譲渡企業にとってのM&A
譲渡の対象
一言でM&Aによる譲渡と表しても、その内訳は様々です。
大きく分けると、会社そのものを全て譲渡する場合や、運営している事業の中で、特定の事業だけを譲渡する場合があります。
これらは譲渡を選択した背景によって、その譲渡対象は変わってきます。
成長戦略の一端としての譲渡
企業が幾つかの事業を運営している場合、特定の事業に注力したいと考えたとしても、カネ、ヒト、モノ、ノウハウなどの経営資源を集中させなければ成長拡大させることはできません。
ですが、どのような企業でも経営資源には限りがあります。
そこで、幾つかある事業の中から今後あまり期待できないと考える事業を譲渡してしまえば、注力したい事業に経営資源を投下することができるようになります。
そうなるとこの場合の譲渡は、その企業にとって、まぎれもない成長戦略です。
基本的に譲渡対象となりえる事業は、現在は不採算であったり、効率的に利益を上げられる事業ではないかもしれません。しかしながら、買収したいと考える企業にとってその事業は、買収企業が運営している事業との相乗効果が期待できる場合が多く、魅力的に映っているケースがほとんどです。
また、このような場合、働いている従業員にとっては、より成長できる機会を得ることが出来て、従業員にとってもハッピーになるケースが多くあります。
最近では、スタートアップ企業や成長著しい企業がより大きな成長を得るために、ファンドと組むであったり、大手企業と組むというような急成長型M&Aを行うことも増えております。
以上の例は、譲渡の一例でしかありませんが、その事業を譲渡したい企業、また買収したい企業にとっても、M&Aはまぎれもなく成長戦略の一つなのです。
後継者問題解決のための譲渡
中小企業白書によると、経営者の平均年齢は年々高齢化しているだけでなく、特に中小企業では経営を任せられる社員は少なく、特に従業員5人以下の場合には48.5%が経営を任せられる社員はいないと回答しています。
また、事業の存続を願っているにもかかわらず19.2%が後継者の不在に悩んでいます。
例えば経営者の子供に承継させたいと考えても、子供自身が承継を望まなかったり、別の職業に就いていることもあるでしょう。
また、仮に従業員に承継させたいと考えても、そのためには高いハードルが幾つもあります。
結果的に、後継者がいないために会社を清算・廃業してしまう場合が多く、これでは今まで作り上げてきた社会的信用やノウハウ、技術、従業員の雇用、取引先との関係などが消滅してしまいます。
経営者の立場では、本来なら会社を存続させたいのが本音のはずです。
そこで今注目され、急激に件数も増えているのが、M&Aによる事業承継です。
M&Aによって、第三者に会社を譲渡することで、経営者自身が今まで身を粉にして作り上げてきた会社が存続できるだけでなく、社会的信用や社員の雇用、取引先との関係も守ることができるようになります。