M&Aによる事業再生で生産性の高い投資を実現

会社の事業や技術に先進性や優位性、特別感などがあっても、何らかの事情で業績が悪化することがあります。
会社内部に大きな問題がなくても、外的要因などで悪化するケースもあるでしょう。
そんな場合、その会社の技術やノウハウなどを取り込むことができれば、自社の成長を加速させることができます。

都市部に数十店の店舗を持つ、ある大手スーパーの例で説明しましょう。
このスーパーでは菓子類の一部をオリジナルブランドで販売しており、その菓子製造はある食品加工会社に委託していました。
その食品加工会社は比較的小規模ではありましたが、独創的で味も良く、スーパーの顧客からも好評でした。
ですが、小規模ゆえに取引先を拡大することもできず、このスーパー以外に菓子メーカーの下請けとしての事業で手一杯の状態でした。
ところがその菓子メーカーが、今まで発注していた菓子を全て内製に切り替えたことで、一気に苦境に立ってしまいます。

大手スーパーでは、オリジナルブランドの菓子の売れ行きが好調なため、今まで以上にオリジナルブランド商品ラインナップを広げようとしていた矢先でしたので、この食品加工会社を買収することにしました。
厳しい立場だった食品加工会社は、通常のM&Aでは考えられないほどの価格で買収できました。
しかも苦境を救ったために、社長はじめ従業員から感謝されます。
これにより、スーパーのオリジナルブランド菓子を今までより安く製造することができただけでなく、新製品への取り組みもスムーズにできるようになったため、菓子部門の売上げは以前より大幅にアップしたそうです。

これは比較的小さな会社を買収した例ですが、業績が悪化した企業を買収し、業績悪化の問題点を解決すれば、収益も上げられるようになるはずです。
事例のようにシナジー効果を得られるケースもあるでしょう。
買収に必要な費用も投資として考えれば、生産的な投資であると言えます。
また、業績が悪化した企業は安く買収できるケースが多いため、効率的です。

業績の悪化した企業を、M&Aを活用して自社で再生することは、投資効率の点からも効果的な方法です。

M&Aによりシェアの拡大を実現

企業が成長していくためには、現在の事業分野の中でシェアを拡大させていくか、新たな事業に取り組む、もしくは市場を開拓して更なる売上げを獲得するしかありません。
シェア拡大は市場の支配力を高め、価格面でも支配力を持ち、売上げや利益を向上させる効果があるため、どの企業もシェア拡大に向けた努力を怠っていません。

しかしながらシェア拡大は、非常にハードルの高い課題です。
画期的な新製品やサービスなどを開発・発売しなくてはシェア拡大につながりにくいだけでなく、この作業は競合他社も積極的に取り組み、しのぎを削っているからです。
また日本国内の市場は、今後成熟化し、その後に縮小化していくことが予測されています。
成熟化した市場では、特定の企業が新製品や新サービスの開発などの方法でシェアを拡大させることは困難とも言われています。
では、成熟化した市場でシェアを拡大する方法があるのでしょうか。
それはM&Aによる同業他社の買収です。

教育業界の例で説明しましょう。
少子化が進む今日では、子供の数そのものは減少傾向にあります。
しかし、子供一人にかける教育費は増えているため、塾に通う子供は増加していますが、将来的に少子化の影響は避けられません。
そのため、教育業界では生き残りのための業界再編が進んでいます。

平成25年から26年のデータでは、売上高シェアのトップはベネッセホールディングスで、シェアは50.5%です。
ベネッセホールディングスはお茶の水ハイスクールを買収し、さらに東京個別指導学院を連結子会社にしています。
またシェア上位に急浮上した企業が幾つかあり、学研ホールディングスのシェアは9.4%、前年売上比では7.7%プラスになっています。
学研ホールディングスは桐杏学園、東北ベストスタディ、タートルスタディスタッフなどを買収しています。

これらの企業は、成熟した市場だからこそ、M&Aを活用してシェアを拡大し続けているのです。
そして、これらの企業はM&Aを活用していない企業に比べ、はるかに成長スピードが速いと言えます。
M&Aの効果をご理解いただけると思います。

M&Aで事業発展に必要な優秀な人材を獲得

企業にとって人材は不可欠で、人材無しに企業の成長はあり得ません。
更に、能力があり展開事業分野でのノウハウなどを持っている人材は貴重で、企業の成長速度に大きく影響するのもこのような人材です。

