» ソフトバンクM&Aの歴史とARMの買収

テーマソフトバンクグループによる英ARM社の買収

2016年7月18日、ソフトバンクグループによる英国のARM Holdings plcの買収に関するリリースが発表されました。

その買収総額は約240億ポンド、当時レートで約3.3兆円と、M&A自体の目的以上に、その巨額な買収金額に多くの注目が集まりました。

「ソフトバンクM&Aの歴史とARMの買収」

2016年11月1日
照井 久雄

中小企業診断士
インクグロウ株式会社 取締役 事業戦略部長 中小企業診断士 1978年7月生まれ 経営コンサルタントとして提携フランチャイズ本部の立ち上げをした後、証券会社で公開引受業務や中堅中小企業の資金調達の支援を行う。 その後、中小企業を中心としたM&A業務に従事し、2013年にインクグロウ株式会社に入社。現職として数多くのM&Aを成功に導く。

今回のM&Aを考える前に、まず、ソフトバンクのM&Aの歴史を振り返りたいと思う。

ソフトバンクは1981年日本ソフトバンクとして設立。

設立当時、「30年後には豆腐を数えるように売上を1兆2兆と数える会社にする」と、孫正義氏が社員を前に話していたことは有名な逸話である。1994年にはアメリカへ進出しインターネット時代を切り開いていく覚悟であったという。

インターネット業界で成功していくためには、地図とコンパスが必要ということで、ここでM&Aを行う。コンパスとなるものは、コンピューターの展示会をしている「コムデックス社」、地図としては、IT出版企業であった「ジフデービス」をそれぞれ買収した。この時のM&Aも当時のソフトバンクの時価総額を超える金額でのM&Aであった。そしてその地図とコンパスによって取得することができたのが「yahoo」である。まだ社員数が数名の会社に出資をした。そしてこれが大きく成長に寄与したことは、皆が衆知のことであると思う。

その後、2006年には、当時の日本最大の買収金額であった2兆円にて、ボーダフォンの日本法人を買収。Apple社の当時のCEOであったスティーブ・ジョブスに直談判してiphoneの販売を日本で最初に開始。飛躍的に携帯電話の契約者数を増やしていった。その後、アメリカの通信会社であるスプリント社を買収。そして、今回のARM社の買収とつながってくる。また、その間にはアリババへの出資なども行っている。

 

2010年に販売されたソフトバンク新30年ビジョンの中で孫正義はこのように語っている。

「迷ったときほど遠くを見よ。

30年後のテクノロジーはどこまで進んでいるのだろうか。

人々のライフスタイルはどのように変わっているのだろうか。

想像するとなかなかわかりません。

人によってさまざまな見方があり、わかりにくい。

そのようなわからないときこそ、なおさらもっと遠くを見るべきなのです。

もっと遠くを見ると景色がより鮮明に見えてくる。

逆に、近くを見れば見るほど船酔いする。

近くを見れば見るほどいろいろなあらが見えてくる。

でも遠くまで見てよく考えてみると、実はそんなものは誤差にすぎなかったという事がわかります。」

 

ソフトバンクのM&Aの歴史を見ているとまさに、この考えに則り、先をよみM&Aをしてきたのだろうと思われる。

 

さて、そこで、今回のARM社のM&Aをみてみる。

 

ソフトバンクがARM社の買収を発表したのは、2016年7月18日であった。普通この規模のM&Aを行うとすると、1年がかりで検討し、意思決定していくというのが普通の企業である。しかし、孫正義氏によると、その買収の提案は、発表の2週間前にトルコにARMの会長がヨットで休暇をとっているときに電話し「会いたい」と。では近くの港にいるということで、当時テロなどもあったトルコにすぐに行き、プロポーズしたと語っている。その後2週間でDDや必要な手続きを行い、発表までこぎつけた。

驚くべきスピードであり、逆にだからこそ、現在のソフトバンクを一代で築いてきたのだろうと思う。ただし、ARM社については、10年ほど前から興味を持ち、自社に組み入れたいと考えていたということであるから、その期間があったからこそ、迅速な意思決定ができたのだとも思う。そして、30年後を考えた際に孫正義氏には明確にこの企業の未来像が見えているのだと思う。

 

M&Aでこの「意思決定スピード」というのは非常に重要である。この意思決定スピードが遅いと、コンペティターが出てきて、買収そのものが難しくなったりすることも少なくない。

これは、中小企業のM&Aなどでも同じことがいえる。一度行うと決めたら素早い決断が重要となり、そのために、裏付けであるDDを迅速に行うことが大事である。

 

最後に、先ほどの著書に「2010年から30年後について、時価総額200兆円くらいになっていないといけないのではないかと思っている」と語っている。2016年10月20日時点の時価総額が約8兆円程度であるので、その25倍くらいまで成長させるといってます。

その著書の中で、「私はやるつもりです。今まで『やる』といったことは大概やってきております。やると心に決めたことは、短期の事は少しずれたりしますが、長期の願いごとでやると決めた事でやれなかった事はほとんどなかったと、自負しています。色々な山あり谷ありで危機もありましたが、ここまでやってきました。ですから、これは大ぼらですけど、いい加減な大ぼらじゃない。本気でやる大ぼらなのです。」

と語っている。非常に楽しみである。

 

参照文献:ソフトバンク新30年ビジョン

その他専門家コラム

  • 「3.3兆円は高いか? ― 現代と未来の調査現場から」

    小黒健三

    公認会計士

    小黒健三 やまと監査法人パートナー 専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。

  • 「ソフトバンクの英アーム買収は無謀ではない!」

    金子博人

    弁護士

    金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所) 事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。