» セブンイレブンによる新たなる米国展開

テーマセブン&アイ・ホールディングスが米国のコンビニエンスストア事業などを買収

2017年4月6日、セブン&アイ・ホールディングスは、米国の連結子会社を通じて、Sunoco LP社からコンビニエンス事業とガソリンスタンド事業の一部を取得する、と発表しました。

取得対象となる事業の店舗数は1100店舗以上となり、米国事業会社の中期目標である31年度までの1万店舗達成に向けて、大きな弾みとなると考えられます。

このM&Aの目的や中身について考察します。

「セブンイレブンによる新たなる米国展開」

2017年5月31日
松本甚之助

弁護士
2006年弁護士登録、2012年アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士登録。クロスボーダーM&Aを含むM&A案件と国際取引、国際紛争、国際倒産処理手続等の渉外案件を中心に取り扱う。現在三宅坂総合法律事務所のパートナーとして、国内案件のみならずASEAN諸国や中国・インドなどにおけるクロスボーダーM&A等提携取引の事例と相談を多く手がけている。

7-Eleven, Inc.によるSunoco LPの店舗買収

株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下「7&i」という。)は、2017年4月6日、同社の米国所在の連結子会社である7-Eleven, Inc. (以下「SEI」という。)が、米国Sunoco LP からコンビニエンスストア事業及びガソリン小売事業の一部(1,108店舗)を取得することを決議したことを公表した[1]

 

日本市場と北米市場におけるセブンイレブンの立ち位置

7&iの開示資料によれば、SEIは、平成28 年12 月末時点で米国において8,707 店舗(前期末比207 店舗増)を展開しているとのことであり、同社が北米市場のコンビニ市場のシェアトップである[2]

日本でもセブン-イレブン・ジャパン(以下「SEJ」という。)は18,572店舗を有し(2016年2月末)、トップのシェアを占めているが、コンビニエンスストア市場全体との関係を見てみるとその立ち位置は随分と異なる。

まず日本についてみると、シェア上位3 社(SEJ、ファミリーマート+サークルKサンクス、ローソン)のシェア合計は87.3 %にものぼっており、3社による寡占化が進んでいる。SEJのシェアも34.4%となっている。

一方、米国においては、コンビニエンスストアが約154,000店舗あり、SEIがトップのシェアを有しているが、そのシェアは6%にも満たない。SEJのシェアが34.4%となっているのと比べるとSEIがトップシェアであるといっても、そのシェアは僅かなものである。

また、北米では上位3社のシェア合計は僅かに12.0%でしかない。そして、中小規模が22.3%、個人が63.1%のシェアを占めているのである。

このことから、7&iが米国に成長の機会を見出したことが納得できる。

 

セブンイレブンの北米におけるM&A戦略の転換

SEIは、2011年は352店舗、2012年は662店舗もの店舗をM&Aによって取得してきたが、2012年に量から質への転換をしており、2013年には121店舗、2014年には0店舗、2015年には181店舗しかM&Aにより店舗取得を行ってこなかった。また、2016年度においても、2016年7 月に米国CST Brands 社のガソリンスタンド及びコンビニエンスストア79 店舗を取得[3]、同年9 月Imperial Oil 社からカナダのアルバータ州及びブリティッシュコロンビア州のコンビニエンスストア148店舗の取得をしたが、M&Aによる大規模な拡大は実施していなかった。

しかし、7&iが、2016年10月に発表した同社グループの中期経営計画において、2019年度における商品平均日販5,000ドルおよび店舗数10,000店、3年間で1200店舗の純増という目標が開示された[4]

 

Sunoco LPの店舗買収

そのような中、1,108店舗もの多数の店舗を取得する事となったのが、今回のSunoco LLPの店舗買収である。

上記のとおり、北米ではまだ、コンビニエンスストアの寡占化が進んでいないことに加え、ガソリンメジャーによるコンビニエンスストアの付設されたガソリンスタンドを運営するリテール事業からの撤退を契機に、コンビニエンスストア専業チェーンによる業界再編が続いている。

そして、ガソリンメジャーによる小売事業からの撤退が進む中、①残された希少な優良案件であり、②店舗網の強化に役立つとSEIは評価して今回のディールを実施したとのことである。

①については、出資に必要な時価総額と買収後の純負債の返済に必要な金額を、EBITDA(利払い・ 税金・減価償却・償却控除前利益)の何年分で賄えるかを示すEV(企業価値)/EBITDA倍率は10倍程度とのことである。

ブルームバーグのデータによると、12年以降のコンビニ業界の買収案件のEV/EBITDA中間値は9.7倍だったとのことであり[5]、過去の案件と同程度ということになるが、これだけ大規模な店舗買収はそれだけでも希少価値があるであろう。また、取得するSunoco LLPの店舗では1日当たりの売上高が約4800ドルで、これはSEIの運営するコンビニと同水準であるということであり、自社と同程度の水準の店舗であれば、いずれも優良店舗といえるだろう。

また、②店舗網の強化についても、以下の表にあるとおり、既に店舗を多く持っている地域に新たな店舗を追加することで、同社の取るドミナント戦略とも合致しているといえる。

買収店舗数[6]

  Sunoco LP社

買収店舗数

SEI

既存店舗数

合計店舗数
中西部(テキサス州) 約550店 約680店 約1,230店
南東部(フロリダ州など) 約110店 約810店 約920店
北東部(ニューヨーク州など) 約450店 約2,960店 約3,410店
3エリア合計 約1,108店 約4,450店 約5,560店

 

 

[1] http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/localhost/pdf/20170406_03.pdf

[2]http://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/library/ks/pdf/2016_1007ks02.pdf

[3] http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/localhost/ja/release_pdf/20160603_01.pdf

[4]http://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/library/ks/pdf/2016_1007ks02.pdf

[5] https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-04-06/seven-i-to-acquire-some-sunoco-businesses-for-3-3-billion

 

[6]http://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/library/ks/pdf/2016_1007ks02.pdf

 

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  • 「セブン&アイ・ホールディングスの米国での挑戦ー子が親を超えたビジネス」

    鼎博之

    弁護士

    弁護士 鼎 博之(かなえ・ひろゆき)第二東京弁護士会及びニューヨーク州弁護士会所属。早稲田大学法学部、イリノイ大学アーバナ・シャンぺーン校ロースクール修了。所属するアンダーソン・毛利・友常法律事務所において、M&A、海外進出支援業務、雇用問題・労働法に関するコンサルティングに注力している。著書・論文に「M&A実務の基礎」(商事法務 2015年)(共著)、「企業経営を育てるコーポレートガバナンス 監査役の機能強化」(THE LAWYERS 2015年)などがある。