仮に優れた人材であっても、ノウハウはそれまでの業種や職種、職域、経験などによるため、畑違いの人材に新たなノウハウやスキルを持ってもらうのには相当な時間がかかってしまいます。
これでは会社が新規事業を立ち上げたとしても、採算ベースに乗せるまでに時間がかかり、成長速度を速めることはできません。
ではどうすれば解決できるのでしょうか。
例えば近年特に増えている介護事業を見てみると、その答えが分かってきます。

長谷工コーポレーションが生活科学ホールディングスを子会社にして、高齢者向け事業を拡大しています。
また、リゾートトラストによるメッセージ所有の有料老人ホーム継承や、牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスによる住宅型有料老人ホーム運営会社の子会社化など、異業種からの介護事業への進出が見られます。
これら以外にも多くの異業種企業が介護事業に参入していますが、いずれもM&Aによる買収などを活用しています。

介護事業参入は、高齢化によるビジネスチャンスと判断した結果だと考えられますが、何故どの企業も一から介護事業を興さないのでしょうか。
これは、自社で介護事業を立ち上げるには多くの費用や人材などの経営資源を投下しても時間がかかりますが、M&Aで既に介護事業に取り組んでいる企業を買収すれば、ノウハウや人材、ブランド、顧客を含めて入手できるからです。

また介護事業者の買収が急速に増えているのは、ビジネスチャンスということだけでなく、既に介護事業に取り組んでいる企業の取り合い状態になっていることもあるでしょう。
すなわちどの企業も、M&Aならノウハウや人材、ブランド、顧客も含めて入手できるメリットを理解しているのです。

このようにM&Aは、企業が成長を考えて新たな事業に取り組むとき、必須となるその分野でのノウハウやスキルなどを持った人材も含めて取得することができるのです。
そしてそれは、成長を加速することにもつながっていることも理解しておいてください。

M&Aによる事業規模拡大で利益率向上を実現

企業が自身の成長のために事業規模を大きくする、例えば店舗数などを増やしていく場合には、総売上げやブランド力、認知度などのアップを狙って行ないますが、それ以外にも大きなメリットがあります。
それが利益率の改善です。

事業規模そのものが大きくなれば、何かを購買するにしても数量が大きくなります。
すると値引き額も大きくなるため、原価を抑えることができます。
これによって利益率は改善されることになります。

例えばレストランチェーンなどの場合であれば、一店舗だけの食材の購買では量もそれほど大量ではありません。
しかしそれが100店舗もしくは200店舗と増えていくと、比較にならないほど大量の食材を購買することになるため、単価は安くなっていきます。
これは食材だけを考えた場合ですが、その他の物、例えば食器なども大量購買すれば単価は安くなります。
これによって利益率を改善させることができます。

ですが、この効果のためには事業規模を素早く拡大させなくてはなりません。
拡大に時間がかかると、その間の利益率改善は見込めないからです。
また独力だけでひとつづつ事業規模を広げていくのは効率的でなく、時間も経営資源も必要になります。
M&Aを活用して一気に事業規模を拡大すれば、利益率の改善も速やかに行なうことができます。

ある飲食チェーン店は、もともとは20店舗だけでしたが、M&Aを活用して35店舗に拡大することにより、利益率は大幅に改善されました。
もちろん利益率だけでなく、店舗数が増えたことにで周辺への認知度も上がり、ブランド力も強化されました。
すると従業員の意識は自然に高まり、サービスが徹底されるようにもなりました。
もちろん集客力も以前より上がり、一店舗あたりの売上げ額もアップしています。
この結果を受け、飲食チェーン店は更なる拡大のために、次のM&Aに向けて動き出しているそうです。
すなわち、事業拡大のためのM&Aが企業の成長を加速させたケースです。

事業規模を大きくして利益率を改善すること、そして更にこれによって会社を成長させたいとお考えであれば、M&Aは考慮しておくべき有効な手法ではないでしょうか。

業界再編の波をM&Aで乗り切る

国の政策や外的要因などによって業界そのものが再編に向けて動き出すことは、日本でも過去に何度もありました。
製薬業界、学習塾、薬局など多くの例があるので、ご存知でしょう。
業界再編は、その業界で事業を展開する企業の生き残りをかけた戦いでもありますが、それは一方で勝ち組になる機会として活用できるのです。

