» トヨタとマツダによる業務資本提携について

テーマトヨタとマツダの業務資本提携の目的とは?

2017年8月4日、トヨタとマツダの業務資本提携が発表されました。この業務資本提携の目的とは?プロの視点から考察します。

「トヨタとマツダによる業務資本提携について」

2017年10月16日
花澤健司

公認会計士
大手監査法人で会計監査業務および会計アドバイザリー(IPO、企業価値評価、企業再生及びM&Aのための財務デューデリジェンス)の業務に従事したほか、PE Fundおよび不動産ファンドに対して、M&Aアドバイス及び会計スキーム構築アドバイス、内部統制アドバイスに行った。2012年1月より独立開業、バイオベンチャーのCFOや資金調達支援といったコンサルティング以外の業務も積極的に行っている。

2017年8月4日にトヨタとマツダより、資本業務提携の発表があった。内容の詳細は両社のIRに参照していただきたいが、まず、業務提携の項目だけを記載すると「米国での完成車の生産合弁会社設立」、「電気自動車の共同技術開発」、「コネクティッド技術の共同開発」、「先進安全分野における技術連携」、および「商品補完の拡充」を推進いくいことが決まっている。

 

 

 

一方で資本提携は規模としてはそこまで大きなものではないが、約500億円を双方出資し、マツダの株式の5%(増資後)とトヨタの株式の0.25%(自己株式処分後)を相互に持ち合うとこととなっている。

 

業務提携自体は、両社が2015年5月にすでに協業に関しての合意がなされており、お互いがもつ長所短所を精査し、2年かけて今回の項目を合意していったということで、すんなりと理解ができる。一方で、資本提携すなわち株式の持ち合いに対するインパクトは大きいと思う。なぜなら、資本提携で持ち合う株式比率はトヨタでは有価証券報告書の大株主の状況にも記載されない程度の影響しかないが、マツダにとっては今回の増資で、トヨタがほぼ筆頭株主になるためだ。通常資本提携はお互いの関係を深めるためのものと将来的な統合を目指すものと2通りあると考えられるが今回の件はより後者の意味合いを帯びているのではないかと筆者は思っているし、市場からも驚きをもって見られていると考える。

 

その背景には自動車業界が抱える大きなパラダイムシフト影響していることは明白であり、筆者としては大きく2つあると思っているそれは「自動運転」と「エンジンの多様化(電気や水素)」である。なぜなら、永らく自動車業界のサービスには、「石油(ガソリン)を燃料にしたエンジンを使用し、人が運転操作を行う移動手段の提供」という暗黙の前提があった。そのため自動車業界は「燃費が良く、パワフルなエンジン」や「人が快適にかつ安心安全に運転操作ができる」車の開発に注力してきたといえる。しかし、この暗黙の前提がIT技術の進歩とともに急速に崩れてきており、かつ、方向感も漠然としており、事業環境は混沌としてきていると考えられる。

 

もちろん、両社ともその環境変化に対応していないわけでなく、多額の研究開発費用を毎年拠出している。会計上、研究開発にかかる費用は原則として即時費用化されるため毎年の損益に多大な影響を及ぼしている。以下はトヨタとマツダの2社の売上高、経常利益、及び研究開発費の推移である。

 

 

 

 

 

 

 

 

経常利益は研究開発費控除後の利益になるため、トヨタもマツダも経常利益の半分から同額程度の研究開発費を費やしていることになる。これ以上の研究開発費を負担するのは両社とも限界に近いのではないかと考える。業界のパラダイムシフトが起きている状況でかつ、方向感が乏しい中で、お互いの長所を生かしつつ、研究開発を実施するほうが、より効率的かつ有効に開発ができると考えるのは、同業他社を筆頭株主として受け入れるという生き残りをかけたある意味当然の選択肢であったのではないかと思う。

 

今後、トヨタとマツダが事業を統合するのか否かは今回の業務資本提携の成否次第ではあるとはいえ注視していきたいと思う。

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  • 「トヨタとマツダの業務資本提携について」

    漆山伸一

    公認会計士

    公認会計士、税理士、証券アナリスト。監査法人トーマツ、デロイトトーマツコン サルティング合同会社を経て独立、漆山パートナーズ会計事務所(現税理士法人 漆 山パートナーズ)を設立。現在、株式会社アットタックの代表も務め、会計税務業 務、企業再生、事業承継、M&A、海外資産運用サポートなどのコンサルティング業務 にも多く携わる。その他、上場企業の取締役も歴任している。