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テーマRIZAPグループ ヤマノグループから『堀田丸正』を子会社化

RIZAPグループ(アンビシャス、2928)は、和装品などを手掛ける堀田丸正(東証2部、8105)と資本業務提携すると平成29年5月23日に発表した。アパレル企業へのM&Aはジーンズメイト(7448)など上場・非上場を合わせて7社目。

堀田丸正の第三者割当増資の引き受けにより、RIZAPによる払込金額は、総額19億2500万円。増資後の保有株比率は議決権ベースで62.27%となる。

 

「買うのもうまいRIZAP」

2017年6月28日
小黒健三

公認会計士
小黒健三 やまと監査法人パートナー 専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。

M&A価格の相場は、EBITDAの5倍±ネットデット、で考えるという時代があった。現在、そんな安価な案件があるだろうか。今は、EBITDA乗数8倍でも割安である。

M&Aの本質は何か、と聞かれることがある。難しい回答はできるが、馬鹿馬鹿しいほどとても単純なことだとも思う。それは、よい案件であれば、売り手が強いということだ。

 

クロスボーダー案件で日本企業はM&Aはうまくない、失敗ばかりだ、といわれる。それは仕方ない。日本企業は、クロスボーダーでは多くの場合は買い手であるからだ(逆にいえば、売ることをあまり想定していないことが成功できない理由の一つである)。

売ることが上手い企業は売ることも上手だ、というのは論理的ではない。売るのはうまくて、買うのはへたくそ、という会社はいくらでもある。M&Aができるほどの会社は、利益が十分出ている-売ることはできている-であろうから、基本は売ることも上手である。ただし、買収では相当な確率で失敗する。買う方が難しいのである。これが、競争過多になれた日本企業にはわかりにくいことである。

 

RIZAPの稀有さは、マーケティングがあれほど上手にもかかわらず、買う方も上手いことにある。買い手になったときに失敗しないようにしよう、これは皆が考えることだ。それができない。割高で買ってしまう会社がどうしても多い中で、RIZAPは買物が上手である。売ることがうまい会社で、買うこともうまい、RIZAPグループは侮れない。

 


RIZAPグループが、5月23日、和装品などを手掛ける、東証2部上場の堀田丸正と資本業務提携すると発表した。堀田丸正が実施する第三者割当増資を引き受け、子会社化する。RIZAPというとテレビコマーシャルでの、肉体改造のフィットネスジム/健康産業のイメージが強いものの、アパレル企業への出資はジーンズメイトなど上場・非上場を合わせて7社目であり、アパレル事業の割合も高い。今回の堀田丸正の買収は、強化するアパレル事業の商品ラインアップの拡充につなげる。

 

RIZAPグループは、堀田丸正が新たに発行する3500万株を約19億円で引き受け、増資後の保有株比率は議決権ベースで62.27%となる。

 

堀田丸正はRIZAPグループのもとで製品の企画や生産から販売まで一貫して手掛けるSPA(製造小売り)の事業モデルを推進する。PB商品の開発を強化するほか、海外展開も進めるとある。

 

RIZAPグループが提示した増資価格は、55円/株という。2017年5月22日の堀田丸正の終値は120円であり、54.17%のディスカウントであり、これは通常の幅を超えている。5月23日の堀田丸正の資本提携に係るプレスリリースには、その経緯などが記載されている。55円/株の提示に対して、堀田丸正側は市場株価までの増額を試みた、ということであるが、RIZAP側がまったく応じなかった点が記載されている。

 

東証2部は取引量が少ないとはいえ、市場価値のある、上場企業である。日本の代表的企業の東芝も、しばらくは東証2部である。


繰り返しとなるが、RIZAPはM&Aが上手い。

「2017年3月期決算説明会」資料(2017年5月17日付)では、従来赤字だったアパレル事業を含めて全事業で黒字化したことが示され、特に特徴的なのは、営業利益102億円のうち、「M&Aによる割安購入益」が58億円を占め、本業の営業利益64億円に近い水準となっていることである。RIZAPは近年買収した、夢展望及びジーンズメイト(合算で9.8億円の営業赤字)からどちらも黒字(合算で10.8億円の営業黒字)化に成功している。黒字化に成功したのは、割安で買収したからである。言うは易しだが、これは相当に難しいことである。

 

RIZAPでは、なぜそんなことができるのか。

 

堀田丸正側も、本来の潜在力の活かせない、成長しきれないもどかしさ、停滞感を感じていたはずだ、事業運営に不安があり、また、若干無理をしても成長したい、という気持ちは自然である。だからこそ、今回の割安の条件を引き受けたとしかいえない。

 

RIZAPグループは、相当に人間というものを分かっている企業なのかも知れない。ヤマノグループとしてもよい相手を見つけたようだ。

 

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  • 「ユニークなRIZAPによる堀田丸正の第三者割当増資引受け」

    金子博人

    弁護士

    金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所) 事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。

  • 「RIZAPグループの「堀田丸正」子会社化について」

    坂元 英峰

    弁護士

    平成8年京都大学法学部卒、平成10年京都大学大学院法学研究科卒。 平成12年4月弁護士登録。平成17年6月税理士登録。日系企業のアジア進出支援に定評のある弁護士法人マーキュリー・ジェネラルの代表パートナー。 国内外の企業法務、M&A、事業再生等に豊富な経験を有し、社外役員を務める会社も多数あり、各分野に関する講演歴等も多数にのぼる。