ビジライフ

2016.12.16

株式上場の準備は大変です。

上場準備で必要なこと。

「さあ、3年後の上場を目指して上場準備を始めるぞ!」と考えた場合にまず何をすべきでしょうか。証券会社との契約?監査法人のショートレビューと契約?これらも確かに重要ではありますが、まず最初に行うことは、自社を客観的に見ることだと思います。また、経営者自らが、株式上場準備についての知識を付けることが大切だと思います。本屋に行けば、上場のハウツー本はたくさん出てますのでまずはそれを読んで勉強するのもよいと思います。

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そしてある程度知識を得たら以下の手順で、自社の体制をチェックしてください。

1.利益計画・予算管理・月次決算の状況

①中期経営計画の作成をしているか。

中期経営計画の作成方法

・企業環境の分析
社会環境、経済環境、金融環境、市場環境、競合分析(財務面、戦略面を含む)を詳細に行い、SWOT(強み、弱み、事業機会、脅威)等を把握する必要があります 。その上で、業界全体の将来性、業界における自社のポジション、参入障壁の高さ、自社の強みと弱み等を計画書に記載します。

・経営方針の決定
企業環境分析の結果を踏まえて、経営方針を作成します。経営方針は経営トップが描く将来像であり、社員全員の指針となります。

・各部門との調整
経営方針を実現させるための経営計画を作成するためには、トップマネジメントと各部門との間で十分な検討、調整を行い、全社的に意思統一を図ることが必要です。

・単年度予算との整合性
中長期経営計画は、単年度予算と整合していることが必要です。

② 単年度予算管理について株式上場審査上のポイント

・達成可能性
上場審査上は、たとえ前年度の実績を上回ったとしても、予算と実績が大幅に乖離すれば、予算管理能力に欠ける会社であると判断され、他に問題点が無くても、公開妥当性が疑わしいと判断されてしまう場合もあります。従って、予算については、上場の直前まで、その達成可能性が審査されることになります。

・合理性
予算は、上場に際し基本的に公表が要求されており、投資家に対し、貴社の今後を明示する手段となるため、単なる社内目標ではなく、現状を分析し、その現状分析に基づき、合理的な根拠を有する計画でなければなりません。したがって、以下の視点が必要となります。
・利益計画は、資金計画、人員計画、設備投資計画等との整合性が図られたものか
・マネジメントチームの事業遂行能力があるか
・実現のために、必要な経営資源を認識しているか

③ 予算制度の整備・運用について

予算管理単位を決める
次のような単位で予算を管理することが必要です。

①全社(連結ベース)
②セグメント別

総合予算を整備、運用する必要がある
単に損益予算だけではなく、設備予算、投融資予算等を含む総合予算であることが必要で、かつ個々の予算が各々独立したものではなく、相互に関連付けて設定されていることが必要となります。なお、予算編成に関しては、必ず取締役会の承認を受ける必要があります。

また、予算と実績のかい離については、必ず取締役会にて検証することが重要であります。また、その月次決算を翌月の10日程度で締めて取締役会を10日前後で行うことが重要であります。これは、上場した際に決算短信などを四半期に1度出す必要になり、早期の決算処理が出来ないと投資家に開示できないことになりますので上場審査上も重きをもって審査します。

予算の見直しは全社的な合意の上で適時に行うことが必要
予算の修正に当たっては、取締役会で検討・合意の上で適時に行う必要があります。予算の修正を頻繁に行うと現場のモラルや士気にかかわるので予算修正の明確な基準を決めておくことが望まれます。

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2.コーポレートガバナンスの状況

①取締役会の開催頻度について

Ⅰ会社法上の要請

  • 取締役は、3ヶ月に1回以上自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない(会社法363条2項)。
  • 取締役会の議事録は本店に10年間備え置く必要がある(会社法371条第1項)。

Ⅱ上場審査上の要請

  • 上場審査上、取締役会は毎月開催し、適時に経営判断が下せる体制が求められます。

取締役会決議事項
Ⅰ会社法上の要請

  • 取締役会で決議すべき事項として、定款に株式譲渡制限がある場合の譲渡承認等(会社法139条の1)、株主総会の招集(会社法298条第4項)、重要な業務執行の決議(会社法362条)、利益相反取引(会社法365条)等があります。

