» 世界No1を狙う大黒屋ホールディングスによるブランドオフの買収

テーマ大黒屋ホールディングスと株式会社ブランドオフの資本業務提携の覚書について

大黒屋ホールディングス株式会社は、2017年6月15日、株式会社ブランドオフとの間で資本業務提携に向けた覚書を締結することを自社の取締役会において決議したことを公表しました。

 

「世界No1を狙う大黒屋ホールディングスによるブランドオフの買収」

2017年8月18日
河本秀介

弁護士
敬和綜合法律事務所所属。東京大学法学部卒業後、三菱重工業株式会社資金部における4年間の勤務を経て、2007年に弁護士登録。 以後、企業での勤務経験を活かした実践的な角度によるコーポレート分野のリーガルアドバイス、M&Aアドバイス、企業間訴訟などを幅広く手掛けるほか、IT法務や金融・ファンドの分野にも独自の強みを持つ。

 

1 業界第2位と第3位の業務提携

 中古ブランド品販売・質屋業の株式会社大黒屋(以下「大黒屋」といいます。)を傘下に置く、大黒屋ホールディングス株式会社(以下「大黒屋HD」といいます。)は、本年6月15日、株式会社ブランドオフ(以下「ブランドオフ」といいます。)との間で資本業務提携に向けた覚書を締結することを自社の取締役会において決議したことを公表しました。

現時点で大黒屋は日本国内における中古ブランド品販売業界におけるシェア第2位の、ブランドオフはシェア第3位の位置にあるとされていますので、これらの企業2社が提携することで、大きく競争力を伸ばすことが期待されます。

大黒屋HDによると、現在、ブランドオフとの資本業務提携は基本合意の段階であり、今後、本年8月末を目標に正式な資本業務提携契約を締結することが予定されています。

さて、今回の大黒屋HDとブランドオフとの資本業務提携は、中国資本の参加を前提とするやや複雑なプロセスを踏むようです。

今回の資本業務提携がどのようになされるのか、また、大黒屋グループが何を目指しているのか、見て行きたいと思います。

 

2 中国資本の参加を前提とする資本業務提携

大黒屋HDは、ブランドオフとの資本業務提携に先だって、中国国内の大手金融グループであるCITIC傘下の企業であり、中国の大手質屋であるCITIC XINBANG ASSET MANAGEMENT CORPORATION LTD.(以下「CXB」といいます。)が大黒屋グループに対して出資することを発表しました。今回の大黒屋HDとブランドオフとの資本業務提携も、CXBによる出資金を活用したものとなるようです。

さらに、大黒屋HDはCXBからの出資を受けるにあたり、グループ企業内の資本関係の整理を行いました。具体的には、大黒屋の100%親会社である大黒屋グローバルホールディング株式会社(以下「大黒屋GH」といいます。)の株式について株式併合を行い、同社の株主からグループ企業以外の株主を排除しました。

また、現時点では「資本業務提携」という言葉が使われていますが、ブランドオフは最終的に大黒屋HDとCXBが共同出資する会社の100%子会社になることが想定されています。

以上を整理すると、今般の提携は、次なる3つの段階を踏んで実施されるものと思われます。

① グループ内の資本関係の整理(株式併合によるグループ外株主の排除)

② CITICグループ(CXB)による出資

③ SBO(CXBと共同出資する会社)によるブランドオフ株式の取得

 

3 資本業務提携までの3段階

(1) 第1段階 グループ内の資本関係の整理

まず、大黒屋は、大黒屋GHを100%親会社とする株式会社です。そして、大黒屋GHは、大黒屋HDが議決権の70.4%を、オリオン・キャピタル・マネージメント株式会社(以下「OCM」といいます。)が議決権の17.0%を、その他の株主が議決権の12.6%を保有する会社でした。

OCMは、大黒屋HDの100%子会社であった株式会社エスビーオー(以下「SBO」といいます。)の100%子会社です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今般、CXBによる資本参入は、CXBが株式を保有する予定のSBOが、大黒屋GHの株式を間接保有も含めて100%保有することが前提とされています。

