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2016.11.16

RIZAPグループのM&A戦略

2016.11.16

RIZAPグループはM&Aで急成長を実現する

中原 陸
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「結果にコミットする」というインパクトのあるフレーズと、それを分かりやすく表現したCMで一躍注目を浴びた、完全個室のプライベートジム「RIZAP」。その運営会社の親であるRIZAPグループ(旧健康コーポレーションから2016年7月に商号変更)は、RIZAP事業に負けじと、積極的なM&Aを通じてグループ全体を急成長させています。

2017年2月21日追記:2017年2月13日に発表された「ぱど」の買収を含めると、グループ44社の複合企業になります。

RIZAPグループのM&A変遷

以下にて、平成28年に同社で実施したM&Aを時系列にてご紹介します。
平成28年7月:体型補正下着の販売を手掛けるマルコ株式会社(売上約135億円)による約14億円の第三者割当増資を引き受けて子会社化。
平成28年5月:インテリア雑貨を販売する株式会社パスポート(売上約101億円)による約11億円の第三者割当増資を引き受けて子会社化。
平成28年5月:美容・ヘルスケア分野に係る予約サイト事業を営む株式会社エンパワープレミアムの株式50%を45百万円で取得して子会社化。
平成28年4月:婦人服・服飾雑貨の企画・製造・販売を手掛ける株式会社三鈴(売上約48億円)の株式100%を約4.5億円で取得して子会社化。
平成28年3月:書籍・雑誌の出版及び販売を手掛ける株式会社日本文芸社(売上約42億円)の株式100%を約20億円で取得して子会社化。
平成28年2月:注文住宅やリフォームを手掛ける株式会社タツミプランニング(売上約95億円)の株式192株(議決権所有割合96%)を約25億円で取得して子会社化。

平成28年だけで既に6件ものM&Aを手掛けており、これによってグループの連結売上高を約421億円(株式会社エンパワープレミアムの売上は非公表のため含まない)押し上げていることになります。これは29年3月期の売上計画1000億円の4割以上を占めます。

平成24年度以降、同グループの連結売上高は約134億円、約178億円、約239億円、約390億円、約554億円と推移し、目を見張るような成長を実現してきていますが、昨年度まではM&Aは行いつつも、主力事業であるRIZAPが成長をけん引している状態でした。しかし、2015年に発表した「COMMIT2020」という新中期経営計画の達成に向け、その中間目標となる2016年の売上高1000億円を実現するために、RIZAPだけに依存しないグループ全体としての成長戦略に舵を切ったことが見て取れます。今年実施したM&Aがそれぞれ今後どのようにグループ内シナジーを生み出していくのか?そして、更なるシナジーを求めてどのようなM&Aを今後実施していくのか?が注目すべきところとなります。

実施済みのM&Aから紐解くRIZAPグループの強み

さて、同社発表の決算説明資料や各M&Aに関するリリースを読み解いていくと、同社の方針が見えてきます。興味深く感じたこととしては、RIZAPで保有する約80の店舗網、並びに約400万人という顧客網を活用した展開ではなく、同社の広告宣伝力・マーケティング力を活用したシナジーを主眼においていることです。即ち、同社では自社の強みを広告宣伝力・マーケティング力と捉えているということです。400万人もの顧客網や、プライベートジムという個々のお客様と密度の濃い接点が持てる事業を展開しているとすれば、一般的にはそれを自社の一番の強みとしてとらえ、そのニーズに合わせた新商材を開発・提案し、顧客単価を上げていくという方向に舵を取りそうなものですが、そこに主眼を置かないところに、同社の「軸」と強い成長意欲を感じます。

成長していくと、過信や読み違いによって自社の本当の強みを見誤ることがあります。すると、成長過程にある分、積極的な投資が裏目に出てしまい、瞬く間に転落していくという姿を少なからず目にしてきました。同社は健康食品の通信販売からスタートした会社であり、「エステナード」や「どろあわわ」といった美容関連商材をトップシェアで販売してきた実績を持ちます。この頃から自社の強みは広告宣伝力と認識し、RIZAPもそれで今があると認識されているのだと思います。

また、既存顧客へ新商材を販売していくことの方が新たに顧客を開拓するよりも一般的に容易ではありますが、一方で顧客単価を倍にすることは簡単ではありませんので、倍々で成長させていこうと思うと、どうしても新市場の開拓が必要となります。同社がM&Aを通じて新市場の開拓に挑戦していることから、強い成長意欲、即ち「COMMIT2020」への本気度が見て取れます。

先にご紹介した今年のM&Aを通じて、補正下着、インテリア雑貨、婦人服・服飾雑貨、書籍・雑誌、注文住宅・リフォームという新たな商材を手に入れています。同社の広告宣伝力・マーケティング力を活かしつつ、更に既存事業とのシナジーを発揮しながら、どのようにしてこれまで以上の成長を実現するのか、注目していきたいと思います。

追記:2017年1月18日 「RIZAPのジーンズメイト買収を、そのM&A戦略から紐解く」

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