» トヨタとマツダの業務資本提携について

テーマトヨタとマツダの業務資本提携の目的とは?

2017年8月4日、トヨタとマツダの業務資本提携が発表されました。この業務資本提携の目的とは?プロの視点から考察します。

「トヨタとマツダの業務資本提携について」

2017年10月30日
漆山伸一

公認会計士
公認会計士、税理士、証券アナリスト。監査法人トーマツ、デロイトトーマツコン サルティング合同会社を経て独立、漆山パートナーズ会計事務所(現税理士法人 漆 山パートナーズ)を設立。現在、株式会社アットタックの代表も務め、会計税務業 務、企業再生、事業承継、M&A、海外資産運用サポートなどのコンサルティング業務 にも多く携わる。その他、上場企業の取締役も歴任している。


■トヨタとマツダの業務資本提携について

2017年8月4日に、トヨタ自動車株式会社とマツダ株式会社との業務資本提携を発表されました。今回は、当該業務資本提携の意図について考察したいと思います。

 

今回の契約で合意された4つの内容については以下の通りです。(トヨタプレスリリースより記載)

 

①米国での完成車の生産合弁会社の設立

②電気自動車の共同技術開発

③コネックティッド・先進安全技術を含む次世代の領域での協業

④商品補完の拡大

 

今回の提携により、約500億円を双方出資し、マツダの株式の5.05%(増資後)とトヨタの株式の0.25%(自己株式処分後)を相互に持ちことになりました。これにより、トヨタはマツダの筆頭株主になり、関係性は強化されたと言えます。では、なぜ業務資本提携に至ったでしょうか。それには、世界の自動車産業が急激に変化しており、その対応が急務であると考えられます。

 



■世界の自動車産業が変化している

世界の自動車産業のトレンドが変化しつつある。その大きな要因として、環境問題に配慮し、英国およびフランスがガソリン車及びディーゼル車の販売禁止の規制が2040年に行うことが発表されており、電気自動車の販売が今後伸びていく見込みなのです。

また、アジアでは、中国では大気汚染が深刻であることから国策として電気自動車の販売促進を進めています。その影響から、中国国内の企業はこぞって電気自動車事業に参入し、その結果電気自動車の中国国内のシェアは中国企業で占めており、外国の企業のシェアは小さくなっています。外国企業の各社は、シェアの拡大を狙っている状況なのです。

もうひとつ大きなトレンドとしては、AIを活用した、自動車の開発です。先進安全技術と呼ばれている分野についても開発競争が世界では激化していて、Googleなどが全自動運転技術の開発を行うなど、従来の自動車産業では考えられないライバルが参入するなど市場環境が大きく変化しているのです。

 

■トヨタとマツダの研究開発費の支出状況

前述した、自動車産業の変化に対して、ここまでのトヨタ及びマツダは結果が出せていないのではないかと考えられます。電気自動車の分野では先に進んでいる、日産と比較していきたいと思います。

 

日産自動車株式会社(単位:百万円)

2013年3月 2014年3月 2015年3月 2016年3月 2017年3月
売上高 8,737,320 10,482,520 11,375,207 12,189,519 11,720,041
経常利益 504,421 527,189 694,232 862,272 864,733
研究開発費 466,900 500,600 506,100 531,900 490,400
売上高研究開発比率 5.3% 4.8% 4.4% 4.4% 4.2%
経常利益研究開発比率 92.6% 95.0% 72.9% 61.7% 56.7%

(有価証券報告書から抜粋。研究開発費については、第2【事業の状況】の内、6【研究開発】より抜粋。各比率は筆者が計算した)

 

・トヨタ自動車株式会社(単位:百万円)

2013年3月 2014年3月 2015年3月 2016年3月 2017年3月
売上高 22,064,192 25,691,911 27,234,521 28,403,118 27,597,193
税金等調整前当期純利益※1 1,403,649 2,441,080 2,892,828 2,983,381 2,193,825
研究開発費※2 785,915 887,565 980,408 1,031,826 1,014,110
売上高研究開発比率 3.6% 3.5% 3.6% 3.6% 3.7%
税金等調整前当期純利益研究開発比率 56.0% 36.4% 33.9% 34.6% 46.2%

(有価証券報告書から抜粋。研究開発費については、第2【事業の状況】の内、6【研究開発】より抜粋。各比率は筆者が計算した)

1:米国会計基準に準拠しているため、経常利益ではなく、当該利益で比較する。

2自動車事業に係る研究開発費を記載。

 

・マツダ株式会社(単位:百万円)

2013年3月 2014年3月 2015年3月 2016年3月 2017年3月
売上高 2,205,270 2,692,238 3,033,899 3,406,603 3,214,363
経常利益 33,087 140,651 212,566 223,563 139,512
研究開発費 89,900 99,400 108,400 116,600 126,900
売上高研究開発比率 4.1% 3.7% 3.6% 3.4% 3.9%
経常利益研究開発比率 271.7% 70.7% 51.0% 52.2% 91.0%

(有価証券報告書から抜粋。研究開発費については、第2【事業の状況】の内、6【研究開発】より抜粋。各比率は筆者が計算した)

 

3社を比較した際に、トヨタが金額的にみれば大きいですが、比率でみれば、日産が事業規模に対して多くの研究開発費を支出していることがわかります。また、マツダについても、利益と比較するとかなりの金額を支出していますが、日産と比較すると、利益をかなり圧迫しています。

また、各社の有価証券報告書の第2【事業の状況】の内、6【研究開発】から読み取れる内容も、日産は、先進安全技術への言及や電気自動車(リーフ)の販売状況などについて多く記載しています。トヨタについても、先進安全技術についても言及しているが、やはりハイブリットカーへの記載が多い印象を受けます。マツダについて最近では、電気自動車のデミオEVのリース販売を開始したが、デミオEVの航続距離が200kmと、新型リーフが400kmであることを考えると開発が進んでいないことがわかります。
 




 

電気自動車や先進安全技術でライバルに勝つ

今回の業務資本提携では、トヨタとマツダの思惑が一致したものといえます。マツダは高い開発技術力を持っている企業でありますが、前述のとおり多くの研究開発費を単独で支出し続けることは、難しくなっていくと考えられます。一方トヨタは、研究開発費の支出の余力はまだまだあり、マツダの開発技術力を利用することで電気自動車や先進安全技術で他のライバル企業に勝つことを考えていると言えます。また最近では、トヨタ、マツダ、デンソーの3社で電気自動車の開発のための会社を設立することを発表されています。トヨタ、マツダの今後に注目していきたいと思います。

その他専門家コラム

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    花澤健司

    公認会計士

    大手監査法人で会計監査業務および会計アドバイザリー(IPO、企業価値評価、企業再生及びM&Aのための財務デューデリジェンス)の業務に従事したほか、PE Fundおよび不動産ファンドに対して、M&Aアドバイス及び会計スキーム構築アドバイス、内部統制アドバイスに行った。2012年1月より独立開業、バイオベンチャーのCFOや資金調達支援といったコンサルティング以外の業務も積極的に行っている。