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テーマファミリーマートとユニーのM&A

平成28年9月、驚くべき内容のM&Aが発表されました。それは、コンビニ大手のファミリーマートと、「サークルK」を運営するユニーグループHDのM&Aです。

コンビニエンスストア業界はセブンイレブンを運営する、セブンアンドアイHD、ローソン、そしてファミリーマート。この3社に追随する形でミニストップ、スリーエフと続いています。

競争著しいコンビニエンス業界で、M&Aはどのように利用をされるのか、今後の業界はどのように推移していくのか、今回もプロの視点から切り込んでまいります。

「ファミリーマートとユニーのM&Aについて」

2017年1月25日
藤原宏高

弁護士
弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

弁護士法人ひかり総合法律事務所

代表社員 弁護士 藤原 宏高

ひかり総合法律事務所

弁護士 葛山 弘輝

1 はじめに

平成28年9月1日,コンビニエンスストア3位の株式会社ファミリーマート(以下,「ファミリーマート」といいます。)とユニーグループ・ホールディングス株式会社(以下,「ユニーグループHD」といいます。)が,統合されるという大規模な企業再編がありました。

この件について,公開されている情報をもとに,経営的側面および法務的側面から,統合のスキームや,合併比率に関してのポイントを指摘させていただきます。

 

なお,今回の企業再編の目的は,経営統合によるコンビニ店の事業規模拡大により業界首位のセブンイレブンを追撃することに加えて,ユニーグループHD側の最近の決算内容を見る限り,ファミリーマートによるユニーグループHD側の救済もあるものと思われます。

 

ユニーグループHD側では,一定のリストラを合併の発表前に実施して,今回の企業再編に臨んだと思われます。リストラ後の業績をどの様に合併比率の決定に反映させることができるかが重要なポイントになります。

 

2 統合において行われたスキーム

まず,統合のスキームですが,吸収合併と吸収分割という2段階に分けて複雑な企業再編の手法が採用されています。

 

その理由としては,統合の本来の目的はコンビニエンスストアの統合であったところ,吸収されるユニーグループHD側が持ち株会社であるユニーグループHDとコンビニを運営する株式会社サークルKサンクス(以下,「CKS」といいます。)とを分離していたのに対し,吸収するファミリーマート側が事業会社であったためと思われます。

 

そのため,一旦は,ファミリーマート側がユニーグループHD側を吸収合併するものの,それだけでは吸収したユニーグループHD側のコンビニ事業をファミリーマート側と経営統合できないので,ファミリーマート側がコンビニ事業を会社分割で切り出し,ファミリーマートの100%子会社となったコンビニ事業会社であるCKSに吸収させるという手法を取っています。

(1) 吸収合併契約の目的及び内容

ア 合併の当事者と存続会社

第1段階で行われる吸収合併は,図1の通り,ファミリーマートとユニーグループHDを当事者とする吸収合併で,ファミリーマートが吸収合併存続会社,ユニーグループHDが吸収合併消滅会社となっています。

したがって,ユニーグループHDの株主が,ファミリーマートの株式を合併対価として取得するスキームとなりますが,吸収合併に関しての諸条件は,吸収合併契約書の中で詳細に記載されることになります。

 

 

 

 

 

イ 税制適格合併

続いて,当該吸収合併が税制適格合併か(資産を簿価で引き継げるか)という点について簡単に検討します。

 

税制適格合併においては,「資本要件を満たす場合の合併」[i],「共同事業を営むための合併」があり,本件においては,資本要件は満たしませんが,以下の「共同事業を営むための合併」の要件は満たすことで,税制適格合併であると推測されます。

[i] 「資本要件を満たす場合の合併」とは(1) 完全支配関係(100%の資本関係)がある法人間の合併(2) 支配関係(50%超の資本関係)がある法人間の合併の2種類

「共同事業を営むための合併」の要件
  1. 従業者引継ぎ要件
  2. 事業継続要件
  3. 事業関連性要件
  4. 事業規模要件又は経営参画要件
  5. 株式継続保有要件

ウ 合併の効果

以下の図2から明らかなとおり,CKSは,ユニーグループHDの子会社でしたが,吸収合併により,統合会社ファミリーマートの完全子会社となっていますが,単に吸収合併するだけでは,ユニーグループHD側のコンビニ事業は,CKSを通じて運営されていたので,ファミリーマート側のコンビニ事業と,当然には経営統合されません。

 

 

 

 

 

(2) 吸収分割契約の目的及び内容

ア 分割のスキームとその対価

本件では,吸収合併すると同時に,第2段階として本吸収合併の効力発生を条件として,ファミリーマート側のコンビニ事業をCKS側に吸収分割するという形式が取られています。

すなわち,図3の通り,統合会社ファミリーマートを吸収分割会社,旧ユニーグループHDの子会社であり,第1段階の吸収合併後においては統合会社ファミリーマートの100%子会社となったコンビニ事業を行うCKSを吸収分割承継会社とする吸収分割がなされています。