ある全国規模の調剤薬局チェーン店の例で説明します。
調剤薬局は高齢化による医療費削減政策によって、生き残りをかけた業界再編の真っ只中にいますが、このチェーン店も少しでも市場の占有率を高めることを目指していました。
しかしながら地方都市になると保守的な傾向も強く、いくら大手チェーン店であっても新規参入は難しい状態で、昔からの小規模薬局チェーンが独占していました。
そのため、他企業も参入が困難な場所です。

そんな時、地元の小規模薬局チェーンが売却を考えていることが分かりました。
いくら地元では独占状態であっても、店舗数拡大ができなければ、売上げも減少していくしかありません。
すなわち地域密着に依存し過ぎたために、業界再編の波に乗れなかったのです。

調剤薬局チェーン店はこの店舗を従業員ともども買収しました。
調剤薬局の運営には薬剤師の確保が必須のため、従業員の雇用も継続させました。
保守的な地域に参入できると、後はブランド力を生かしていくことができます。
現在では店舗数も小規模薬局チェーン当時の倍になっており、売上げも拡大しています。

この例でも分かるように、業界再編の波に乗ることができれば、一気に勝ち組になることができます。
その一方で、波に乗れず、何らかの特徴がなければ厳しい状況に立たされてしまうことが予想されます。

業界再編は今まで入り込めなかった分野や領域、地域などに事業を拡大させるための契機でもあります。
そのためにM&Aを活用すれば、業界再編の波に乗って勝ち組となり、更には会社そのものを早く成長させることができるのです。

川上、川下展開を加速、成功へ導くM&A

企業が自社の事業の川上・川下産業に進出したいと考えるのは、企業そのものが拡大していく過程においては当然のことかもしれません。
本来事業で関わっている商品や素材、サービスなどの良いところや悪いところ、ニーズも理解しています。
そのため、もっと品質の良いものや、安いもの、ニーズにあったものを提供できるはずだと考えるからです。

しかしながら仮にこれらが把握できていたとしても、実際にそれを事業として展開するには色々なノウハウや情報、人材、顧客などが必要になります。
また、事業を立ち上げたとしても、採算が取れるようになるまでには長い時間を要します。
ではもっと短時間で川上・川下産業に拡大していくことができる方法はないのでしょうか。

ある中華料理チェーン店の例で説明しましょう。
このチェーン店は、ある都市部でチェーン展開しており、その地域での知名度も高く、業績も伸びていました。
名物はラーメンで、ほとんどの来店客はこの店のラーメン目当てに来ています。
このラーメンの麺は外部の製麺会社に発注していましたが、その出来具合や価格には正直なところ満足しておらず、改良すべきだと思う点が数か所ありました。
そんな時、その製麺会社の経営者が高齢になり事業承継を望んでいたため、買収を決意し、社員も含めて引き継ぐことにしました。

現在では、中華料理チェーン店の要望を反映させた麺を作っており、店での評判も今まで以上に上がりました。
また、店舗エリアから離れたラーメン店からも麺の発注を受けるなど、製麺事業は大きく顧客を増やしたそうです。

このように、消費者と直接接する事業者は、客の反応を常に知ることができる立場です。
すなわちニーズや必要な改良点を知っており、川上産業に事業拡大していくことでシナジー効果にもつなぐことができるのです。
これは川下産業に拡大していく場合でも同様です。
より消費者に近い立場に立つことができるので、ニーズや必要な改良点を素早く、正確に把握でき、ヒット商品を生み出せる可能性が高くなります。

ですが、何もない状態から事業を立ち上げるのでは、あまりにもノウハウや情報、人材などがないため、事業を軌道に乗せ、ニーズに応え、さらに必要な改良を施せるようになるまでには相当な時間がかかります。
そんな場合にはM&Aを活用すべきである理由がお分かりいただけると思います。

他地域への進出をM&Aで効率的に実現

事業の対象エリアが決まっている場合、企業が成長するために最初に着手しやすいのは、新たなエリアでの事業展開でしょう。
しかしながら、今までと同じ業態で新たな地域に展開させることは、それほど容易ではありません。
例え創業してから長期間経っていて、商圏エリアでは知名度が高くても、全く新たな地域になると同様の知名度は期待できません。
ブランド力も通用しにくくなります。
それ故、開業してからすぐに地元地域と同じだけの売上げも難しくなるでしょう。
つまり、今までとは違う新たなエリアで事業を展開しても、すぐに売上げが期待しづらいということになります。
今までとは違う新しいエリアで事業を少しでも早く成長させる方法はないのでしょうか。

