» 神明のワタミへの出資・資本業務提携について

テーマワタミなどの買収をしている、株式会社神明とは?

株式会社神明は、回転ずしの元気寿司や、ワタミなどを傘下にし成長している企業である。今年に入ってからも、東果大阪株式会社、株式会社神戸まるかん、株式会社コダックなどのM&Aを行っている。今回ワタミを事例にM&A戦略について紐解いてみる。

 

 

「神明のワタミへの出資・資本業務提携について」

2017年9月6日
金子博人

弁護士

金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所)
事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。

  • 1.自社株で支援をうける手法

 

2017年1月22日、コメ卸最大手で、年商1800億円の、「神明」(未上場)が、外食大手の「ワタミ」(東証1部)に出資し、資本業務提携をするとの発表があった。

ワタミが自社割当の第三者割当増資をして、その自己株式(普通株)1750万株を、神明に14億3850万円で売却するというものであい、売却後は、神明が4.19%の株主となる。

アメリカやヨーロッパでは、自社株を対価に、他社を買収するというM&Aの手法はよく見かける。今回は、逆に自己株式を買ってもらうことにより、出資してもらうパターンである。

また、今回は、第三者割当増資で直接「神明」に割り当てれば目的を達するはずだが、それをしなかったのは、第三者割当の手続きは売り手の責任で済ませてほしいという要望があったのだろう。

さて、今回の第三者割当増資では一株822円であった。当時の株価は1100円弱であったので、割安感がある。第三者に対する「有利発行」となると、取締役会の決議だけで足りず、株主総会の特別決議が必要となる。目安は市場価格の75%以上というものが多い。それからすれば、ぎりぎりでセーフというところだろう。

さらに見ると、ワタミは、26年3月期は49億の赤字、27年3月期は128億の赤字であり、一株あたりの純利益はマイナス344.31円(27年3月期)であった。これからすれば、822円も妥当なのであろう。事実、市場はこの提携を、好感を持ってみていたようで、その後は、市場は登り基調で、17年8月には1600円を超えている。

 

  • 2.ワタミ救済の提携

 

ワタミは女性社員の自殺や、パワハラなど、ブラック企業の典型とみられ、売り上げを急減させ、今述べたとおり、二期連続の赤字決済となった。それだけでなく、16年3月には、成長部門であるはずの介護部門を損保ジャパン日本興亜ホールディングに売却した。財務的に、追い込まれたのであろう。

とはいえ、外食産業は競争が激しい。ワタミは従来のビジネスマン、学生をターゲットとしたビジネスモデルから、家族向けにターゲットをシフトしようとしているようだ。売り上げ不振の居酒屋「和民」の店舗の内100店を閉鎖する一方、昨年9月、「ニッポンマグロ漁業団」というブランドをたちあげた。これに加え、株式数2位の株主サントリーと組んで、居酒屋の新ブランドを開発することを目指しているようだ。

今回の神明との提携も、ランド力を拡大する一環なのだろう。ワタミ自体のブランドが傷ついているので、多の有力企業との提携は、賢明な打開策である。

 

  • 3.新明の新分野開拓

 

日本のコメの需要は、食生活の多様からどんどん減り、1963年の1341万トンをピークに、最近は800万トンにまで減少している。

神明は、生き残りをかけ、米穀事業だけでなく、食品加工、外食事業、農業など、上流や下流の分野へ、ビジネス分野を拡大している。このように成長部門を求めて、業種転換をかるのは、本業のマーケットが衰退する企業の、取るべき常套手段である。

12年6月、神明は回転寿司の中堅「元気寿司」に出資し、13年4月には大手の「カッパ寿司」に出資し、両者の統合を試みたようだが失敗したようだ。14年10月、「カッパ寿司」を外食大手のコロラドに売却する一方、15年2月、「元気寿司」を買い増し、筆者は、子会社化している。

今回の提携は、この流れをうけて、外食産業へのコミットメントを拡大しようとするビジネス展開の一環であろう。これは、望ましい事業展開である。

ただ、今回の業務提携に対し、ワタミのコメの消費量は限られており、「シナジー」は少なく、効果を疑問視する論調も見受けられている。しかし、M&Aの目的は、シナジーだけではない。新明は、米穀事業に代わる新らたな収益部門を開拓することを狙っているのである。今回に引き続き、さらなる外食産業のM&Aを展開するはずである。今後の積極的な事業拡張を期待したい。

その他専門家コラム