» 大黒屋ホールディングス株式会社の子会社による株式会社ブランドオフの買収

テーマ大黒屋ホールディングスと株式会社ブランドオフの資本業務提携の覚書について

大黒屋ホールディングス株式会社は、2017年6月15日、株式会社ブランドオフとの間で資本業務提携に向けた覚書を締結することを自社の取締役会において決議したことを公表しました。

 

「大黒屋ホールディングス株式会社の子会社による株式会社ブランドオフの買収」

2017年8月18日
藤原宏高

弁護士
弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

1.はじめに

大黒屋ホールディングス株式会社(以下「大黒屋HD」という)は、長期ビジョンとして「ブランド品リユース市場の世界ナンバーワン」を掲げており、商号変更前のアジアグロースキャピタル㈱の時代である2015年12月には、中国最大の企業集団 CITIC グループの連結子会社であり、中国質屋業界において大手であるCITIC XINBANG ASSET MANAGEMENT CORPORATION LTD.(以下「CXB」という)との間で、連結子会社である株式会社大黒屋(以下 「大黒屋」といいます。)が営む中古ブランド品の買取販売事業及び質事業のアジア圏でのシェア拡大、 ひいてはアジア圏 No1 となることを目的として業務提携を行い、合弁会社を設立することに関して覚書を締結している。

加えて、2017年5月23日付けでCXBとの間で資本業務提携を行い、100%子会社である株式会社エスビーオー(以下「SBO」という)に、大黒屋グローバルホールディング株式会社を通じて保有する国内および英国の事業を統合し、CXBもSBOに30%出資することで覚書を締結している。これは、今後、大黒屋HDとCXBで保有することになるSBOにて、グローバル展開をしてゆくことを目的としている。

今回の大黒屋HDによる株式会社ブランドオフ(以下「ブランドオフ」という)との間の資本業務提携に関する覚書の締結は、かかるCXBとのグローバル戦略に基づく共同施策の一環として実施するものであると説明している。

 

 

 

 

 

 

 

 

2.買収スキーム

大黒屋HDが2017年8月10日提出した2017年4月から6月末までの四半期報告書によれば、2017年6月15日付けで、大黒屋HDは,国内及び海外(香港及び台湾)に50店舗を展開し、400名を超える従業員を擁するブランドオフとの間の資本業務提携に関する覚書を締結したが、業界第2位及び第3位が協業することで販売力及び商品仕入力が強化されるのみならず、ブランド中古品買い取り販売業及び質事業のグローバル展開において不可欠となる経験豊富な鑑定力が増強されるなど、大黒屋グループの国内及び海外市場における事業基盤を更に強化するものであると説明している。

採用された買収スキームは、従前のCXBとの資本業務提携に基づき、大黒屋HDが出資するSBOがブランドオフの全発行済み株式を取得するが、その買収資金等を確保するため、CXBもSBOに対して30%の出資を行うという。また、SBOは買収後、ブランドオフに対して事業再構築に必要となる資金を追加出資等することが約束されており、株式買収総額及び追加出資総額の合計は20億円を上限としていると発表されている。

ブランドオフは非上場企業であることから、その株価の算定は非上場会社の株価算定方式に従い,デューディリジェンスによって決定される模様である。ブランドオフの決算書は開示されていないので,株式売買代金額を予想することは困難であるが,SBO側の拠出が20億円を上限としていることから,株式代金額が高くなれば,追加出資額は下がることになるのが面白い。

今回のM&Aは,大黒屋HD側がSBOによる買収後の追加出資まで約束している点で、大黒屋HD及びブランドオフ双方の事業再構築にかける意気込みが強く感じられる。

なお、ブランドオフの株式は、安山勉社長及びその資産管理会社が大部分を保有していることから、全株主の合意を得るにはそれほど困難はなかったものと思われる。今回のM&Aのポイントは,ブランドオフ側で,全株主の合意を得ることが容易な状態にあったことである。

ブランドオフは,今回のM&A については,業界シェア第2位の大黒屋HDと業界シェア第3位のブランドオフとの資本業務提携により,更にグローバル展開を加速でき両者のシナジー効果により両者の事業の一層の伸長と収益強化が可能になり業界No1を目指すと説明している。

その他専門家コラム

  • 「大黒屋HDによるブランドオフ買収、その先にあるもの」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「一味違う大黒屋HDによるブランドオフの買収 -日本企業がM&Aで失敗しないために」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

  • 「世界No1を狙う大黒屋ホールディングスによるブランドオフの買収」

    河本秀介

    弁護士

    敬和綜合法律事務所所属。東京大学法学部卒業後、三菱重工業株式会社資金部における4年間の勤務を経て、2007年に弁護士登録。 以後、企業での勤務経験を活かした実践的な角度によるコーポレート分野のリーガルアドバイス、M&Aアドバイス、企業間訴訟などを幅広く手掛けるほか、IT法務や金融・ファンドの分野にも独自の強みを持つ。