» 外食産業の海外進出とM&A~トリドールの展開~

テーマ外食産業の海外進出とM&A

2017年7月13日、株式会社トリドールホールディングスは米国の外食ファンドへの出資を決定した。世界最大の外食市場アメリカで新たなアイデアに積極投資し、海外事業を加速されることも目的としている。

株式会社トリドールホールディングスは2025年に世界6000店舗体制実現を加速するために、今回の出資により米国外食市場で大きく成長するであろう企業の情報をいち早く収集すること可能にするとしている。

外食産業の海外進出について、考察します。

「外食産業の海外進出とM&A~トリドールの展開~」

2017年8月23日
中野友貴

弁護士
クレア法律事務所所属弁護士。 2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。 著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。

 

 

2017年7月、うどん店である丸亀製麵を展開するトリドールホールディングス(以下、「トリドール」といいます。)は、米国の投資会社ハーゲット・ハンター・キャピタル・パートナーズ(以下、HHCPといいます。)が組成した投資ファンド(以下、HHPBFといいます。)に500万ドルの出資を決定したことを発表しました。

 

HHCPは、2015年7月に設立されたプライベートエクイティファンドです。プライベートエクイティファンドは、未公開企業に対してマジョリティ投資を行い、経営に積極的に関与し、企業価値の向上を図ります。HHCPは、米国のレストランに対して投資を行っています。

このような外食業界専門のHHCPが組成するHHPBFに出資を行うことにより、トリドールは、米国外食業界の未公開会社に関する情報を収集できるメリットを享受することになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、トリドールは、このようなメリットをどのように活用していくことが予想されるでしょうか?

まず、トリドールの海外展開状況を見てみましょう。

トリドールは、2011年にハワイにうどん店「MARUKAME UDON」を出店して以来、中国、東南アジア、韓国、ロシアなどにうどん店である丸亀製麺を展開しています。

また、2013年には米国の和食レストランを運営する企業のグループ化、2014年にはマレーシアのヌードルチェーンのグループ化、2015年には欧州を拠点とするアジアンファストフードチェーンのグループ化、2016年には欧州を拠点とするラーメン店のグループ化などを進め、積極的に海外事業を展開しています。

2017年3月時点での海外事業の店舗数は、334店舗。地域も中国、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパなど広く展開しています。

 

 

トリドールは、2025年に世界6000店舗(うち国内2000店舗)の展開を目標に掲げています。海外事業の展開は、トリドールにとって、今後も重要な戦略の一つです。この実現のために、M&Aによって成長力のあるチェーン店の獲得や、好調な既存店舗の多店舗化などを推し進めていくものと思われます。

 

 

エリアにかかわらず広く展開しているトリドールですが、アメリカ本土では店舗数は2017年3月時点で3店舗にとどまっています。アメリカの外食産業の市場規模は、世界全体の支出額の40%を占めるとも言われており、世界6000店舗展開を目指すためには無視できないエリアです。

今回のHHPBFへの出資によって、トリドールは、米国内での外食業界でのM&Aを進めていくものと思われます。

 

 

さて、外食産業の海外展開はより活発化していくものと思われます。

吉野家・はなまるうどんを展開する吉野家ホールディングスは、2017年2月時点で海外に733店舗を展開し、今後も海外展開を伸ばしていくものとされます。また、ペッパーランチを展開するペッパーフードサービス、大戸屋を展開する大戸屋ホールディングス、CoCo壱番屋を展開する壱番屋なども、海外展開に注力し、海外での店舗数の増加を目指しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このような背景には、様々な要因が考えられます。

ひとつには、参入障壁が比較的低い外食産業において多様な業態が続出し、かつ、少子高齢化や人口減少などといった要因も相まって、国内市場での競争が激化していることがあるといわれます。

一方で、海外に目を向けると、アジア地域での人口の増加や、所得水準の高まりなどにより、外食産業の活発化が予想され、これに海外における日本食の人気の高まりが相まって、海外展開は外食産業にとって重要な戦略と言われています。

このような背景を踏まえて、今後も海外展開はますます増加するものと思われます。

 

 

このような背景により、外食産業は常に海外に目を向けていくと思われます。ただし、外食産業のビジネス上、海外で広く展開することは必ずしも容易ではありません。

まず、日本人の嗜好や食べ方などとの相違といった食文化の違いにより、受容されないという問題があります。また、食材の調達、加工、配送が効率的に行われなければならないところ、国内の環境とは異なり、それらが困難である場合があります。他にも、接客を行う人材の獲得・育成が困難であるという状況があります。加えて、適切な店舗立地の確保のためのノウハウの獲得などといった問題もあります。

このような外食産業の海外展開を阻害する要因を踏まえ展開を図る必要があるといえます。

 

 

このようなノウハウの獲得には、M&Aが効率的であるといえます。自らが海外に新規出店し、上記のノウハウを一から構築するためには相当な困難が伴うことが予想されます。

一方で、M&Aによれば、物流システムや人材募集のノウハウなど既存のノウハウを活用することができ、そこに日本企業が持つノウハウを加えていくことによって成長力のある企業を育てることができます。

トリドールは、今回の出資によって、米国内の企業情報のほかこのようなノウハウに関する情報を獲得できることになります。これによりM&Aを広く行うことによって世界で4000店の実現を目指していくものと思われます。

今後、トリドールが米国でどのように展開をしていくのが注目です。

 

 

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