» 日本版クラウドファンディングの新しい形と規制緩和の必要性

テーマ注目されるクラウドファンディングの課題と展望

国内においても「Readyfor」「Campfire」「Makuake」など、種々のクラウドファンディングサービスが徐々に実績と共に立ち上がり、その活用方法が注目されています。

過去にはなかった新しい仕組み故に多くの課題が残されている一方で、将来に向けての展望も見えてきました。

その課題と展望を分析しました。

「日本版クラウドファンディングの新しい形と規制緩和の必要性」

2017年11月22日
小坂俊介

弁護士
東京総合法律事務所代表パートナー。同所母体である西川茂法律事務所に2004年10月入所、2009年よりパートナー。主な業務は顧問業務。付随する個別案件として、相続・事業承継、M&AのDDや契約交渉、企業倒産等を扱う。現場主義をモットーとし、クロスボーダー案件では、東南アジア内陸部等のサイトビジットを活発に行う。

■クラウドファンディングを用いた新しいファンの応援の形

今スポーツ界や芸能界から注目を浴びている「クラウドファンディング」。ここ最近では、サッカー日本代表の中心的な存在として活躍し、現在はメキシコのCFパチューカに所属する現役プロサッカー選手の本田圭佑氏や、歌舞伎役者として舞台に立ち、日本の美しさを後世につなぐための取り組みをしてきた市川海老蔵氏などが、続けてクラウドファンディングに出資したとのニュースがあった。出資先は、いずれも日本最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を運営する株式会社マクアケ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:中山亮太郎氏)である。

マクアケは、クラウドファンディングサービスの先駆け的存在であるが、本来、クラウドファンディングは、お金はないけどアイデアを持った人と、資金を持った人をつなげるサービスであり、いわゆるFINTECH(ITを利用した新しい金融サービス全般)の中でも、ビットコインと並び、とりわけ注目されている業態である。

規制緩和が進む海外では、クラウドファンディングによって、投資家が直接企業に小口の投資(株式ないし債権投資)を行う本格的な直接金融の仲介サービスが行われているが、日本では、様々な法的規制があって、今の規制下では、サービスに一定の限界がある。そのような規制下にあっても、マクアケのように、スポーツや芸能に対するファンの応援の新たなプラットフォームを提供するという企業努力は称賛に値すると言える。

芸能やスポーツは、ファンからのサービス(観戦・観劇)や関連グッズの購入によって支えられているが、マクアケのプラットフォーム上では、プロジェクト側から様々な情報発信がなされ、それに関連してサービスやグッズの購入を行うことで、いわばプロジェクト側と共同体的な応援関係を味わうことができるという。

こうしたファンのための新しい応援の形を提供するクラウドファンディングサービスは、今度も益々発展していくことが期待される。

 

■マクアケ等の日本版クラウドファンディングの法的な実体と問題点

クラウドファンディングは、事業や何らかの活動を行おうとするプロジェクト側とこれに対して投資する側とをインターネット上のプラットフォームで仲介するサービスと定義できる。

このような投資の仲介は、もちろん従来から証券会社が担っているものであるが、その仲介業務一切を完全にインターネット上で行うことで、情報提供と資金提供のシステム化が図られ、証券会社が扱うことのない程度の小口(数千円など)の投資を大量に処理することができるサービスとして注目されており、その業態としては、

  • ・寄付型
  • ・購入型(サービスや物品など)
  • ・投資型(株式や債券・債権)

に分けられる。

このうち、寄付型と購入型は、寄付したり、購入したり、というだけであるから、特に固有の規制などは存在しない。マクアケについても、購入型の形態を採用しており、法的な分類としては、ヤフオクや楽天、アマゾンなどのEC事業(ネット型小売業)と同じもの、つまり、中味としては、実はプロジェクト側と投資家との売買の仲介をしているに過ぎないと言える。

アマゾン・楽天との差別化としては、プロジェクト側との情報交流が特徴的という点であろうか。そのため、例えば、商品が届かないといったトラブルが発生した場合でも、売主であるプロジェクト側との直接の法律問題になり、サービス事業者側はノータッチになる。最近、そうしたトラブルがネット上の評価として見受けられる。アマゾンや楽天では、購入者とのトラブルについては、詳細なルールを設けているが、同じようにEC事業者としてのマクアケについても、そのようなトラブル防止の施策が必要であり、今後の課題であろう。

■本来のクラウドファンディングである投資型に対する規制緩和の必要性

上述のとおり、クラウドファンディングには、寄付・購入型と投資型とがあり、本来、経済貢献として注目されているのが、投資型といわれる形態である。しかし、その投資型クラウドファンディングを行う場合、日本では厳しい金融規制を受けることになる。

具体的には、プロジェクト側に支払う金員に対して、投資家が株式又は債権の交付(ファンド型を含む)を受ける場合には(これが本来のクラウドファンディングというべき形態)、クラウドファンディングサービス事業者は、金融商品取引法上の規制を受ける。金融商品取引法上の免許は2種類あり、第1種金融商品取引業が主に証券会社、第2種金融商品取引業がファンドを規制するものであり、投資型クラウドファンディングでは、業態により、いずれかの金融取引業者としての免許が必要になる。ただし、その取得は、証券会社等の既存の金融機関が取得している免許だけに、極めてハードルが高い。(これに対する規制緩和の特例として、「小額電子募集取扱業」というものが最近制度化されたが、まだまだ実用的ではない。)

そのため、日本においてクラウドファンディングを展開する場合には、投資型に関して、更なる規制緩和が必要であるが、そのような現状下においても、マクアケは、法的規制のない購入型のクラウドファンディングサービスという枠内でありながら、芸能やスポーツのファンを積極的に取り込もうとしており、新たな付加価値を生み出そうとしている。

とはいえ、本来のクラウドファンディングの在り方としては、投資型が最も経済に貢献し得る業態であることは疑いがない。マクアケのような購入型のクラウドファンディングの発展によって、クラウドファンディングという用語自体が、一般に社会浸透するのは時間の問題であるから、経済需要の障害とならないよう、投資型の規制緩和が早急に進められるべきであろう。

なお、株式や債権以外にも、ビットコインを支払う場合も想定されるが、この場合は、コインの内容にもよるが、資金決済法上の規制を受けることになる(資金決済法における仮想通貨交換業登録)。

 

以上

その他専門家コラム

  • 「クラウドファンディングが日本の投資形態を変えるー草の根ファンドレイジング」

    鼎博之

    弁護士

    弁護士 鼎 博之(かなえ・ひろゆき)第二東京弁護士会及びニューヨーク州弁護士会所属。早稲田大学法学部、イリノイ大学アーバナ・シャンぺーン校ロースクール修了。所属するアンダーソン・毛利・友常法律事務所において、M&A、海外進出支援業務、雇用問題・労働法に関するコンサルティングに注力している。著書・論文に「M&A実務の基礎」(商事法務 2015年)(共著)、「企業経営を育てるコーポレートガバナンス 監査役の機能強化」(THE LAWYERS 2015年)などがある。

  • 「Makuakeにみるクラウドファンディングの法的問題」

    松本甚之助

    弁護士

    2006年弁護士登録、2012年アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士登録。クロスボーダーM&Aを含むM&A案件と国際取引、国際紛争、国際倒産処理手続等の渉外案件を中心に取り扱う。現在三宅坂総合法律事務所のパートナーとして、国内案件のみならずASEAN諸国や中国・インドなどにおけるクロスボーダーM&A等提携取引の事例と相談を多く手がけている。