» Makuakeにみるクラウドファンディングの法的問題

テーマ注目されるクラウドファンディングの課題と展望

国内においても「Readyfor」「Campfire」「Makuake」など、種々のクラウドファンディングサービスが徐々に実績と共に立ち上がり、その活用方法が注目されています。

過去にはなかった新しい仕組み故に多くの課題が残されている一方で、将来に向けての展望も見えてきました。

その課題と展望を分析しました。

「Makuakeにみるクラウドファンディングの法的問題」

2017年11月24日
松本甚之助

弁護士
2006年弁護士登録、2012年アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士登録。クロスボーダーM&Aを含むM&A案件と国際取引、国際紛争、国際倒産処理手続等の渉外案件を中心に取り扱う。現在三宅坂総合法律事務所のパートナーとして、国内案件のみならずASEAN諸国や中国・インドなどにおけるクロスボーダーM&A等提携取引の事例と相談を多く手がけている。

1.はじめに

クラウドファンディングサイト運営会社のMakuakeは、先日サッカー日本代表の本田圭佑氏が手がける個人ファンドや歌舞伎役者の市川海老蔵氏からの出資の受入れを公表した。クラウドファンディングの広がりを実感できるニュースであるが、クラウドファンディングとはどのようなもので、どのような法的問題があるのかをMakuakeを例にとって解説してみたい。

 

2.クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、crowd(群衆)と funding(資金調達)の造語であり、一般的には、資金需要のあるものがインターネットなどを通して不特定多数のものから資金を調達する手法をいうとされている。

3.クラウドファンディングのタイプ

クラウドファンディングのタイプについては、いろいろな分け方があるが、資金提供者が資金調達者から受け取るリターンを基準に以下のように分けることができる。

①出資型 資金調達者の事業からの収益の分配を受ける
②購入型 資金調達者の商品・サービスの提供を受ける
③寄付型 資金調達者からは何も受け取らない(ただし、返礼品などがあるのが一般的である)

4.クラウドファンディングの関係者

(1)資金需要者・資金調達者

一定のプロジェクトなどを企画しているが、それに必要な資金を有していない資金需要者である。Makuakeの利用規約では、「プロジェクト実行者」とされている。

(2)資金提供者

資金需要者のプロジェクトに共感をし、資金需要者に対して資金を提供する資金提供者である。Makuakeの利用規約では、「サポーター」とされている。

(3)仲介者

仲介者としては、以下の3つのパターンがある。

①プラットフォーマー プラットフォーマーは、資金調達者が必要とする資金調達の場(プラットフォーム)を提供するのみであり、資金調達者と資金提供者との取引は、それぞれ自己責任で実施される。
②媒介者 媒介者は、資金調達者と資金提供者の取引を媒介する。
③引受者 引受者が、資金調達者と資金提供者とそれぞれ取引をし、資金提供者から調達した資金を資金調達者に支払う一方、資金調達者から提供された対価を資金提供者に還元する。

媒介者や引受者は、同時にプラットフォーム提供をするケースも多いと思われるが、それぞれのパターンの区分けは、実際の約款などを検討の上、判断する必要がある。

 

5.日本におけるクラウドファンディングの法的規制

日本においては、出資型のクラウドファンディングを実施する場合には、金融商品取引法に基づき第二種金融商品取引業者の登録が必要になるため、その数は少ない。

一方、購入型や寄付型は金融商品取引法の適用が基本的にはないことから、日本においては特に購入型のクラウドファンディングが主流を占めている。Makuakeのようなプラットフォームを利用する場合のクラウドファンディングは、購入型のケースがほとんどである。そこで、購入型のクラウドファンディングの法律上の問題について以下概説したい。

(1) 資金需要者・資金調達者

  • 特商法の規制

資金調達者は、インターネットを通じて、商品やサービスを販売することになるため、特定商品取引に関する法律(「特商法」)に定める「通信販売」に該当するので、特商法の規制を受ける。

通信販売それ自体を行うにあたっては、特に許認可などは必要とされていないが、販売条件・サービスの提供条件について広告をする場合に一定事項の表示の義務付け、誇大広告等の禁止などの規制が適用される。

  • 売主としての責任

資金調達者はスキーム次第であるが、一般的には売主となり、資金提供者が買主となるケースが多い。したがって、資金調達者は売主として商品についての瑕疵担保責任を負う事となるが、資金提供者は一般の消費者となることも多く、消費者契約法の適用を受け、瑕疵担保責任の全部免除ができないこととなる。

  • 税務上の問題

購入型であっても、調達した資金と提供する商品の対価関係が不相当とみなされた場合には、寄付型と同視され、資金調達者が法人の場合には提供を受けた資金について法人税の対象、個人の場合には所得税又は贈与税の対象となる可能性があるといった税務上の問題が発生するので、対価関係についても十分な注意が必要である。