ある都市部の冠婚葬祭企業の例で説明します。
この会社では結婚式場と葬儀場の両方を運営しています。
結婚式場は利用者の自宅から少し離れていても、式場のイメージや規模、演出プラン、費用などで誘因することが可能ですが、葬儀場の場合は自宅から比較的近い場所が選択されることがほとんどです。
また少子化の影響もあって、結婚式場のマーケットサイズは縮小しつつありますが、葬儀場は高齢化のために葬儀件数が拡大しています。
これらのことから、今までとは違う新たなエリアに葬儀場を展開していく方針を立てました。
しかし、新たなエリアには古くからの葬儀場もあり、新規参入して利益を上げられるようになるまでには時間が相当掛かります。

そこで地元の葬祭企業を買収することにしました。
地元での知名度を活用し、施設をリニューアルしたことで、今まで以上の顧客獲得ができています。
また、この葬祭事業を足掛かりに、今後は結婚式場を展開していくことを考えているそうです。

このように、商圏エリアが定まっている場合、新たなエリアで事業を展開するには、今までの知名度やブランド力がそれほど期待できないため、対象エリアでM&Aを実施することが非常に効果的で、早い段階で収益を上げることができます。

新エリアでの事業を少しでも早く軌道に乗せ、会社の成長につないでいくために、M&Aは有効な方法です。

売上、利益の積み上げによる成長加速をM&Aで実現

どのような業種であっても、自社で独自に新規事業を立ち上げた際には、その業態に対するノウハウや情報、人材などが不足しているため、立ち上げまでに時間がかかってしまいます。
また立ち上げてからも、顧客を獲得し、拡大させていくには時間がかかり、利益を確保できるには相当な時間がかかるのが常です。
この時間をもっと短縮できれば、早く利益を確保することができるようになるはずですが、そのような方法があるのでしょうか。

あるIT関連企業の例で説明します。
このIT関連企業は、業界の広がりとともに業務領域を拡大させており、IT業界の中でも中堅に位置しています。
IT業界ではプロジェクトに応じて派遣社員を起用することが多く、この会社でも派遣会社に人材派遣を依頼していましたが、派遣された人材のスキル不足や依頼した人数が揃えられないこともあり、常にプロジェクトの人員不足に悩まされていました。
会社そのものも好調で、新たな事業を模索していたその会社は、これほど人材が不足しているのなら、自社で派遣会社を作れば新たな事業の柱になるのではないかと考えました。
もちろんIT業界だけに限定するのではなく、広く他業種へも人材供給をしたいと考えましたが、人材派遣業を営むには認可が必要です。
人材派遣業の認可を取ることは非常に大変で、費用も時間もかかります。

そこである人材派遣会社をM&Aで買収することにしました。
もちろん認可も取ってある派遣会社で、IT業界へ派遣実績と、知名度もそなえていました。
従業員の雇用も継続したので、派遣に対する十分なノウハウもあります。
自社の社員による研修を実施することでスキルアップも可能になりました。
その結果、この人材派遣事業はIT業界の中でのポジションを確立し、M&A前よりも業績は好調で、IT事業の人材確保にもつながっているなど、シナジー効果もあり、会社の成長に大きく貢献しています。

この例のように、M&Aによる買収は事業を早い段階から軌道に乗せることができます。
またシナジー効果も早い段階から得ることができます。
つまり、買収した企業の以前の売上げや利益を積み上げて読むことができるわけです。

自社単独で一から事業を興した場合、売上げや利益をすぐに積み上げることは難しいでしょう。
M&Aを活用には、これらの効果もあることを理解しておいてください。

事業構築の手間をM&Aで削減

企業が存続していくためには成長していかなくてはなりません。
成長なくして存続はあり得ないからです。
そして、その成長の速度が速いか遅いかはその戦略に左右されています。