Ⅱ上場審査上の要請

  • 経営上の重要な事項について取締役会規程に基づき取締役会で決定されており、取締役会で決定された経営方針に基づいた経営が行われていることが必要となります。取締役会が関連当事者との取引を他の取引と比して、取引価格、取引条件において妥当であると判断を下せる状況にあることが必要となります。また、月次決算について報告がされて検証がされていることが大切となります。

②取締役会の役員構成について

公開審査上の要請

取締役について
・常勤取締役が過半数いることが望まれます。

同族関係で役員の過半数を占めることは望ましくなく、非同族が過半数を占めることが望まれます。また、代表者のほかの企業の役員の兼任などは、基本的には上場審査上の大きなハードルとなります。

監査役について

会社法上の要請
上場後大会社になる場合は、次の対応が必要となります。
① 会計監査人を置くこと(会社法328条2項)。
② 委員会または監査役設置会社でなければならない(会社法327条3項)。

上場審査上の要請

  • 上場審査上、監査役は監査の実効性を確保するため、名目だけの監査役では不適当で、監査役に相応しい能力及び経験を有する方を選任する必要があります。
  • 監査役は役員と同族関係にないことが求められます。

監査役による監査実績

  • 監査役の監査の実施状況は審査上重点項目のひとつになっています。上場審査の場合、少なくとも直前前期からの監査実績が必要とされ、監査役に対する個別質問も行われるのが通例です。

職務権限の明確化について

組織的経営

  • オーナー経営という個人的能力に過度に依存した経営体制から権限と責任の一部を部下に委譲し、企業規模の拡大にも対応できるような組織的な経営管理体制を目指すこと。

整備手法

  • まず組織機構を整備し、業務分掌規程、そして職務権限規程を作成することが必要。
  • 職務権限規程は一部の者に業務が集中することなく、責任と権限のバランスがとれたものとなっていることが求められる。

稟議制度

  • 上場審査上、意思決定が組織的に行われる状況にあるかが重要となる。具体的には、社内の決裁制度の整備及び運用状況について確認される。そのため、多くの上場会社では、稟議制度を採用している。
  • 稟議制度は、個別案件の意思決定にあたり、委譲された権限の行使を統制する手段として採用されている。この制度には単なる統制手段としてではなく、情報伝達手段や組織的意思決定手段としても意義がある

④社内規程についてs_eky2otrpxdw-mikhail-pavstyuk

社内規程は、会社を運営していくためのルールブックであります。役職員は規程に則り活動する必要があり、上場審査上、規程通り業務が運用されているかが非常に重要となります。

必要な規程は以下のようなものです。

取締役会規程
規程等管理規程
監査役業務規程(業務基準)
株式取扱規程
インサイダー取引防止規程
株式業務取扱要領
組織規程
業務分掌規程
職務権限規程
稟議規程
関係会社管理規程(関係会社がある場合)
就業規則
給与規程
出張規程
給与規程
人事考課規程
経理規程
勘定科目取扱要領
内部監査規程
予算管理規程
連結経理規程(連結決算がある場合)
販売管理規程
文書管理規程
印章管理規程
固定資産管理規程

3.組織体制およびグループ会社管理体制

1.管理機能についてs_blefs8-wzhm-breather

財務経理機能

経理機能のうち上場会社特有の業務はディスクロージャー制度への対応です。これを上場前と上場後に分けると、上場前には上場申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部等)の作成が、上場後には半期報告書、有価証券報告書や四半期報告書の作成がその中心となります。いずれも専門性の高い書類の作成であり、特に上場申請書類の作成は準備作業の中心であるとともに、その作業量も膨大になります。また、経理機能と財務機能とは、内部統制上及び上場審査上も明確に分離することが求められます。

