ビジライフ

2016.12.22

経営者なら抑えておくべき金融商品

はじめに

多くの経営者の方々が「いかにして自身の資産を効率的に殖やしていくのか?」という課題に直面しています。そして、その課題から導き出される回答が「金融商品を用いて資産運用をする」という解決方法ではないでしょうか。

しかしながら「金融商品といっても色々あってどれを使っていいか分からないよ。」や、「投資をしている時間なんかない!」とお考えの方が多いのではないでしょうか。

今回のビジライフは、そんな経営者の方々の声にお応えすべく、「経営者の抑えておくべき金融商品」について説明をします。

今回、読者の皆様に抑えて頂きたい金融商品は以下の4つです。

  • セパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)
  • 仕組預金
  • 債券
  • 株式

この4点は主にご多忙でいらっしゃる経営者向けの金融商品であると考えられます。なお、今回説明をするのはあくまで上記4つの概要のみになります。また、同じ名称・種類の金融商品でも、金融機関ごとに手数料や内容、サービスなどは若干異なることがあります。

ですので、もし興味をお持ちになられましたら、最寄りもしくはお取引のある金融機関へお問い合わせを頂きますよう、何卒宜しくお願い致します。

セパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)

セパレートリー・マネージド・アカウント(Separately Managed Account、以下SMA)とは、一言で言えば「超富裕層向けのオーダーメイド金融商品」です。

金融機関が投資家(今回は分かりやすくするために「顧客」とします。)と「投資一任契約」を結び、金融機関が顧客から預かった資産を「顧客の要望に応える」形で運用をする仕組みのことです。

顧客は、通常使っている口座(アカウント)とは別に管理された(セパレートリー・マネージド)口座に資産や資金を入れ、金融機関へ運用したいイメージ(例えば、「年利10%くらいで運用したい」や、「経営している会社がガソリンスタンドなので、石油価格の下落に備えられる運用をしたい」など)を金融機関とすり合わせ、金融機関はその持ち得るリソースを活用し、顧客にとって最適であろう「資産配分(ポートフォリオ)」を決め、そこにのっとって運用をしていきます。

このSMAは、2004年4月に日本で投資顧問業法が改正された商品ですので、市場での認知度は株式や債券、投資信託には劣るものの、2012年のアベノミクス相場により、証券会社、特に日本でのSMAの老舗である大和証券、三井住友信託銀行と、証券業界最大手の野村證券の営業活動で、急速に普及しました。

このSMAの最大の強みと言われるのが、「オーダーメイド性」と「プロが運用する」ということの2点であると考えています。

自身の運用したいイメージを金融のプロである金融機関が形にし、その運用を金融機関のファンドマネージャー(金融機関によってはその運用業界で有名なファンドマネージャーをSMA運用の為に雇うこともあります。)が運用します。

SMAの運用をするためにはおおむね1億円、金融機関によっては3億円や3,000万円の資金が必要になります。

もっと簡素化した商品であれば300万円から購入できる商品もありますし、ここもとでは1円単位から購入のできるSMAと類似した商品もでてきています。

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仕組預金

仕組預金とは、「定期預金にデリバティブ(金融派生商品)を仕組みとして組み込んだ金融商品」です。

主なものには為替や預け入れ期間と連動し、受け取ることのできる金利が変化するものが一般的です。例えば、外国為替と連動するものであれば、簡単に説明をしますと『満期日が1年後で満期日の為替レートが、預け入れた時の為替のレートと比較し、「3円円高にならなければ』年利2.5%の金利を受け取ることができる』商品などです。

通常の1年満期の円定期預金であれば、大手銀行であれば0.010%(2016年12月20日現在の金利)と比較すると、その金利の高さを実感して頂けるかと思います。

一般の定期預金と比較し、仕組みの中にデリバティブを組み込み、リスクを積極的にとっているため高金利の金融商品となっています。

また、預け入れ期間が10年で、4年目までは利息を受け取ることはできないものの、預け入れ5年目から利息を受け取ることができ、受け取り利息が1年ごとに上がり10年目には、年利1%の金利を受け取ることのできるものもあります。