早い成長を考える場合、既存の事業を拡大させることも重要ですが、新たな事業を立ち上げること、そしていかに早く軌道に乗せるかも重要な戦略と言えます。

新規事業を興すには、その業界の動向や情報、トレンド、競合商品ラインナップなどの環境を把握する必要があり、これら以外にもノウハウや人材、顧客、販売ルートなどを準備する必要があります。
また準備している段階に於いても、詳しい状況を把握できるまでには何度も失敗を犯し、順調に進まない危険もあります。
では、これらの失敗の危険性を回避しながら、少しでも早く新規事業を軌道に乗せる方法はあるのでしょうか。

あるマーケティング会社の例で説明します。
この会社は元々、広告業のマーケティング会社でしたが、時流の流れに乗ってWeb領域のマーケティングにまで事業を拡大してきました。
両方の事業で消費動向や地域性、今後注目される流行予想など、一般消費者に対するマーケティング的要素も把握していたため、もっと一般の人々と直接接することができる事業に活かしたいと考えていました。

そして選んだのが飲食業でした。
今まで蓄積してきたデータをもとに、自分たちなりに、多くの人が喜んでくれる飲食店をやろうと、ある居酒屋を買収しました。
もちろん、データによる分析や今後の方向性は考えられても、実際の居酒屋の運営は素人ですので、店長や従業員の雇用はそのまま継続し、店舗のコンセプトなどは自分達で考えました。
現在ではその地域の居酒屋の中でもくつろげ、落ち着く居酒屋として人気になり、マーケティング会社の事業の柱にもなっているそうです。

もしマーケティング会社が自分達で居酒屋を一から作っていたとしたら、このようなスピードで売上げを確保することができたでしょうか。
店舗や従業員、今までの顧客、仕入先など、全てをM&Aで手に入れることができたので、立ち上げ途中の困難や失敗もなく、素早く業績を上げることができたのです。
M&Aの効果的な活用法として覚えておいてください。

新規事業を海外で実現するためM&Aを活用

市場を日本国内だけに限定していた場合、国内での需要が頭打ちになったり、今後競争が激化することが予想されるなど、厳しい状態になることがあるかもしれません。
そんな場合に、海外での新規事業に可能性があるなら、どんな経営者でも海外進出を考えるでしょう。

ですが、海外での新規事業展開には様々なハードルがあります。
まず事業そのものに許可が必要な場合が多く、申請しても取得までに相当時間がかかります。
また、現地での流通や販売経路も確保しなくてはならないばかりか、現地の人材が必要になります。
これらをひとつづつ自社で解決していこうとすると、相当な時間と労力、費用、人材などの経営資源を投下しなくてはいけませんが、M&Aを活用することで、これらが効率的に進められるようになります。

ある家電大手メーカーの例で説明します。
この家電大手メーカーは日本では有数の歴史あるメーカーですが、家電品、特に白物家電と呼ばれる製品群が、日本国内市場の縮小で苦戦していました。
そこで、今後大きな伸びが期待でき、市場規模も大きいインドに進出したいと考えますが、現在の日本向けの製品群をそのまま持ち込んでも現地のニーズに適さず、販売が見込めないことから、現地でインド向けの製品を生産することにしました。
ですが、インドで新規事業を運営するには許可が必要であり、流通や販売経路も分かりません。
もちろん、現地で人材を確保する術もありません。

そこでこのメーカーはインドの家電メーカーを買収し、インド現地のニーズにマッチした製品群を開発・製造して、その家電メーカーの流通経路に乗せて販売することにしました。
現在では順調にシェアを伸ばしているようです。
ここまで来るのには、日本とインドとの文化の違い、そして習慣の違いなどもあったようですが、それらを否定することなく、尊重することで融合できたのでしょう。

このように新規事業を海外で展開したい場合、自社で全ての課題を解決していくにはハードルが高すぎます。
現地で必要な認可を取っており、流通ルートや人材も確保されている企業をM&Aで買収すれば、高すぎるハードルも容易に飛び越えることができるのです。

海外での新規事業進出を考える際には、まずM&Aを活用することを念頭に置くべきでしょう。

スタート時点でノウハウを持った人材獲得もできるM&A

企業にとって新規事業を展開することは会社の今後に関わる重要な戦略です。
しかしながら新規事業に分野を広げる際には、その分野の情報やノウハウ、人材などが無ければ事業が軌道に乗るまでに時間と費用が膨大にかかってしまいます。
これでは、どれほどの経営資源を投入すれば良いのか分からず、効率的ではありません。
新規事業に進出する際、最も重要なのは、その事業分野に精通した人材を確保することです。
そんな人材が確保できれば、その分野の情報やノウハウが入手できるはずです。

