» 「クックパッド前代表取締役によるオウチーノ買収」

テーマクックパッド創業者によるオウチーノ買収について

2016年10月、ある会社株式のTOB(公開買い付け)が発表されました。

不動産情報サイトを運営するオウチーノ(証券コード:6084)が、クックパッドの前社長穐田誉輝氏が同社の株式のTOBを表明し、同社がその買い付けに応じました。

このTOBの理由は何か、今後どの様に進展していくのか、そもそも、TOBとは何か。一見難しく、M&Aと言えばこのTOBを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

今回もプロの視点から切り込んで参ります!!

「「クックパッド前代表取締役によるオウチーノ買収」」

2017年2月15日
飯島康央

弁護士

弁護士 飯島康央
紀尾井町法律事務所所属。2000年4月弁護士登録。2015年度第二東京弁護士会副会長。2015年6月からパルシステム生活協同組合連合会員外監事を務めています。
離婚や相続問題、交通事故や消費者事件などの他、企業間の法的トラブルに関する訴訟事件や契約書の作成、審査、債権回収、労務問題など、中小企業の法務支援にも力を注いでいます。

1 はじめに

平成28年10月28日、不動産情報サイトを運営するオウチーノは、クックパッド前代表取締役の穐田誉輝氏が同社株にTOB(株式公開買い付け)を実施し買収すること及び第三者割当増資を実施することを発表しました。

これらの実施により、穐田氏らは66%のオウチーノ株式を保有することとなり、他方、現社長井端純一氏は、株式を売却して退任するとのことです。

 

2 オウチーノにおける今回の買収の意義

今回の買収は、穐田氏のTOBに対して、オウチーノがこれに賛同したことからも明らかなとおり、オウチーノ側にとって大きな意義のある買収だと考えられます。特に、単なるTOBではなく、第三者割当増資とセットになっている点が重要です。

公表されている情報によれば、オウチーノは2014年12月期及び2015年12月期の2期連続で当期純損失を計上しており、業績の改善や収益力の強化が喫緊の経営課題とされていました。特に、不動産購入・販売事業の業績が振るわず、2017年3月を目途に同事業から撤退することも発表されています。また、社内での人材育成がうまくいかなかったようであり、後継者問題もあったようです。

そのような中、カカクコムやクックパッドの代表取締役を歴任した穐田氏が、オウチーノの業務に関心を持ち、同社に対するTOBを実施し、かつ、穐田氏がクックパッド社長時代に穐田氏を支えた幹部4名に対する第三者割当増資を行うこととなりました。

第三者割当増資とは、会社が新たな資金調達を行う方法の一つであり、株主以外の第三者に対して新株を発行し増資するものです。

この第三者割当増資を行うことにより、オウチーノは、業績を改善し更なる成長をするための資金を調達することができます。また、穐田氏を支えた幹部4名に対する割当てを行って顧問として向かえることで、穐田氏の有するネットワークにより人的資源を得ることができたと言えます。

すなわち、オウチーノは、今回の買収により、業績改善・成長発展のための資金調達と人材の確保をすることができ、上記二つの大きな問題を解決できる下地ができたといえるのではないでしょうか。

但し、現時点においては、穐田氏は投資家としての出資であり、オウチーノにおいて新たな代表取締役を含めた経営体制については何ら決まっていないとのことです。

3 穐田氏らが66%の株式を保有する意義

他方、穐田氏においては、今回のTOB及び他4名に対する第三者割当増資により、オウチーノ株式の66%を保有することになります。穐田氏にとっては、持株比率が66%であるということが非常に重要です。

この66%の株式を保有するということは、オウチーノの経営支配の面で非常に大きな意義を有することになります。

会社法においては、通常の業務執行は取締役や取締役会の決定に委ねられていますが、会社の基本的事項については株主総会の普通決議(出席株主の議決権の過半数の賛成で可決する決議事項)、会社の重要事項については株主総会の特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決する決議事項)で決定することとされています。したがって、穐田氏が66%の株式を保有すれば、オウチーノの基本的事項については株主総会の普通決議で確実に可決させることができるのみならず、オウチーノの重要事項についても特別決議で可決させることが極めて高くなるのです。穐田氏は、オウチーノの会社経営に関して、自由な発想で、安定的に経営手腕を発揮することができるようになるのです。

 

4 今後の動向

今回の買収は、買収される側(オウチーノ)と買収する側(穐田氏)の双方にとって、意義のあるものであると言えます。今後、オウチーノの業績が改善し、かつ、更なる成長・発展をするようになれば、今回の買収は成功例の一つとして見本になるのではないかと思われます。

以上

その他専門家コラム

  • 「オウチーノの『決断』~なぜTOBに応じたのか~」

    花澤健司

    公認会計士

    大手監査法人で会計監査業務および会計アドバイザリー(IPO、企業価値評価、企業再生及びM&Aのための財務デューデリジェンス)の業務に従事したほか、PE Fundおよび不動産ファンドに対して、M&Aアドバイス及び会計スキーム構築アドバイス、内部統制アドバイスに行った。2012年1月より独立開業、バイオベンチャーのCFOや資金調達支援といったコンサルティング以外の業務も積極的に行っている。

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    小林幸与

    弁護士・税理士

    明治大学法学部卒業後の昭和61年から弁護士活動開始。結婚出産子育てを経て、平成9年より豊島区池袋にて弁護士活動を再開。その後、東京税理士会に登録して税務分野に拡大。法人化を機会に平成26年東京銀座に進出。現在は、弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京の代表として、銀座本店と池袋支店で弁護士5名・税理士2名の体制にて、相続税務や事業承継を含む相続全般・不動産関係に特化した事務所を経営する。

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    松本甚之助

    弁護士

    2006年弁護士登録、2012年アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士登録。クロスボーダーM&Aを含むM&A案件と国際取引、国際紛争、国際倒産処理手続等の渉外案件を中心に取り扱う。現在三宅坂総合法律事務所のパートナーとして、国内案件のみならずASEAN諸国や中国・インドなどにおけるクロスボーダーM&A等提携取引の事例と相談を多く手がけている。

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    照井 久雄

    中小企業診断士

    インクグロウ株式会社 取締役 事業戦略部長
    中小企業診断士
    1978年7月生まれ
    経営コンサルタントとして提携フランチャイズ本部の立ち上げをした後、証券会社で公開引受業務や中堅中小企業の資金調達の支援を行う。
    その後、中小企業を中心としたM&A業務に従事し、2013年にインクグロウ株式会社に入社。現職として数多くのM&Aを成功に導く。