また、前述したSMAと同様、目安として1,000万円以上の預け入れをする場合、オーダーメイドで仕組み預金を組成することもできます。

詳細は仕組預金を取り扱う金融機関へ相談されることをお勧めします。

債券

ここからはメジャーな商品になりますが、まずは、債券について説明をします。

債券と株式の、投資家側から見た大きな違いは「利益の出し方」と「満期の有無」です。

株式は「配当(インカムゲイン)」と「株価(キャピタルゲイン)」の2つを収益としますが、債券の場合は「利息(インカムゲイン)」と「債券の市場価格(キャピタルゲイン)」が収益となります。

また、株式には満期がありませんが、債券には決まった年限で満期があります。この満期の際には一般的に投資をした元本(がんぽん)が全額返ってくることが特徴です。

上記の理由から、債券は株式とは違い、積極的に市場で売買するわけではなく満期まで保有をすることが前提の金融商品ですので、「本業が忙しく、投資をしている時間がない!」という経営者向けの金融商品であると考えています。

その中でも、より、経営者向けであろう商品を1つ紹介します。

『仕組債』

仕組債とは、一言で言えば「金融派生商品(通称:デリバティブ)を仕組みとして組み込んである」債券のことです。

一般に債券といえば、国の発行する「国債」や、事業会社の発行する「事業債」(有名な物は、電気会社の発行する「電力債」や、ここ直近であれば、金利が高いソフトバンクの発行する債券など)が一般的です。

債券の基本的な説明についてはこちらの日本証券業協会のページのリンクよりご参照ください。

債券は非常に奥が深く、金利や発行体(債券の発行元)、期間や利率などもさまざまに設定されるので、それこそ数えることが極めて難しい数が存在しています。

その中で投資家のニーズに合わせて「オーダーメイド」で作られ、市場で取引をされている債券が「仕組債」です。

ここで言う投資家のニーズとは、ざっくり言うと以下の様なニーズです。

  • 投資家がこれから経済動向やマーケットがどうなっていくと考えているか。
  • どんなリスク(例えば、「ドルと円の為替が20円くらい、円高になったら嫌だな~」など)を懸念しているのか。
  • どれくらいのリターン(例えば、「1年で10%の金利がついたら良いな~」など)を求めているのか。

上記の3つのニーズを、債券を作成する会社(日本だと証券会社)が汲み取り、債券を組成(オーダーメイドで作成すること)します。

その中で代表的なものを挙げるとすると、為替の変動により債券の金利、償還元本が変動する債券です。為替リンク債や、デュアル・カレンシー債などの種類のある「為替型のリンク債」、

日経平均や個別もしくは複数の株式銘柄などに連動し、金利、満期の償還元本の変化する「株式型のリンク債」、そして、銀行間での取引金利(LIBORや、日本であればTIBOR)や市場金利と連動した「金利型のリンク債」が一般的なものとなっています。

こちらも前述しましたSMAや仕組預金と同様に、ある程度まとまった投資金額やある程度のニーズがある場合には、オーダーメイド(つまり自分のニーズにあった商品が出来る)で商品が組成できる場合があります。

金利を高く設定したり、発行体(債券を出すところ)を指定したりと、非常に様々なことができます。

例を説明しますと、先述した「投資家のニーズ」に照らし合わせた場合、「利回り10%くらい欲しい。(リターン)」、「直近の日経平均は上がりすぎだな。これが3割位落ちたら嫌だな。(リスク)」、「日経平均は上がりすぎだけど、アメリカは落ち着いてるし、今後1年で3割落ちたら嫌だけれども、4割落ちることは考えにくいな。(マーケットの今後の見通し)」というニーズを投資家からヒアリングした場合、証券会社は『日経平均が1年で4割落ちなければ、年利10%、期間1年のデリバティブを用いた債券』を組成します。

