ビジライフ

2020.1.22

M&Aを行うにあたり注意すべき点【労務編】

インクグロウの照井です。M&Aを行うにあたり注意すべき点【労務編】を本日は、記載していきたいと思います。

M&Aを行うにあたって労務というのは、必ず論点になりますのでここで整理をしておきたいと思います。特に昨今は、
「働き方改革」として、マスコミなどにも多く取り上げられているように、働く側も非常に意識をしている部分でも
あるので特に注意が必要です。

労務で特に注意すべき点
1.残業代について

年俸制だから払わなくて良い?
中小企業であると、残業代を支払っていないケースがあります。
そのような企業がいうのは、「うちは年俸制だから」というようなことを理由としている場合があります。
しかしながら、労務上は、年俸制だとしても、賃金の額を年単位で定める制度であって、1年に何時間働いて
もその年額は変わらないという意味ではないのです。
労働基準法では、「法廷労働時間以上の労働をした場合いは年俸とは別に時間外割増賃金を支給しなければならない」
と定められております。従って、年俸制でも残業代を支払う必要があるのです。
年俸制でも1分単位で時間管理をして、残業代を支払う必要があるのです。
また、ここの1分単位というのも、「ミソ」です。ここもよくあるのは、「うちは残業代を支払っているよ」といい
ますが、よく聞くと、30分単位などで残業代を把握しているケースです。そうすると、最大でいくと、1人/1日あたり
最大58分(定時の29分前に出社、定時の29分後の退社)の残業の未払いの発生リスクが伴ってしまいます。

深夜残業代って?
その他、よくあるケースは深夜残業代などを支払っていないケースです。法定労働時間を超過した場合や法定休日に
勤務させた場合及び深夜業務には政令で定められた割増賃金の支払いが定められています。割増率は時間外労働
や深夜労働の場合は2割5分以上と定められています。また、休日労働では、3割5分以上となります。
仮に時間外労働と深夜労働が重なった場合は、時間外労働 2割5分と深夜労働 2割5分 の合わせて5割以上の
割増賃金を支払わなければなりません。

固定みなし残業代の注意点
また、固定みなし残業代についても、注意が必要です。
固定みなし残業時間は、36協定で定められた基準と同様です。36協定では、原則1か月間に45時間、年間360時間(対象期間
が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は、1か月42時間、年間で320時間)という上限が定められています。
一方で36協定には、「特別条項」があり、繁忙期うあ想定外の業務などで45時間を超える残業が発生する場合は、事前に
労使協定を結ぶことで、1年の半分(6か月)までは月45時間の条件を超えることができます。
また、働き方改革関連法で、時間外労働の上限は、年720時間に、単月でも100時間までという内容が労働基準法に追加され
ました。それを超える残業は、違反となり、企業は罰則の対象となるので注意が必要です。

有給取得の取得の義務って?
追加で働き方改革にて、2019年4月から、年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられました。これも「義務」ですので
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合は労働基準法120条の違反となり、30万円以下の罰金が科せられます。

未払残業代はいつまで遡られるの?
未払残業代の消滅の時効は、現在は、2年であります。つまり、2年前まで未払残業代がある場合は、企業側は支払わなければ
ならないリスクが存在します。これが、2019年の10月20日の日本経済の紙面において、厚生労働省が消滅期間を3年に延長
する検討に入ったと報道しました。これが実現してしまうと、未払残業がある企業は大変です。

2.残業代などがM&Aに与える影響
残業代などがM&A(売る側)に与える影響はどのようなものがあるでしょうか。
大きく分けると2つの影響があります。

ⅰ.正常収益力低下による売却価額への影響
ⅱ.過去の未払残業代による簿外の負債による売却価額への影響

ⅰ.正常収益力低下による売却価額への影響
買収企業は、M&Aを行う際に、売却企業から提出される損益計算書などから収益力を把握して投資額を決定します。
仮に残業代を支払っていないとすると、ここで提出されている損益計算書にはその残業代が含まれていないことになります。
しかし買収後は、法定通りに、残業代を支払わなければなりません。そうしますと当然その分の収益力が低下します。
その収益力が低下した分を、それが発覚する前に考えていた株価から引いてくれと当然になります。

ⅱ.過去の未払残業代による簿外の負債による売却価額への影響
上述の正常収益力に加え、先ほど記載したとおり残業代は、過去2年までさかのぼることが出来ることから、これも現在
顕在化していない(潜在的な)負債であるとみなされます。これについても当然株価から引いてくれとなります。
(ただし、ここについては、潜在的なリスクでもあるので、最終契約の中で、売却側がそのリスクが顕在化した場合に
その分を負担するなどとする表明保証に入れてすぐに株価に影響させないこともあります。)

特に、外食企業や小売り産業、介護事業、運送業など人を多数使う産業については、この残業代の問題がM&Aにおいて
大きな課題になることが多いので注意が必要です。
数年後M&Aを考えている場合などは、労務を意識して経営していくことが必須です。(とはいっても最近は、労務について
非常に厳しくなっているのでそれがなくても、遵守が必要な環境ですが・・・)

以上M&Aにおいて労務が与える影響について記載しました。弊社では、このあたりに詳しい社労士とも連携してますので
ご相談があればお気軽に頂ければ幸いです。私のフェイスブックにメッセージ頂いても大丈夫です。よろしくお願いします。