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テーマAMBITION、ヴェリタス・インベストメントを完全子会社化

株式会社AMBITIONは、平成29年10月2日の取締役会において、株式会社ヴェリタス・インベストメントの発行済株式の一部を取得し、その後、ヴェリタスを完全子会社とする簡易株式交換を行うことについて決議し、ヴェリタスの株主との間で株式譲渡契約を締結した。

株式会社AMBITIONは設立から、賃貸不動産事業を中心に事業の多角化を行ってきた。今回、株式会社AMBITIONがもつ不動産賃貸ノウハウやネットワークと、株式会社ヴェリタス・インベストメントの強みである投資用物件の開発力を統合することで、更なる不動産事業の相乗効果を見込んでいる。

 

「AMBITIONによるヴェリタス・インベストメントの買収について」

2017年11月1日
小林幸与

弁護士・税理士
明治大学法学部卒業後の昭和61年から弁護士活動開始。結婚出産子育てを経て、平成9年より豊島区池袋にて弁護士活動を再開。その後、東京税理士会に登録して税務分野に拡大。法人化を機会に平成26年東京銀座に進出。現在は、弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京の代表として、銀座本店と池袋支店で弁護士5名・税理士2名の体制にて、相続税務や事業承継を含む相続全般・不動産関係に特化した事務所を経営する。

 

1、 はじめに

2、 AMBITIONについて

3、 ヴェリタス・インベストメントについて

4、 本件買収の目的・理由など

5、 買収方法としての株式売買と株式交換とは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1、 はじめに

平成29年10月、株式会社AMBITION(以下「AMBITION」といいます。)は、株式会社ヴェリタス・インベストメント(以下「ヴェリタス・インベストメント」といいます。)の発行済株式3万2000株の内、3万1528株を購入し、その後、残り472株については、AMBITIONを完全親会社、ヴェリタス・インベストメントを完全子会社とする簡易株式交換を行うことを公表しました。株式購入価格は34億5000万円です。

 

2、 AMBITIONについて

AMBITIONは、代表取締役清水剛氏が2007年9月に設立した株式会社であり、「不動産SPA企業」としてプロパティマネジメント業(マンションの維持管理・入居者管理・募集を行う事業)、インベスト事業(仕入れた中古マンションをリノべーションして再販売・1棟ビルのプロデュース等の事業)、不動産賃貸仲介業などのサービスを提供している会社です。同社は、2014年9月、東京証券取引所マザーズに上場した後、2015年7月には株式会社VALORをM&Aで取得するなど、事業拡大を進めています。2017年6月期のグループ会社全体の売上は約145億円、同期営業利益は約2億9100万円です。

 

3、 ヴェリタス・インベストメントについて

ヴェリタス・インベストメントは、同社代表取締役川田秀樹氏が2008年3月に設立した会社であり、主に東京都・神奈川県のプレミアムエリアを営業エリアとする投資用ワンルームマンションの開発・分譲販売を行っています。ITで利便性を高めた高付加価値マンションの開発に取り組んだり、グラマラスのデザイナー森田恭通氏やタレント押切もえ氏などがプロデュースするマンションも展開しています。2016年9月期売上は約84億円、同期営業利益は約4億2400万円です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4、 本件買収の目的・理由など

AMBITION側の説明によれば、不動産に関わる事業のさらなる拡大を目指し、同社の既存事業とのシナジー効果を発揮すると見込んで、ヴェリタス・インベストメントを買収したとのことです。すなわちAMBITIONの持つ不動産賃貸のノウハウ及びネットワークとヴェリタス・インベストメントの強みである投資用ワンルームマンションの開発のノウハウ及びネットワークを統合することにより、賃貸・売買物件の開発・調達・流通・販売から賃貸仲介・企画・運営などまでの不動産ビジネスにおける一気通貫サービスを提供することが可能になるとしています。AMBITIONによるヴェリタス・インベストメントの買収は、同社最大の創業以来の投資であり、グループの売り上げ及び利益指標は大幅に増加するとともに、事業規模拡大により効率化が進められると思われます。

 

5、 買収の手段としての株式売買と株式交換の手法について

本件買収では、ヴェリタス・インベストメントを完全子会社化する方法として、同社の株式の大半を購入した後に、残株式について簡易株式交換をする手法を取っています。  株式交換は、買収企業A社が自社(A社)の株式を、売却企業B社の株主が保有するB社の株式と交換することであり、売却企業を100%子会社(完全子会社)とするための企業再編手法です。株式交換は、交換を行う当事者及び会社債権者にとっては、重要な影響がありますので、会社法は基本的に厳格な手続を要求しています。手続の一つとして、親会社(買収企業)及び子会社(売却企業)において、株主総会の特別決議を得る必要があります。けれども事務作業の負担が大きいケースがあることから、会社の実質的なオーナーたる株主に影響が少ないと認められる場合には、会社法は、株主総会の特別決議を省略して、迅速に株式交換を進めることを認めています。

本件で利用された株主株式交換とは、完全親会社が交付する株式交換の対価相当額が、その純資産額の5分の1以下であれば、完全親会社において株主総会が不要となるものです。AMBITIONが上場会社で変動する多数の株主がいることから、株主総会の特別決議を省略し、迅速に株式交換を進めたいという意図があったと思われます。売却企業のヴェリタス・インベストメントは、AMBITIONとの財務内容の比較において、営業利益・純資産・総資産・1株あたりの利益・1株あたりの純資産等が、いずれも上回っており、AMBITION側としては、ぜひとも買収したい企業であったと推測できますが、他方ヴェリタス・インベストメントのオーナー株主としては、全株式の交換による子会社化のメリットを感じられず、株式売買をメインとし、経営参画に必要な範囲での株式交換にとどめたと推測できます。

本件での株式売買と株式交換との併用は、AMBITIONのオーナー株主の意図とヴェリタス・インベストメントのオーナー株主の意図が合致した手法といえます。

 

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