最近の例で説明しましょう。
損保ジャパン日本興亜ホールディングスが2015年12月に居酒屋大手のワタミの子会社、「ワタミの介護」をM&Aにより買収しました。
損保ジャパン日本興亜ホールディングスは、それまでにも複数の介護事業を展開する企業に出資していましたが、本格的に傘下に収めたのは初めてです。
その後、資本・業務提携していた介護事業大手であるメッセージを買収しています。
ワタミの介護だけでも100棟以上保有していたため、損保ジャパン日本興亜ホールディングスは相当数の介護施設を入手したことになり、介護事業に本腰を入れているのが読み取れます。

とは言っても、損保ジャパン日本興亜ホールディングスの人間が直接事業運営する訳ではなく、事業運営そのものは傘下に収めた企業がすることであり、M&Aによって介護施設や介護技術、サービスプラン、ブランド力、人材、顧客などをまとめて入手できたということになります。
中でも大きなウェイトを占めるのが介護事業について精通している人材でしょう。
数社とのM&Aを重ねているため、多くのノウハウを持った人材が集まっているはずです。
今後、損保ジャパン日本興亜ホールディングスがどのような戦略を打ち立てていくのかは分かりませんが、介護業界の中で大きな存在になってくることは容易に想像できます。

このように、新たな業態の新規事業を展開するにあたり、ノウハウを持った人材を集めるのにM&Aを活用すれば容易に行なえます。

自社単独でノウハウを集めていくことは非効率的であり、現実的ではありません。
新規事業を展開する際には、M&Aの活用で、事業分野のノウハウを持った人材ごと取得することが素早い展開につながっていくことを覚えておいてください。

新規事業、親族への事業配分のため企業買収をM&Aで実現

創業者が興した事業を軌道に乗せ、その後、子供である二代目に事業を譲った時、二代目社長が新しい事業を積極的に展開するケースが多く見られます。
創業者の事業戦略に対する疑問や会社拡大への意欲、興味があるものの違い、そして時代の変化によって今後期待できる事業かどうかという要素などもあるでしょう。
いずれの場合も、二代目社長としての意欲の表れです。
しかしながら、創業者が今までやってこなかった新たな業態の事業を創業するには、相当な経営資源を投下しなくてはなりません。時間も費用も人材もかかります。
これらを実現するために、効率的な方法はないのでしょうか。

地方の創業30年になる建設会社の例を紹介します。
創業者には子供が一人おり、その子供に会社を継いでもらうつもりで学生の頃から仕事を教え、学校卒業後は自社に入社させました。
入社後は社長業の手伝いをしてもらって、創業者が引退後に会社を引継いでもらいました。
社長業を引継いだ二代目は学生時代から車の運転が大好きで、できれば自動車を使った新たな事業を興したいと考えていました。
しかし父親から引き継いだ建設業とは全く違う業態でもあり、経営資源を投下して一から事業を立ち上げるにしても、膨大な時間や費用、人材の手配などのリスクが大きいと断念していました。
そんな時に、ある地元のタクシー会社が経営者の引退により譲渡先を探していることを耳にします。
そこで、このタクシー会社を承継することにしました。
従業員もそのまま引き継いだので、タクシー事業は何の障害も無く続けられます。

現在では、建設会社が順調に業績を伸ばす一方で、タクシー事業でも時流に沿った介護タクシーも始め、地元の人々から重宝がられています。
また今後は運送業にも事業を拡大していくことを考えています。

紹介した例では、創業者の一人息子が新規事業を展開するためにM&Aを活用した例ですが、創業者に子供が何人かいた場合、長男には会社を継がせ、次男や三男のために新規事業としてM&Aを活用して既存企業を買収する方法もあります。

この方法の一番のメリットは、承継した企業のノウハウや情報、取引先、顧客などをそのまま引き継ぐことができることです。
経営資源を膨大に投下して自社で事業を興していく必要がないので、リスクも少ないと言えます。
二代目社長の新規事業や次男、三男のために新たな事業を創業する場合には、是非活用したい方法です。