その後、組成したものを目論見書(卑近な言い方をすれば「購入する商品の説明書」)や契約締結前交付書面(乱暴な言い方をすれば「取引や商品のリスク・手数料等を記載してある書面」)を交付し、購入をします。

金融機関によって「最低いくらで購入できるのか?」というラインは違います。

また、上記の様に『完全にオーダーメイドで仕組債を組成してもらう』場合には、概ね1億円~3,000万円が必要になります。(この金額はあくまで目安としておいてください。金融機関の規模や、その時の市場の状況によりこの金額が変化することがあります。)

しかしながら、「この金額だと高すぎる」という方には、完全オーダーメイドでなく、半オーダーメイド(金融機関によっては大まかな市場動向や多数の顧客からの声を集め、定期的に仕組債を組成し、販売するところもあります。)の仕組債は300万円くらいで購入できるところもあります。

株式

前章の債券のところでも触れましたが、株式には2つの収益の出し方があり、それぞれ配当(インカムゲイン)」と「株価(キャピタルゲイン)」です。
この中で、「長期投資」に向くのは、まず「配当」狙いであれば「配当利回りの高い」銘柄に投資をする方法があります。配当利回りは、Yahoo! Financeや各金融機関のページ等でも確認ができますが、計算の仕方としては、
・株式の配当利回り(%)=1株当たり年間配当金÷1株あたりの株価×100
です。

こちらを使い、年間の配当利回りを計算します。2016年12月21日終値ベースでの日本市場(日経平均)の配当利回りは約1.5%です。次に、「株価」狙いであれば、以前執筆をしました「市場平均のPBR、PERとの比較」を用いて算出をする方法があります。まず、「PBR」とは、「株価純資産倍率」というもので、計算式は、
・PBR=株価÷一株当たりの純資産
で計算することができます。

このPBRの意味は、簡単に言うと「1株当たりの会社の財産に対して、今、この株は何倍買われているのか?」というものを見る指標です。
例えば、株価が400円で1株当たりの純資産が500円である場合、
400円÷500円=0.9倍
よってこの株のPBRは0.9倍となります。

一般的にこのPBRは1倍を超えると「割高」(高い、買われている株)、1倍を下回ると「割安」であるといえます。
少し深い説明をすると、株主(株の所有者)は株式を購入し、間接的に会社の資産を保有しているといえます。つまり、このPBRが0.9倍であるということは会社の資産を間接的に保有するコストが9割のお金で済むということです。図に表すと以下のような形になります。

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『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方:吉野 貴晶著』より作成

次に「PER」とは、簡単に言うと「1株当たりの利益に対して、今、何倍の株価がついているのか」ということを、表す指標です。もっと乱暴に分かり易く説明をすれば、「他の株と比べて、その株がお買い得かどうか?」を表しています。

計算式は、
・PER=株価÷一株当たりの利益
と計算ができます。

例えば、株価が500円で1株あたりの利益が50円の株式ということは、PERは
500円÷50円=10倍
よって、この株式のPERは10倍となります。このPBR、PERを用いて投資対象を探していきます。なお、以下で用いる数字はあくまで例であります。このPERとPBRは各々の株式の会社や業界によって大きくことなります。ですので、大前提として「これらの値を同じ業界の会社内で比較をする。」ということが重要になります。

読者の方々の中には複数の会社の決算書を見た方もいらっしゃると思います。その際に業界ごとに決算書の内訳や資産、負債の特徴に大きく差があることがあったと思います。
ですので、PBRとPERは同じ業界内で比較をして頂くことが大前提となります。
この前提の上で、以下の表をご覧ください。