この前提のため、大黒屋グループは、大黒屋GHの株式について、大黒屋HDとOCM以外の株主(いわゆる一般株主)の株式数が1株未満となる内容の株式併合を実施しました。

株式併合とは、2株以上の発行済株式を統合して1株にすることです。

本来的には、株式併合は増えすぎた発行済株式数を減らすことが目的ですが、少数株主を排除する手法としても用いられることがあります。

例えば、ある株式会社に3名の株主がいるとして、A株主が90株、B株主が7株、C株主が3株保有しているとします。この場合、10株を統合して1株にする内容の株式併合を行った場合、それぞれの株主の株式数は、A株主が9株、B株主が0.7株、C株主が0.3株となります。

1株未満の株式しか有さない株主には、株主権の行使が認められません。最終的にB株主とC株主が保有する合計1株は、会社などが強制的に買取り、その代金を両株主それぞれに按分することになります。

今回、大黒屋GHは、OCMと大黒屋HD以外の一般株主の持株数が1株未満となる内容の株式併合を実施しました。これにより、大黒屋GHの株主は大黒屋HDとOCMの2社のみになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

株式併合後、大黒屋HDは、自社で保有する大黒屋GHの株式をOCMに譲渡することを予定しており、これらが実現した場合にはOCMが大黒屋GHの単独株主となります。

(2) 第2段階 CITICグループ(CXB)による出資

第1段階が実施されることを前提として、CXBは、SBOの議決権の30%を保有する株主となることが想定されています。

その結果、大黒屋の100%親会社が大黒屋GHであり、その大黒屋GHの100%親会社がOCMとなり、更にそのOCMの100%親会社がSBOであるため、実質的にCXBは大黒屋の30%(間接)株主となります。

 

 

 

 

 

 

 

(3) 第3段階 SBOによるブランドオフ株式の取得

第2段階までが実施されることを前提として、SBOはブランドオフの発行済株式の全部を取得します。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、SBOがブランドオフの株式を取得した後、ブランドオフに対して、CXBの資金により、さらなる追加出資を行い、ブランドオフの財務基盤を強化することが想定されています。

資本関係は、結局、大黒屋HDとCXBがジョイント・ヴェンチャーのような形で共同出資するSBOが、その傘下に大黒屋とブランドオフの両社を保有する形となります。

 

4 資本業務提携が目指すもの

以上見てきたとおり、今回の提携は、CXBによる大黒屋グループへの資本参入が前提となっています。

CXBは、既に中国国内において大黒屋HDと50%ずつ共同出資した会社である「北京信邦大黒屋商質有限責任公司」(以下「本公司」といいます)を立ち上げています。

これに対し、ブランドオフは、既に台湾・香港など、中国大陸外に多数の店舗を構えており、日本国外志向の強い会社のようです。

すなわち、大黒屋HDとCXBは、今後、両社の間で設けた本公司とSBOという二つのJVを通じ、海外(日本国外)では、中国大陸本土と大陸外の双方で関連事業の展開を図ろうとしているのでしょう。

また、日本国内においては、業界第2位(大黒屋)と第3位(ブランドオフ)が手を組み、第1位(コメ兵)に迫ろうとしているのでしょう。

大黒屋HDは、今回の業務提携を含む一連の組織再編にあたり「ブランド中古品買い取り販売業及び質事業における世界No1になる」という大きな目標を掲げています。

今後、大黒屋グループが、ブランドオフとのシナジーをどのように活かし、海外進出を含む事業展開をしてゆくかが注目されます。

その他専門家コラム

  • 「大黒屋ホールディングス株式会社の子会社による株式会社ブランドオフの買収」

    藤原宏高

    弁護士

    弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

  • 「大黒屋HDによるブランドオフ買収、その先にあるもの」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「一味違う大黒屋HDによるブランドオフの買収 -日本企業がM&Aで失敗しないために」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。