シナジーが見込める企業買収をM&Aで実現

企業が自社の事業領域を拡大する際、まず最初に考えるのは自社事業と隣接した業種への事業進出でしょう。
比較的なじみがあり、ある程度の情報や知識もあるため、取り組みやすさはありますが、実際に事業展開するとなると、難問が山積みです。
ノウハウはもちろん、人材や情報以外にも、販売ルートが本来の事業と異なる場合にはその確保も必要です。
隣接業種だからこそシナジー効果は十分に期待できるものの、やはり難しさがあることは否めません。

ある大手印刷業会社の例を紹介します。
この印刷会社ではあらゆる印刷物を扱っており、印刷業界では有名な会社です。
ただし、あらゆる印刷物を扱っているといっても、一般的に普通の印刷会社では扱えないものがあります。
特殊なシール印刷などはその一例であり、この印刷会社でも扱っていませんでした。
印刷事業を総合的にカバーできる会社にしたいと考えても、特殊な技術が必要なシール印刷ができないのでは、カバーしているとは言えません。
この分野に進出しようと考えますが、技術やノウハウがなく、とても事業として成立させることは不可能です。

そんな時に、ある特殊なシール印刷を専門にしている会社の経営者が高齢で、事業を承継してくれる企業を探していることを知りました。
小規模な会社だったため、決して知名度は高くありませんでしたが、高い評価と実績を備えている会社です。
そこでこの会社を承継することにしましたが、その際に強く要望したのが、経営者の継続的な協力でした。
この経営者は特殊シール印刷についてのノウハウや高い技術を持っており、大手印刷会社の従業員を指導してほしい旨を伝え、快諾してもらいました。

現在、大手印刷会社は特殊シール印刷の受注も始め、業界内でのポジションも確固たるものになりました。
また特殊シール印刷部門も大手印刷会社のブランド力によって、業績は以前よりはるかにアップしています。
紹介した例は、同じ印刷業同士であっても、一般的には別事業ととらえられていたものですが、同じように隣接業種を事業にしていく場合には、非常に参考になるケースでしょう。

特に隣接業種に進出していく場合、シナジー効果が期待できる企業をM&Aによって取り込むことは、事業展開をスピーディーにするだけでなく、企業そのものを大きく成長させることにつながっていくはずです。

新規事業構築にかかる資源をM&Aにより解決

企業が新たな業態に進出するには、どうしても時間がかかります。
その業態に必要なノウハウと情報を集めることから始まり、人材を集め、販売ルートなどが確保できなければ新業態には到底取り組むことはできません。
これだけのものを準備しておくためには、膨大なコストや時間と言った経営資源が必要になります。
では、どんな場合でもこれらの経営資源を投入しなければ新規事業には取り組めないのでしょうか。

あるIT関連企業の例で説明します。
この会社は本来Webサイトの制作からサーバー構築・管理などのサポートまでを事業として展開していましたが、ECサイトの普及に伴い、ECサイトサポート事業に進出して急成長を遂げました。
この背景には、身近な品や衣料品などはECサイトで購入する人が近年急増していることがありました。
しかしながら現状の形態では競争が激化することが予想され、特に多い衣料品関連のECサイト構築などに際し、競合他社と差別化できる要素が不可欠だと考え、事業戦略を模索していました。
そんな時、衣料品の企画まで含めて提案してもらえないかとの要望があり、今後拡大していくべき事業はこれだと気づきました。
ですが衣料品の企画など手掛けたこともなく、途方に暮れている時に、ある衣料品企画卸会社が譲渡先を探していることを知りました。
これならすぐに新規事業に進出できると考え、面談をし、スムーズに契約締結まで進みました。

これにより、衣料品関連のECサイトを提案する際、単なるサイトに関する提案だけでなく、商品ラインナップまで含めて提案できるようになり、受注数も格段にアップしました。
同時に、買収した衣料品企画卸部門も今までとは違った新たな提案先ができ、業績は向上するなど、シナジー効果が明確に表れています。
衣料品企画卸事業をIT関連企業だけで展開するには膨大な時間とコスト、それに人材、労力などの経営資源を投入しなければ実現できないでしょう。

M&Aならば、これらを短期間で入手することができるだけでなく、今まで実際に事業として成立させていた会社を手に入れるのですから、リスクも格段に少ないはずです。
少しでも早く新規事業に進出したいなら、M&Aを考えるべきではないでしょうか。