» AMBITIOMによるヴェリタス・インベストメント買収について

テーマAMBITION、ヴェリタス・インベストメントを完全子会社化

株式会社AMBITIONは、平成29年10月2日の取締役会において、株式会社ヴェリタス・インベストメントの発行済株式の一部を取得し、その後、ヴェリタスを完全子会社とする簡易株式交換を行うことについて決議し、ヴェリタスの株主との間で株式譲渡契約を締結した。

株式会社AMBITIONは設立から、賃貸不動産事業を中心に事業の多角化を行ってきた。今回、株式会社AMBITIONがもつ不動産賃貸ノウハウやネットワークと、株式会社ヴェリタス・インベストメントの強みである投資用物件の開発力を統合することで、更なる不動産事業の相乗効果を見込んでいる。

 

「AMBITIOMによるヴェリタス・インベストメント買収について」

2017年11月1日
飯島康央

弁護士
弁護士 飯島康央 紀尾井町法律事務所所属。2000年4月弁護士登録。2015年度第二東京弁護士会副会長。2015年6月からパルシステム生活協同組合連合会員外監事を務めています。 離婚や相続問題、交通事故や消費者事件などの他、企業間の法的トラブルに関する訴訟事件や契約書の作成、審査、債権回収、労務問題など、中小企業の法務支援にも力を注いでいます。

1 はじめに

東京都心で若年層向けのマンションのサブリース事業を中心に展開する不動産会社である株式会社AMBITION(以下「AMBITION」といいます。)は、東京都心や横浜、川崎を中心に投資用新築デザイナーズマンションの開発、販売、管理事業を行っている株式会社ヴェリタス・インベストメント(以下「ヴェリタス」といいます。)の発行済み株式の一部を取得するとともに簡易株式交換を行う事でヴェリタスを完全子会社にすることを発表しました。

今回の買収は、ヴェリタスを完全子会社とする手続きとして、株式譲渡のみならず株式交換という手続きをとっていることに他の買収手続きとは異なる特徴があります。そこで、今回は株式交換を中心として述べていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 株式交換について

(1)株式交換とは

 株式交換とは、既存の株式会社又は合同会社(以下「A」とします。)に対し、他の既存の株式会社(以下「B」とします。)の株主が有する全株式を移転させて、Aが完全親会社となるものを言います(会社法767条、769条1項)。

この株式交換は、既存の株式会社Bを完全子会社とする完全親子会社関係を創設することを目的とした制度です。同じ目的で株式移転の制度があり、これは完全親会社となる株式会社Aが新設されて、Bの株主が有する全株式が移転する場合を言います(会社法773条1項、774条1項)。完全親会社となるAが既存の会社の場合が株式交換、新設された会社の場合が株式移転となります。

このような制度が設けられた趣旨は、平成9年の独占禁止法改正により、持株会社が解禁されたことから、既存の会社を子会社とする持株会社を新設する手続きが必要となり、更に、持株会社は新設される場合に限らないことから、既存の会社を完全子会社化する一般的な制度が必要となって、創設されたものです。

 

 

(2)簡易株式交換

今回行われた株式交換は、AMBITIONの株主総会決議の承認を要しない簡易株式交換(会社法796条2項)でした。通常の株式交換においては、株主保護の観点から、完全親会社となる会社においても、完全子会社となる会社においても、株主総会による特別決議が必要(会社法783条1項、795条1項 309条2項12号)とされています。しかし、完全親会社となるA社においては、①株式交換に際しAが交付するA株式の数に一株当たりの純資産額を乗じて得た額、及び、②株式交換に際しAが交付するAの社債その他の財産の帳簿価額の合計額がAの純資産額の5分の1を超えない場合には、Aの株主に及ぼす影響力が軽微であることからAについては株主総会の承認決議が不要とされています(会社法796条2項)。また、完全親会社となるAがBの特別支配会社(会社法468条1項)である場合にはBにおける株主総会決議が不要とされています(会社法784条1項)。

今回の株式交換では、AMBITIONが交付する社債その他の財産の有無及び額は不明ですが、交付する株式数は4万5000株であり、一株当たりの純資産額を乗じた金額との合計額が純資産額の5分の1を超えないことから、AMBITIONにおいては株主総会決議が不要とされています。また、株式交換に先立ちヴェリタスの株式3万1528株(発行済み株式の98.5%)がAMBITIONに譲渡されている事からAMBITIONはヴェリタスの特別支配会社であると言え、よって、ヴェリタスにおいても株式交換に際して株主総会の決議が不要とされています。

 

 

 

3 株式交換を行った理由

(1)完全子会社化のための方策

企業の買収の方策としては、合併や株式譲渡による完全子会社化などが考えられますが、合併が権利義務の承継を伴うものであるのに対し、株式譲渡による完全子会社化は、子会社の法人格がそのまま存続するものであり権利義務の承継が伴わない点で、権利義務の承継に係る複雑な問題を回避することができます。

その為、企業買収として株式譲渡による完全子会社化が多く用いられています。

 

 

(2)株式交換を付属させた意味

今回の買収においても、AMBITIONはヴェリタスの全株式を株式譲渡の方法で取得し、ヴェリタスを完全子会社化することもできたと考えられます。それでは、なぜ、AMBITIONはヴェリタスの発行済み株式の98.5%だけを株式譲渡によって取得し、残りの1・5%を株式交換によって取得したのでしょうか。

これには二つの意味があるようです。

まず一つは、AMBITIONが保有する自己株式を処理したかったという理由があるようです。自己株式の取得は、資本維持、株主平等、会社支配の公正、証券市場の公正の観点から一定の規制がなされており、また、保有する自己株式には、議決権その他の共益権を行使することはできず(会社法308条2項)、剰余金の配当請求権はありません(会社法453条)。

現行の会社法上は、適法に取得した自己株式を相当な時期に処分すべき義務はありませんが、上記のとおり議決権も配当請求権もなく、また、会計上も資産の部に計上されないことから、AMBITIONとしては、保有している自己株式を何らかの方法で処理する機会をうかがっていたと考えられます。

もう一つの理由としては、ヴェリタスの代表取締役である川田秀樹氏がAMBITIONの株式を保有することにより、川田氏がグループとしての経営意識を持つ効果を期待していると考えられます。ヴェリタスの完全子会社化後においても、代表取締役である川田氏はそのまま代表取締役にとどまり、ヴェリタスを経営していくことがAMBITIONにより公表されていますが、川田氏に対し株式譲渡代金全額を金銭で支払うのではなく、AMBITIONの株式を保有し資本関係を持つことで、ヴェリタス及びAMBITIONグループに対する経営意欲を維持しさらに発展させていく動機づけになると考えられます。

このような二つの観点から、全株式の株式譲渡ではなく、一部について株式交換の手法を選択したのだと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4 まとめ

企業買収の方法には様々な方法がありますが、企業の規模や経営内容、買収後のビジョン等によりその方法を選択し、あるいはいくつかの方法を組み合わせて、適宜適切な買収方法を考えることが重要であると言えます。

今回の買収においても、単なる株式譲渡による完全親子会社の関係を創設するのではなく、一部において株式交換という制度を利用して、関係者間の調整を図り、本件に適した買収方法を選択したのだと考えます。

 

以上

その他専門家コラム

  • 「M&Aのスキーム(株式交換スキーム・株式譲渡スキーム)」

    中野友貴

    弁護士

    クレア法律事務所所属弁護士。 2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。 著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。

  • 「M&Aのスキーム(株式交換スキーム・株式譲渡スキーム)」

    中野友貴

    弁護士

    クレア法律事務所所属弁護士。 2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。 著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。