» 大黒屋HDによるブランドオフ買収、その先にあるもの

テーマ大黒屋ホールディングスと株式会社ブランドオフの資本業務提携の覚書について

大黒屋ホールディングス株式会社は、2017年6月15日、株式会社ブランドオフとの間で資本業務提携に向けた覚書を締結することを自社の取締役会において決議したことを公表しました。

 

「大黒屋HDによるブランドオフ買収、その先にあるもの」

2017年8月18日
阪野公夫

弁護士
阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

ブランドオフ買収の概要とスキーム

本年6月、質やブランド品の買取・販売の大黒屋HDが、ブランドオフを買収すると発表しました。公表されている内容をまとめると、以下の通りです。

大黒屋HD 業界第2位(英国での展開、中国本土に出店)

国内店舗  22店

英国   114店

中国     1店

売上高 206億

 

ブランドオフ 業界第3位(業者間ブランドオークション運営)

国内店舗  33店

香港    11店

台湾     5店

売上高 204億

 

買収のスキームとしては、大黒屋HDの子会社エスビーオーが、ブランドオフの全株式を取得、エスビーオーは大黒屋HDが70%出資・30%は中国のCITIC社が出資する、というものです。

日経新聞によると、ブランドオフの負債も大黒屋HDが引き受けると報じられています。では、この買収の背景には何があるのでしょうか。また、この先には何があるのでしょうか。

 

ブランドオフ買収の背景

ブランドオフは、主に中国からの観光客による日本国内での旺盛な消費により東京での店舗の売上げを伸ばしていました。しかし、インバウンド消費が下り坂となり、昨年10月、ブランドオフは東京等の4店舗の閉鎖を発表しました(在庫品は他店舗に移管するのではなく、いわゆる最終売り尽くしセールを実施しており、ブランドオフの資金繰りの悪化もうかがわれました)。インバウンド消費は観光客によるブランド品の購入に大きく影響するため、中古ブランド品業界全体に大きな影響があったと思われます。

今回のブランドオフ買収の背景には、インバウンド消費の収縮があったものと考えられます。また、インバウンド消費が収縮したといっても、(日本国内と比べれば)中国本土は消費欲が旺盛であり、中国やアジア圏といった進出計画も考えられます。

今回のブランドオフの買収は、インバウンド消費の収縮を背景として(とりわけブランドオフはインバウンド収縮の影響が大きかったものと推察されます)、業界第2位と第3位が提携して競争力を高め、ブランドオフの負債の引き受けを行い、中国のCITIC社の出資により資金力を強化する、こういった様々な要素がからんでいるものと理解できます。

 

ブランドオフの買収の先にあるもの

ネット情報ですが、今回のブランドオフの買収は、業界第2位と第3位とが提携して業界1位(コメ兵)を倒すというストーリーの中で語られることがありますが、買収の背景事情から考えると、打倒コメ兵というのは的外れだと思います。

中古ブランド品は、世界共通の価値(わかりやすく言えば、ヴィトンなどのブランド品はどの国においても一定の価格で購入される)があり、それゆえに、より消費意欲が高い国に進出すべきという経営判断が働いていると考えられます。

ですので、ブランドオフの買収は、大黒屋HDとブランドオフの日本国内の既存店の整理を促すだろうと考えられ、中国のCITIC社の資金力により、中国本土への進出、さらにアジア圏への進出へと展開するものと考えられるのです。かといって、大黒屋HDとブランドオフが日本国内から消滅することはないと考えられます。むしろ、ブランドオフが強みを有する中古ブランド品の業者間オークションを強化し、日本国内で言わば眠っている中古ブランド品を掘り起こし、「日本国内で中古ブランド品を仕入れて、中国で販売する」、という新たな展開も予想されます。

その他専門家コラム

  • 「大黒屋ホールディングス株式会社の子会社による株式会社ブランドオフの買収」

    藤原宏高

    弁護士

    弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

  • 「一味違う大黒屋HDによるブランドオフの買収 -日本企業がM&Aで失敗しないために」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

  • 「世界No1を狙う大黒屋ホールディングスによるブランドオフの買収」

    河本秀介

    弁護士

    敬和綜合法律事務所所属。東京大学法学部卒業後、三菱重工業株式会社資金部における4年間の勤務を経て、2007年に弁護士登録。 以後、企業での勤務経験を活かした実践的な角度によるコーポレート分野のリーガルアドバイス、M&Aアドバイス、企業間訴訟などを幅広く手掛けるほか、IT法務や金融・ファンドの分野にも独自の強みを持つ。