人事総務機能

総務機能のうち上場準備段階で特に必要な業務は社内規程の整備、議事録の整備、上場申請書類の作成、また総務業務は株主総会事務や株式事務も担当することになります。上場申請書類のうち数値に係る部分は経理部門が行いますが、数値化されない部分の多くは総務部門が行うことになります。したがって、その作業量も経理部門と同じく膨大です。また、上場審査においては、内部統制上、総務機能と経理機能を分離することが求められます。

経営企画機能
上場準備期間中そして上場後も、経営戦略・事業計画の策定やIR機能等の任務を担うもので、組織的な経営管理を行うためにも設置することが望まれます。株式上場に際しては、一般的に社長専属の独立したスタッフとして、機能を強化する必要があります。そこで経営企画部門の担当者の確保が必要となります。

2.内部監査体制について

内部監査制度とは
内部監査制度とは、経営者に代わって、社長直属の担当責任者が、各オペレーションが法令、社内規程等に準拠して遂行され、効果的かつ効率的な経営が行われているか否かをチェックして、業務改善に資する情報を経営者にフィードバックする制度をいいます。他の業務サイクルと同様に『計画→実行→確認→改善指示→徹底・定着』が必要となります。監査役の監査同様、内部監査の実施状況は審査上重点項目のひとつになっています。少なくとも直前期首からの内部監査実績が必要とされ、内部監査人に対する個別質問も行われるのが通例です。

組織上の位置付け
内部監査部門は、会社の各部署からの独立性が強く求められるので、原則として社長直属の専門部署であることが必要となります。ただし、小規模組織の場合、独立した内部監査部門を設けることは困難と思われるため、当面、管理部門の担当者が内部監査規程に基づいて実施することも考えられます。

4.役員、株主、その他利害関係者との取引

特別利害関係者との取引等の整備
特別利害関係者との取引は、上場審査上原則として解消することが必要です。これは、特別利害関係者を利用しての決算操作や大株主の利得行為を防止することが主たる目的です。なお、特別利害関係者との取引についても、次の条件が満たされていれば、取引を継続することに問題はありません。ただし、このような取引については、取引の内容、取引金額及び取引条件の決定方針等について、開示する必要があります。

a.取引を行うことの合理性、必然性が認められること
b.取引条件や取引条件の決定手続が適正であること

5.株式について

資本政策の必要性

上場前後における株主構成・役員その他の持株比率・ストックオプション・資金ニーズ等を検討し、それに基づいて公開時までの各種ファイナンスの方法を選択していくために資本政策の立案は必要不可欠です。資本政策は上場までの事業計画を策定して早い段階で立案する必要があります。

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資本政策策定のポイント
役社員へのストックオプションの割当数の決定・割当時期・割当数量の検討

・株式を引受ける際の個人株主の資力を考慮
・親会社の支配比率をどの程度にするかの調整
・具体的な事業計画(設備投資計画・資金ニーズ)の作成

資本政策は一度してしまうと後戻りが出来ないので慎重に行う必要があります。また、ストックオプションの付与などについては、全体の発行株式数に対してのシェアが高すぎると、上場後の株式の希薄化が懸念され上場審査上の大きなハードルとなります。主幹事証券会社を決めたら公開引受部の担当者に相談しながら慎重に進める必要があります。

以上のように、株式上場を行うためにやらなければいけないことは多々あります。これは、一部であり、細かくやりだすときりがないくらいに様々体制を整備することが必要があります。このような事をしてまで、上場する意義はどこにあるのかということも一方で考えなければなりません。単に、なんとなく利益も出だしたから上場を目指そうでは、なかなか大きなハードルを越えられません。また、今までのやり方と大きく変わるので、現場が窮屈さを感じることも多くあります。その結果売上の成長を妨げてしまうということもよくあります。また、上場はゴールではありません。上場はスタートなのです。一度上場してしまうと、上記のような体制を維持し続けなければなりません。経済環境で時に赤字になることもあるかもしれません。それでも上記のような体制は維持しなければならないのです。やはり「覚悟」をもって上場を目指すべきであるといえます。

それでも上場すれば、資金調達もしやすくなりますし、優秀な人材確保もしやすくなる。また成長スピードもあがります。だからこそ上場は目指してほしいと思ってます。