(2) 資金提供者

資金提供者に関しては、特段の法的規制はないが、以下のようなリスクがある点には注意が必要である。

  • 商品・サービスの瑕疵

購入型の場合には、売買と同様であることから、商品に瑕疵があるケースがある。

  • 商品・サービスの提供を受けられないリスク

クラウドファンディングを利用する資金調達者は、銀行などからの借入れができなかったり、ビジネスの初心者であったりして、資金を集めたが、商品を発送しないまま行方不明になったり、倒産したりといったことで、商品・サービスが提供されないリスクがある。

Makuakeのようなプラットフォーマーは、その利用に一定の条件を要求しており、このようなリスクが発生する可能性を低くするようにはしているが、完全にそのリスクは排除できないことには注意が必要である。

(3) 仲介者

Makuakeのようなプラットフォーマーにおいては以下のような点が問題となる。

  • 資金移動業の登録

プラットフォーマーが資金提供者からの資金をいったん受け取り、それを資金調達者に支払うが、資金提供者からの指示に従って、資金調達者に資金を移動しているとなると資金移動業に該当し、資金移動業の登録が必要になり、金融庁の監視下に置かれることとなる。

プラットフォーマーとしては、そのような事態を避けるため、プラットフォーマーが、売主に代わって代金を受け取り、資金提供者がプラットフォーマーに支払いをした段階で、支払いが完了したこととして、資金移動業に該当しないようスキームを構築する事が多い。この場合、プラットフォーマーが資金提供者から代金を受け取った時点で、資金提供者と資金調達者間の代金の支払が完了することを利用規約に明示することが重要である。

Makuakeの利用規約でも、以下のようになっており、プラットフォーマーが資金提供者から代金を受け取った時点で、代金の支払が完了したことが明示されている。

第10条(サポーターのお支払いとプロジェクト実行者による代金の受領)

1.当社は、プロジェクト実行者とサポーターとの間の売買契約に基づくプロジェクト支援の対価について、プロジェクト実行者を代行してサポーターからの支払を受領します。サポーターは、当社への支払を完了することにより、プロジェクト実行者に対する代金債務の弁済を完了したことになります。

 

  • 資金調達者と同様の責任を負うリスク

プラットフォーマーは、売主である資金調達者とは本来同一の責任を負うものではないが、あたかも売主であるかのような外観がある場合には、売主とみなされ、売主と同様の責任を負う可能性がある。

そこで、そういったリスクを避けるために、利用規約の中に、プラットフォーマーの役割と免責条項を定める事が重要である。

Makuakeの利用規約においても以下のように、あくまでプラットフォームを提供しているに過ぎず、資金調達者と資金提供者間の関係には関与しないこと、Makuakeの免責について規定がされている。

第2条(本サービスと当社の役割)

1.本サービスは、クラウドファンディングサイトであり、会員間での交流やプロジェクト支援の場や機会を提供するサービスです。

2.会員間のプロジェクトの支援に関する売買契約(成立・取り消し・解約・解除等の一切)は、すべて当事者会員間(または関連する第三者を含むがこれに限られません。以下、「会員間等」といいます) の自己責任によるものとし、 当社は取り消し、中途解約、解除、変更、返金、保証など当事者間等における契約の履行には一切関与いたしません。

3.会員間等においてトラブル等が発生した場合についても、当社が別途定めるケースを除き、当社が仲裁し、解決にあたることはございませんので、取引に際しては十分に注意し、予めご了承の上ご利用ください

第18条(免責)

7.当社は、本サービスを通じて行われた第三者と会員との取引について、一切の責任を負わないものとし、全ての取引は当該第三者と会員の責任においてなされるものとします。

9.当社は、当社が提供するサービスに於いて、会員及び第三者間で生じたトラブル(違法または公序良俗に反する行為の提案、名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、脅迫、誹謗中傷、いやがらせ等)に関して、一切の責任を負わないものとします。

その他専門家コラム

  • 「日本版クラウドファンディングの新しい形と規制緩和の必要性」

    小坂俊介

    弁護士

    東京総合法律事務所代表パートナー。同所母体である西川茂法律事務所に2004年10月入所、2009年よりパートナー。主な業務は顧問業務。付随する個別案件として、相続・事業承継、M&AのDDや契約交渉、企業倒産等を扱う。現場主義をモットーとし、クロスボーダー案件では、東南アジア内陸部等のサイトビジットを活発に行う。

  • 「クラウドファンディングが日本の投資形態を変えるー草の根ファンドレイジング」

    鼎博之

    弁護士

    弁護士 鼎 博之(かなえ・ひろゆき)第二東京弁護士会及びニューヨーク州弁護士会所属。早稲田大学法学部、イリノイ大学アーバナ・シャンぺーン校ロースクール修了。所属するアンダーソン・毛利・友常法律事務所において、M&A、海外進出支援業務、雇用問題・労働法に関するコンサルティングに注力している。著書・論文に「M&A実務の基礎」(商事法務 2015年)(共著)、「企業経営を育てるコーポレートガバナンス 監査役の機能強化」(THE LAWYERS 2015年)などがある。