» ソレキアを巡るTOB合戦

テーマソレキアをめぐる 富士通とフリージアマクロスとのTOB合戦

平成29年2月3日にフリージアマクロス社がソレキア社に対してTOB実施を届け出。同年3月10日には、ソレキア社が本TOBについて反対を表明。同年3月16日に富士通がTOBを届出。ソレキア社は富士通のTOBに対して賛同を表明。その後両社によるTOB価格を両社が競う形で価格が上昇した。

その結果、平成29年5月23日に富士通のTOBが不成立になったと発表した。

※なお、各コメントについては、平成29年5月20日までの本TOBの動向を記載したものであり、最終結果について記載されていないものであります。

「ソレキアを巡るTOB合戦」

2017年5月24日
金子博人

弁護士
金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所) 事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。

ソレキアの買収合戦は興味深い。敵対的買収を仕掛けた方が海外ファンドでなく日本人であり、また型どおりホワイトナイトが登場したが、力及ばなかったからだ。

ソレキアは、東証ジャスラック(スタンダード)に上場している電子機器商社である。平成28年3月期では、売上げ約201億だが経常損失約1億2600万の赤字であった。赤字会社にもかかわらず、自己資本比率46.3%、純資産約53億8852万円で、資産的には優良企業であった。発行済み株式数約101万7000株なので、1株あたり5303円の純資産がある。ところが株価は過去1年間を見ても1700円台を低迷していた。1700円では、PBR(株価純資産倍率)は0.32、2000円でも0.37である。PBRは1を割ると、経営人の力量が問われるべきものである。佐々木氏のTOBの発表直前の株価も1942円なので、株主が良くだまっているなと不思議に思うほど、パフォーマンスが悪いのである。

これでは、経営陣を総入れ替えして、経営にてこ入れすべきだと思うものが出現しておかしくはないという状況だった。そして、今回の敵対的買収がスタートした。


17年2月3日、佐々木ベジ氏が、一株2800円でTOBを宣言したのだ。買付予定株数は、36.5万株(発行済み株式数の36%)であった。大株主になり役員を送りつけることをねらったものだろう。

佐々木ベジ氏は、押出機・アスファルト試験機・太陽光発電などを取り扱う大手産業メーカーであるフリージアマクロス株式会社(東証2部)の取締役会長である。

このTOBに対しては、ソレキアの現経営陣は、反対を表明した。そして、3月16日 富士通が1株3,500円でTOBを宣言し、巴戦がスタートした。買い付け予定株数は73.5万株、これは発行済み株式総数の72%に当たるもので、子会社化し、かつ上場廃止もねらっていたのだろう。

富士通に対してはソレキアの経営陣は賛成を表明。富士通は、典型的ホワイトナイトとなった。

ソレキアは1958年、富士通の特約店、富士電気の取扱店としてスタートした。当初は小林電材の名であった、02年に現在の社名へ変更している。現在でも、富士通エフサス(100%子会社)への売上高37億円(構成比18%)、富士通からの仕入れ高41億円(同39%)であり、また、富士通が取締役を派遣している。

大企業のグループ会社や世襲会社はリスクテークの意識に欠け、自ら市場を開くという意識に乏しいといわれる。 ソレキアは、富士通に依存した経営パターンで、佐々木氏に、市場開拓意識に欠ける典型だと思われたのだろう。

ホワイトナイトの登場を受け、3月21日 佐々木氏は買い付け価格を2800円から3700円へ増額した。3月29日、今度は富士通が3500円から4500円へ増額した。3月31日には、今度は佐々木氏が、4,500円へ増額した。そして4月5日、富士通が5000円へと増額した。まさに、TOB合戦である。

このとき富士通は、4月28日までの買付期限を5月10日に延期するとともに、価格は既に合理的限界を超えているとして、5000円を維持すると発表した。富士通の5000円での買い付け総額は約37億円となる。富士通としては、大きな金額ではなかっただろうが、今回のゲームは、ここまでと判断したのであろう。

これを受けた佐々木氏の動向が注目されたが、4月25日、価格を5450円に上げると発表すると同時に、買付期限を4月28日から5月12日に延期し、「買収に21億円は用意してあるが、増やす用意あり」と表明した。勝負にでたわけである。

5450円は、簿価ベースだが一株あたりの純資産を超えそうだ。しかし、佐々木ベジ氏は、経営者が変わればこの会社は成長すると読んだのだろう。


ところで、TOBの発表があると、市場の株価は買い取り価格を目指して急上昇する。ソレキアの場合も、その例に漏れなかった。2月のTOB発表後急上昇し、5月にはいると、5300円台の日が続くこととなった。その価格で買っても、TOBに応じれば利益がでるからである。

佐々木氏は、いま台湾の投資家と組みMBO(経営者による企業買収)を支援するファンド設立の準備を進めているとのこと。立ち上げ時には、100億規模を見込んでいるようだ。資産を十分に使いこなしていない経営陣は少なくない。やる気のある真の経営者を支援して、停滞している日本経済に活を入れてほしいものだ。

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    小黒健三

    公認会計士

    小黒健三 やまと監査法人パートナー 専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。

  • 「金融商品取引法から見るソレキアをめぐるTOB合戦」

    大塚 一暁

    弁護士

    弁護士 大塚一暁 大塚・川﨑法律事務所代表パートナー。2006年弁護士登録後大手渉外法律事務所であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所にて執務、その後2012年大塚・川﨑法律事務所を設立。中小企業から上場会社等に至るまで幅広く、M&A取引(デューデリジェンス及び契約交渉等)、MBOファイナンス等の買収ファイナンス、ストラクチャードファイナンス、金融規制等のアドバイスを専門として業務を行う。また、ベンチャー企業の支援も多数行っている。

  • 「ソレキアをめぐる、TOB合戦について」

    坂元 英峰

    弁護士

    平成8年京都大学法学部卒、平成10年京都大学大学院法学研究科卒。 平成12年4月弁護士登録。平成17年6月税理士登録。日系企業のアジア進出支援に定評のある弁護士法人マーキュリー・ジェネラルの代表パートナー。 国内外の企業法務、M&A、事業再生等に豊富な経験を有し、社外役員を務める会社も多数あり、各分野に関する講演歴等も多数にのぼる。