» グリーの買収による新規事業戦略

テーマグリーによる3ミニッツ買収

2017年2月2日、グリー株式会社は動画メディアや動画マーケティングなどを手がける株式会社3ミニッツの株式を取得し、子会社化することを発表しました。取得価額は43億円。業績連動型のアーンアウト方式を採用しており、3ミニッツの今後3年度の決算数値に応じて追加代金が発生する可能性があるとしています。

今回は何故グリーが3ミニッツを買収するのかについて考察します。

 

「グリーの買収による新規事業戦略」

2017年5月22日
漆山伸一

公認会計士
公認会計士、税理士、証券アナリスト。監査法人トーマツ、デロイトトーマツコン サルティング合同会社を経て独立、漆山パートナーズ会計事務所(現税理士法人 漆 山パートナーズ)を設立。現在、株式会社アットタックの代表も務め、会計税務業 務、企業再生、事業承継、M&A、海外資産運用サポートなどのコンサルティング業務 にも多く携わる。その他、上場企業の取締役も歴任している。

[グリーの財務状況]

グリーは、言わずと知れたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)GREEを創業事業とし、モバイルソーシャルゲームを開発するなど、日本のモバイルインターネットサービスを牽引してきた企業です。2008年の株式公開以降さらに事業を加速し、スマートデバイス向けにシフトしながら、ゲーム事業、メディア事業、広告事業、投資事業を展開してきました。

しかし足元の財務状況は以下のとおりであり、2013年6月期と2016年6月期を比較すると、売上が54%減、営業利益が70%減など損益面ではこの数年間非常に苦しんでいます。

ただ個人的には、ゲームでの課金モデルがしっかりと定着しており、年間で150億円近い利益を出している優良企業であることには変わりないと思っています。

一方、財政状態、資金面は潤沢であり2016年6月期では自己資本は1000億円を超え、自己資本比率では90%を超える財務安定性は抜群の企業です。グリーではこの潤沢な資金を基に、国内外の多くの会社に事業投資を行っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既存事業の収益に陰りが出てきた今、新規市場への進出が必要不可欠ではありました。

そこでいち早く今後の成長性を見込み動画広告市場に目をつけて先手を打ったのが今回の3ミニッツのM&Aということになります。

 

[3ミニッツとは]

2016年の動画広告市場は、前年対比157%の842億円に達し、特にスマートフォン動画広告の成長が注目されています。スマートフォンでのユーザーの動画視聴は今後も継続的に増加し、2020年の動画広告市場は2,309億円に達すると予想されています。

3ミニッツは、ファッション動画マガジン「MINE BY 3M(マインバイスリーエム)」、動画マーケティング、インフルエンサーマーケティングならびにプライベートブランドのプロデュースを手がけるクリエイティブ企業です。動画広告市場が拡大傾向にあることや、ユーザーの動画視聴が定着化していることを背景に、3ミニッツが設立2年で事業規模が拡大していることや、広告の企画能力や動画制作能力にたけていること、メディア事業でも注目を集めていることから、グリーとしての技術力などを掛け合わせると大きなビジネスになると判断しました。

グリーは、これまで成長著しい市場に対し、いち早く事業展開に取り組んできました。この度の株式取得により、グリーの持つインターネット事業に精通した人材と安定した財務基盤といった経営資源を3ミニッツに投入することで、動画広告市場において更なる成長を実現できると判断し子会社化することを決議しました。このように会社は今回のM&Aについてコメントしています。

 

[まとめ]

グリーによる3ミニッツの買収は新規事業領域にいち早く参入するための買収に他なりません。キャッシュリッチ及び時価総額の高い企業は今後ますますこのタイプの企業買収を加速させることになると思います。特にスマートフォンを中心としたSNSの世界は日進月歩で次から次へ新しい会社、技術が生まれてきています。今回の3ミニッツも設立2年目での買収です。ベンチャーを立ち上げる社長も、必ずしも株式公開などの単独での事業運営を考えず、早期に売却して又次の事業を立ち上げる、そんな米国シリコンバレースタイルの経営が日本にも徐々に定着しつつあることがうかがえる案件でした。我々専門家もこのような経営スタイルを前提とした、資本政策、資金調達、組織戦略を検討する必要があると思います。

 

その他専門家コラム

  • 「グリーによる3Minute買収について」

    北川朝恵

    弁護士

    紀尾井町法律事務所所属。慶應義塾大学卒。2004年10月弁護士登録。2009年度第二東京弁護士会常議員。2014年度日本弁護士連合会代議員。2007年度から現在に至るまで第二東京弁護士会刑事弁護委員会副委員長。企業法務事件にとどまらず、労働事件、一般民事事件、家事事件、刑事事件など幅広い業務を取り扱っています。法人から個人まで様々な依頼者のニーズに応えるきめ細やかなリーガルサービスを心掛けています。

  • 「グリーのスリーミニッツ買収~その買収価格とアーンアウト~」

    中島成

    弁護士

    昭和34年8月生 東京大学法学部卒 裁判官を経て昭和63年4月弁護士。中島成総合 法律事務所を主宰。日本商工会議所・東京商工会議所「会社法制の見直しに関する検 討準備会」委員、東京商工会議所「経済法規・CSR委員会」委員等を務める。平成 16年度まで中小企業診断士試験委員(経営法務)。全国地方銀行協会研修所などで の講演多数。『図解 会社法のしくみ』(日本実業出版社)『民事再生法の解説~企 業再生手続~』(ネットスクール)など著書多数。