» 総合メディカルによるみよの台薬局グループの買収

テーマ総合メディカルとみよの台薬局のM&Aについて

調剤薬局業界を揺るがした、総合メディカルとみよの台薬局のM&A。

 

「両者は今後どうなるのか?」

「このM&Aが調剤薬局業界に与える意味とは?」

「調剤薬局業界は今後どうなるのか?」

 

など、各分野の専門家がプロの視点で解説いたします。

「総合メディカルによるみよの台薬局グループの買収」

2017年2月7日
中島成

弁護士
昭和34年8月生 東京大学法学部卒 裁判官を経て昭和63年4月弁護士。中島成総合 法律事務所を主宰。日本商工会議所・東京商工会議所「会社法制の見直しに関する検 討準備会」委員、東京商工会議所「経済法規・CSR委員会」委員等を務める。平成 16年度まで中小企業診断士試験委員(経営法務)。全国地方銀行協会研修所などで の講演多数。『図解 会社法のしくみ』(日本実業出版社)『民事再生法の解説~企 業再生手続~』(ネットスクール)など著書多数。

2017年2月5日

弁護士 中 島  成

 

全国で582店舗の薬局を運営し、医療モールや病院の経営支援なども手がける総合メディカル(株)(本店 福岡市・東証1部上場・2016年3月期売上高約1207億円・2015年3月期売上ランキングで調剤薬局業界第4位)が、2016年12月26日にみよの台薬局グループを買収した。

みよの台薬局グループに属する(株)御代の台薬局、(株)木元薬局など合計7社の株式を取得することで直接間接に総合メディカルが100%支配する子会社にし、またこれによって上記木元薬局の100%子会社である3社も総合メディカルの100%孫会社になった。

みよの台薬局グループは、関東圏(1都6県)、三重県、大阪府で調剤薬局91店舗を運営し、在宅訪問服薬指導などの在宅医療に早くから取り組み、この分野で定評がある。

 

【背景】

総合メディカルの売上は、その約80%が薬局業務によるもので、かつ、薬局業務の売上の99%近くが調剤売上によるものである(2016年3月期)。総合メディカルは、これまで積極的なM&Aで調剤業務を拡大してきており、今回もその一環という面がある。

しかし、それだけではなく、みよの台薬局グループをM&Aの対象にした背景には、厚労省が2015年10月23日に発表した「患者のための薬局ビジョン ~「門前」から「かかりつけ」そして「地域へ」~」があった。

これは、急速に進む高齢化社会の進行の中で、現在のように多くの患者が病院の門前にある薬局で薬を受け取る状況を変えさせ、病院から処方箋が患者の身近にある「かかりつけ薬局」に送られて処方されるようにすることで、服薬情報の一元化、在宅での薬管理・指導の実現を目指すものである。かかりつけ薬剤師・薬局が、服薬情報の一元化管理、24時間対応の在宅対応、調剤後の病態を把握して処方医にフィードバックすることなどの機能を持つことが目指されている。

厚労省によると、65才以上の人口は現在3000万人を超えており、2042年には3900万人となってピークを迎え、その後も75才以上の人口割合は増加し続ける。団塊の世代約800万人は、今から僅か8年後の2025年ころ、75才以上となって介護や医療需要のさらなる増加が見込まれる、とされている。

総合メディカルは、みよの台薬局グループを買収することで、今後厚労省ビジョンにあるとおりさらに需要拡大が見込まれる「かかりつけ薬局」のノウハウを吸収する狙いがあったと考えられる。。

 

【買収価格の検討】

総合メディカルは、みよの台薬局グループに属する7社の株式を合計82億6000万円で取得した。

2016年11月24日付総合メディカルの適時開示情報によれば、総合メディカルの子会社又は孫会社になったみよの台薬局グループ合計10社の直近営業利益の単純合計は、1億9198万円。内4社は営業赤字を計上している。この10社の経常利益の単純合計は4億4469万円である。

みよの台薬局グループは非上場で、減価償却の額や親子会社間の取引、配当がどのようになっているかはっきりしないものの、買収価格は、単純に計算して営業利益の43倍、経常利益の18・6倍になる。

他方、上記10社の純資産合計額は約36億円で、これと買収価格との差額は46億6000万円。この差額が、いわゆる暖簾(営業権)と評価されたことになる。この暖簾評価は、単純に計算して営業利益の約24倍、経常利益の約10・5倍となる。

一般に株式買収価格は、営業利益に減価償却額を加えた金額の5倍程度が基本でリスクをとっても10倍程度と考えられる。したがって、投資金額回収期間という面からは今回の買収価額は高額とも考えられる。

しかし、総合メディカルとしては、上記10社の売上総額が約124億円に上ること、関東圏に地盤が築けること、厚労省ビジョンにおける上記「かかりつけ薬局」展開のノウハウを取得・研究できること、自社のノウハウで経費削減も可能と思われること、調剤薬局店舗数が91店舗増加し、薬剤師確保にもつながることなどから、このM&Aを実現させる方向で積極的に総合判断したと考えられる。

【M&Aスキームの選択 ~株式取得か合併か~】

M&Aの実行に際しては事業に係る許認可の引き継ぎ等がスムースにできるかも重要となる。

薬局の場合、開設するには薬機法(※注)4条で所在地の都道府県知事等の許可が必要とされている。仮にM&Aスキームに対象会社を吸収合併等する方法を採用した場合、薬局の開設者が別の会社=吸収した方の会社に変更されるため、許可申請をやり直さなければ営業ができなくなり期間的ブランクができる。

他方、今回のように株式取得によるM&Aであれば、薬局を開設している法人がそれまでと同じなのでそのまま営業できる。薬局の名称等を変更しなければ、届出も不要である(薬機法10条)。

したがって、今回のM&Aが、株式取得というスキームによった理由は、この点も考慮されたものと考えられる。

なお、業界大手である株式会社ココカラファインや日本調剤株式会社が、2016年に行った他の調剤薬局買収でも、いずれも総合メディカルと同様、株式(持分)取得の手法が使われている。

 

※注 : 薬事法の名称が2014年11月25日から変更され「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」となった。本コラムでは「薬機法」と略称した。

                                 (終)

その他専門家コラム

  • 「総合メディカルとみよの台薬局のM&Aが持つ意味とは?」

    平川智章

    M&Aアドバイザー

    インクグロウ株式会社 事業戦略部 サブマネージャー M&Aシニアエキスパート 1984年1月生まれ 新卒で入社した会社で中小企業の販路拡大支援業務、フランチャイズの法人営業業務を行う。その後、グループより独立したインクグロウに転籍し、中小企業を中心としたM&A仲介業務を行っている。 北海道東北、関東、関西、東海など全国の企業から依頼を受け、M&A仲介業務を行っている。

  • 「総合メディカルとみよの台薬局のM&Aについて」

    漆山伸一

    公認会計士

    公認会計士、税理士、証券アナリスト。監査法人トーマツ、デロイトトーマツコン サルティング合同会社を経て独立、漆山パートナーズ会計事務所(現税理士法人 漆 山パートナーズ)を設立。現在、株式会社アットタックの代表も務め、会計税務業 務、企業再生、事業承継、M&A、海外資産運用サポートなどのコンサルティング業務 にも多く携わる。その他、上場企業の取締役も歴任している。