、少なくとも株主総会の特別決議事項を自らの議決権行使だけで可決することができる3分の2以上の議決権を確保する方針であることが窺えます。

一方で、SFPダイニング<3198>については、株式取得後に東京証券取引所市場第二部へ新規上場(IPO)させていますので、M&A後のガバナンス体制については柔軟な考え方も持ち合わせているようです。SFPダイニングについては、クリエイト・レストランツ・ホールディングスがSFPダイニング株式を取得した際の売主(ファンド)の運営者であるポラリス・キャピタル・グループが、株式譲渡時のプレスリリースにおいて、「ポラリスは2010年12月の投資実行以来、SFPの目指す株式上場を全面的に支援し、昨年秋の第一次資本政策で当時100%保有していた株式持分のうち30.4%をSFPの取引先等の安定株主複数社に譲渡し、その後、第二次資本政策を経て株式上場を実現することを目指して参りました。」と述べています。このことからすると、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、新規上場を目指すというSFPダイニングの意向を尊重し、また、新規上場を支援するというポラリス・キャピタル・グループの方針を承継したということのようです。

そして、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、SFPダイニングの新規上場に際して、株式の売出しを行っていません。このことからは、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、M&Aによって取得した株式を売却(イグジット)することによって利益を得ることを目指しているわけではなく、しっかりとしたガバナンスを効かせながら、グループ全体としてシナジーを生み出すことにより、利益を得ていくという方針が窺えます。

今後のM&A戦略

クリエイト・レストランツ・ホールディングスの中期経営計画「VISION2020」(2015年10月14日公表)での成長シナリオでは、国内M&Aが挙げられており、「今後3年間でM&A売上高+300億円」を基本方針としており、第20期中間報告書(2016年3月1日~同年8月31日)でも、「VISION2020」に変更はないとされています。

そして、「VISION2020」の達成に向けたM&A戦略としては、主に3つのルート(①ファンド等からのEXIT型、②ノンコア事業の取得型、③創業オーナーとの提携型)を中心にM&A案件の検討を行い、①多店舗化が可能なブランド、②競争優位性に基づく高収益、③売上・利益の継続的な成長性、④経営者の情熱という4つの判断基準にて案件を判断するとのことです。

今後もクリエイト・レストランツ・ホールディングスは積極的にM&Aを実施していくとのことですので、引き続き、クリエイト・レストランツ・ホールディングスのM&A戦略には注目しておく必要がありそうです。

以 上

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    江黒崇史

    公認会計士

    江黒公認会計士事務所代表 株式会社E-FAS代表取締役 2001年10月公認会計士二次試験合格し大手監査法人にて会計監査・IPO支援業務に従事。 その後ITベンチャー企業取締役CFO就任し、管理本部業務を統括。 次に中堅会計コンサルティンググループに参画し、M&Aアドバイザリー業務に従事。 2014年より独立し2015年2月に株式会社E-FASを設立。 M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。