» 金融商品取引法から見るソレキアをめぐるTOB合戦

テーマソレキアをめぐる 富士通とフリージアマクロスとのTOB合戦

平成29年2月3日にフリージアマクロス社がソレキア社に対してTOB実施を届け出。同年3月10日には、ソレキア社が本TOBについて反対を表明。同年3月16日に富士通がTOBを届出。ソレキア社は富士通のTOBに対して賛同を表明。その後両社によるTOB価格を両社が競う形で価格が上昇した。

その結果、平成29年5月23日に富士通のTOBが不成立になったと発表した。

※なお、各コメントについては、平成29年5月20日までの本TOBの動向を記載したものであり、最終結果について記載されていないものであります。

「金融商品取引法から見るソレキアをめぐるTOB合戦」

2017年5月24日
大塚 一暁

弁護士
弁護士 大塚一暁 大塚・川﨑法律事務所代表パートナー。2006年弁護士登録後大手渉外法律事務所であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所にて執務、その後2012年大塚・川﨑法律事務所を設立。中小企業から上場会社等に至るまで幅広く、M&A取引(デューデリジェンス及び契約交渉等)、MBOファイナンス等の買収ファイナンス、ストラクチャードファイナンス、金融規制等のアドバイスを専門として業務を行う。また、ベンチャー企業の支援も多数行っている。

2017年2月3日、企業向けパソコンなどの情報機器を販売するソレキア株式会社の株式に対し、フリージアマクロス株式会社の会長である佐々木ベジ氏が、買付価格を1株2800円として公開買付け(TOB)を開始した。このTOBに対して、ソレキアは、企業価値を向上させることはないと判断し、反対の意見を表明した。その後、いわゆる「ホワイトナイト」として富士通株式会社が登場し、富士通もソレキアに対して、買付価格1株3500円でTOBを行うことを表明し、ソレキアはかかる富士通のTOBに対して賛同すると発表した。その後、両社は、そろって買付価格を引き上げるなど、ソレキアを巡って佐々木氏と富士通の間で買収合戦が激化している状況である。

 

経緯

ソレキアをめぐる佐々木氏と富士通の買収合戦は以下のような経緯になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


買付条件の変更は自由にできるの?

以上のように、ソレキア株式に対して佐々木氏と富士通がTOBを実施すると公表した後、佐々木氏は買付価格を4回、富士通も買付価格を2回それぞれ増額しています。また、買付期間もそれぞれ変更しています。では、このような買付条件の変更に関して金融商品取引法の規制や制限等はないのでしょうか。

金融商品取引法は、一定の場合を除き、買付条件等の変更を行うことができると規定しています(金融商品取引法27条の6第2項)。そして、買付条件の変更を行うことができない一定の場合として、買付価格の引き下げ、買付予定の株券の数の減少、買付期間の短縮等を規定しています。つまり、TOBに応募する株主に不利になるような変更については行うことができないとしているのです。

したがって、TOB開始後は、応募する株主に不利になるような、買付価格を下げたり、買付期間を短縮するような変更は禁止されるのですが、今回のケースのように、買付価格を増額したり、買付期間を延ばすような変更は自由にすることができるということになります。

変更回数にも制限はありませんので、理論的には、増額という方向であれば何度も増額が可能ですし、期間も永遠を延長することを繰り返すことも可能なのです。

今回は、富士通はこれ以上増額しないことを公表しておりますので、増額方向での競争は一応決着がついているようです。


意見表明は義務?

以上のように、ソレキアは、佐々木氏のTOBに対して反対の意見を表明するとともに、富士通のTOBに対しては賛同する意見を表明しております。昨今では、このようにTOBに対してTOBを受ける会社が意見を表明することは一般化しており、よくニュース等でも見受けられることなので特に気になることでもないかもしれませんが、このようにTOBを受ける会社が意見を表明することは法律上の義務なのでしょうか?

答えはYESです。

金融商品取引法は、公開買付公告が行われてから10日以内に意見表明報告書を提出しなければならないと定めており、TOBを受ける会社の意見表明は義務化されております(金融商品取引法27条の10)。

TOBを受ける会社の意見を公表することにより、株主・投資者の投資判断の的確性を高めることを目的とした制度となっております。

ソレキアの場合には、佐々木氏のTOBに対しては当初は意見を留保する旨の意見表明を行い、その後に反対する意見表明をしています。これに対して、富士通のTOBに対しては賛同する旨の意見表明を行っています。

なお、TOBを受けた会社は、意見表明報告書に質問を記載することにより、公開買付者に対して質問をする権利が与えられています(金融商品取引法27条の10第2項1号)。今回のケースでもソレキアによる意見表明報告書に質問が記載され、これに対する佐々木氏の回答書が提出されています。

 

以上、基本的なところですが、TOBにおける金融商品取引法上の制度と規制を見てきました。

 

 

 

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  • 「ソレキアをめぐるTOB合戦」

    小黒健三

    公認会計士

    小黒健三 やまと監査法人パートナー 専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。

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    金子博人

    弁護士

    金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所) 事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。

  • 「ソレキアをめぐる、TOB合戦について」

    坂元 英峰

    弁護士

    平成8年京都大学法学部卒、平成10年京都大学大学院法学研究科卒。 平成12年4月弁護士登録。平成17年6月税理士登録。日系企業のアジア進出支援に定評のある弁護士法人マーキュリー・ジェネラルの代表パートナー。 国内外の企業法務、M&A、事業再生等に豊富な経験を有し、社外役員を務める会社も多数あり、各分野に関する講演歴等も多数にのぼる。