 

吸収分割は,会社法第2条29号に,「株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。」と定義されており,事業再編の際に有効活用されています。

 

本吸収分割は,子会社が親会社の事業部門(コンビニ事業)を分割後吸収する形態がとられており,100%親子間の吸収分割であること,その後も,資本関係に変更はないため,資本要件を満たす場合の合併として税制適格吸収分割であると思われます。

 

また,100%親子間での分割吸収に関しては,合併交付金の支払いは必須ではありませんが,本件では,分割会社となる親会社のファミリーマートに対して,分割の対価としてCKSの株式が100株交付されています。

 

 

 

 

 

 

イ 吸収分割の最終形態

図4の通り,かかる吸収分割により,吸収合併存続会社であり,吸収分割会社であるファミリーマートは持株会社,CKSはその100%子会社として統合されたコンビニ事業を行う事業会社となります。

 

また,かかる経営統合後,商号を,ファミリーマートは,「ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社」に,CKSは,「株式会社ファミリーマート」に変更しています。

また,かかるコンビニ事業の経営統合後に,コンビニ店の統廃合が大規模に行われることになっています。

 

 

 

 

 

 

 

3 吸収合併契約の合併比率

続いて,本吸収合併における,株式の割当の比率は,

 

 

となっています。

こちらについては,下記の別紙1において,合併比率に関する各第三者算定機関の分析概要が記載されています。

http://www.fu-hd.com/ir/library/release/document/fm/151015_02.pdf

割当比率については,市場株価平均分析,ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー分析(DCF分析),類似会社比較法によって算定されています。

 

市場株価平均分析については,上場企業ですので,一定期間の市場価格を基準とした分析であり,それほど疑義は無いと思われます。

 

本件のDCF分析において,各第三者算定機関が,各社から,事業計画を取得していますが,事業計画において,大幅な増減益が見込まれる場合には,これを特記した上で,算定したとしています。

 

本件では,今回の統合における合併比率の決定に際し,ユニーグループHD側が,すでに行った事業のスリム化や,発生する損失を織り込んでいるかという点が問題になりますが,第三者機関の分析を見ると,ユニーグループHDについては,平成29年度2月期において,事業改革に伴う一次的な影響により対前年度比較で大幅な減益,という点を適切に織り込んだ上で算定が行われているようです。

しかしながら,本件は公開企業同士の大規模なM&Aであるため,経営陣は合併比率の算定について,相当程度慎重な検討をされたものと思われます。

 

例えば,平成27年2月期の連結決算をファミリーマートとユニーグループHDとで比較しますと,以下の図となります。

 

 

これを基に,1株当たりの連結純資産のみで合併比率を試算した場合は,ファミリーマートとユニーグループHDで,1 : 0.4427ということになります。

これに対して,株価のみ(市場株価分析)で合併比率を試算した場合は,各第三者算定機関ごとに若干のばらつきはありますが,おおよそで,ファミリーマートとユニーグループHDで, 1 : 0.13あたりになります。

そして,平成28年2月3日に決定された合併比率は,ファミリーマートとユニーグループHDで, 1 : 0.138

でしたから,ほぼ株価に基づく合併比率に近いものであったことになります。

 

合併比率に関する各第三者算定機関の分析概要(平成27年10月15日付「株式会社ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス株式会社の経営統合に向けた 基本合意書締結に関するお知らせ」の別紙1)では,市場株価分析に加えて,DCF法によってユニーグループHDの評価を行っていますが,DCF法による評価の場合,評価額のレンジ幅が広いものの,下限では市場株価分析に基づく評価額を下回っていました。

 

両社の経営陣としては,様々なリスクを勘案しながら,最終的に平成28年2月3日に市場株価分析に近いところで合併比率を決定したものと思われます。

以上

 

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    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

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    弁護士

    家永 勲 弁護士法人ALG&Associates パートナー・弁護士 東京弁護士会所属 上場企業が手がけるM&Aにおける法務DDの責任者として対応するほか、会社法を活用した買収目的に適したスキームの策定等も実践し、M&Aに関わる法務問題を幅広く取り扱っている。 企業法務におけるトラブルへの対応とその予防策に関するセミナーのほかストレスチェックやマイナンバーなど最新の法改正に即したセミナーや執筆も多数行っている。

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    M&Aアドバイザー

    インクグロウ株式会社 事業戦略部 サブマネージャー M&Aシニアエキスパート 1984年1月生まれ 新卒で入社した会社で中小企業の販路拡大支援業務、フランチャイズの法人営業業務を行う。その後、グループより独立したインクグロウに転籍し、中小企業を中心としたM&A仲介業務を行っている。 北海道東北、関東、関西、東海など全国の企業から依頼を受け、M&A仲介業務を行っている。