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『Yahoo!ファイナンスよりデータを抜粋』
上記の図は2016年12月2日の終値における日経平均株価と市場PER、PBRの平均値と、織田産業、羽柴興産、徳川商事の株価、PER、PBRです。上記の3社はすべて架空の会社ですが、それぞれ、資源や食品を扱う商社です。
まず、この3社の1株あたりの純利益、1株当たりの純資産を求めます。
式としては、先ほど説明したPER、PERの式をそれぞれ変形して、
・株価÷PER=1株当たり純利益
・株価÷PBR=1株あたり純資産
となります。

計算すると、それぞれ3社の1株あたりの純利益、1株当たりの純資産は以下の表のようになります。
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さらに、この1株あたりの純利益、1株当たりの純資産のままで、3社の株式が市場平均値のPERである15.80倍、PBRである1.30倍まで購入されると仮定した場合、株価の『理論値』は以下の表のようになります。

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つまり、上記の3社はPBR、PBRのどちらから見ても割安であると言えます。また、この計算を応用すると、期間までは分かりませんが、今の株価が市場平均のPER、PBRまで買われた場合、何円株価が上昇するか、という「目星」もつけることが出来ます。例えば、織田産業なら、PERから見ると761.07円、PBRで見ると891.07円、現状の株価と市場平均値でかい離があることが分かります。

この計算式は『期間まではわからないが、株価と市場理論値とのかい離』が分かるといえるのではないでしょうか。

リスク

ここまでで4種類の金融商品について述べてきましたが、それぞれの商品にはリターンに見合うリスクがあります。
例えば、仕組債であればリスクは以下の通りになります。

  • 相場の変動によっては当初決めた金利を受け取ることが出来ないリスク
  • 相場の変動によっては満期日までに償還(債券の期間が満期になる)になるリスク
  • 相場の変動によっては満期日に元本を割って(通常債券は、満期日に全額投資元本が返ってきますが、相場の変動によっては投資元本が全額返ってこない)償還してしまうリスク
  • デリバティブを扱っているところ(デリバティブを債券に仕組みとして入れる会社)が倒産した場合、損失が出て(金利が受け取れない、債券の元本が全額返ってこないなど)しまうリスクがある
  • 債券の発行元が倒産してしまった場合、金利や投資元本が受け取れない「信用リスク」
  • 債券を満期前に売却する場合、その債券の売却価格は市場での価格となり、売却金額が投資元本を下回ってしまう「価格変動リスク」
  • 外貨で投資元本を払っている場合には、その外貨の市場レートによっては投資元本を下回ってします可能性がある「為替変動リスク」
  • 債券を売却する場合にその売却したい債券の市場での流通が無く、そもそも売却が出来ない、もしくは、投資元本を下回った金額での売却になってしまう「流動性リスク」があります。

(※1~4までが仕組債特有のリスク、5以降が債券の一般的なリスクです。)

特に仕組債は仕組債特有のリスクとして上記の1~4と6、8には特に留意しなければなりません。(仕組債はオーダーメイド色が強い為、市場での売却が難しく、購入する場合は満期まで保有することが大前提となります。)

しかし、4種類の金融商品全般に言えることですが、「相場・市場の大きな変動があった場合には想定以上の損失を出すことがありますが、その逆で想定以上の大きな利益を出す」ことができる可能性もあります。

ですので、実際に投資をされる場合には、まず
・ご自身の投資理由
・どれぐらいお金を増やしたいのか
・どんなリスクを懸念しているのか
・どんな商品に投資をしたいのか
など、まずはご自身のニーズを明確にし、最寄りもしくはお取引のある金融機関へ相談をされることをお勧めいたします。

最後に

今回は、セパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)、仕組預金、債券、株式の4種類の金融商品について説明をしていきました。
本記事が読者の皆様の資産運用や金融商品選択の一助となれば幸いでございます。

参考文献
・『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方』:吉野 貴晶著
・『仕組債入門』:スコット.Y.ペン、ラビ.E.ダッタトレーヤ著、仕組債研究会訳

執筆者:インクグロウ株式会社 川井 愼介