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テーマM&Aに成功している企業はどこ?

「M&Aで成功している企業はどこか?」

M&Aが活発になっているというのはよく言われることですが、実際に成功している企業はどこでしょうか。

各分野の専門家がそれぞれの視点で紹介させていただきます。

 

 

「M&Aでもっとも成功している企業」

2016年11月23日
川井隆史

公認会計士
当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

はじめに

M&Aにおいて買収価額が割高だとか話題になることは多い。いきなり暴論に聞こえるかもしれないが、株式市場の投資家などにとって当然買収価額は非常に重要な論点だが、経営者にとっては後述するアセット型(資産獲得型)を除くとさほど重要な事項ではないかもしれない。したがって、私見ではあるが決してM&Aで成功している企業というのは安く買いたたいて買収するようなハゲタカ系企業ではない。

少し前、海外の同業他社を買収したある企業の担当者と話をしたことがあったが、この担当者はきちんと大手の会計事務所と弁護士事務所にデューデリジェンスをしてもらって妥当な価値評価をしているから大丈夫と胸を張っていた。M&Aは単に価値評価をして価格交渉して企業を買ってくるものだと思っている日本企業が少なからず存在し、痛い目に合っている。なぜこのようなM&Aは失敗するのかも反面教師として見ていきたい。

 

成功したM&Aとは

まず成功したM&Aとはどんな事象を指すのか明らかにしておきたい。別に定まった定義などはないが買収を行った結果その企業グループの価値向上に貢献したということがいえるのではないだろうか。ここでは短期的に株価時価総額が高くなったとかではなく、その被買収会社の直接間接の貢献で企業グループの利益があがることを指すと定義づけさせていただきたい。日本では日本電産などが名高いが、グローバルにみるとGE(General Electric) が名高いことは疑う余地はないだろう。幸い私は日米においてGEの買収部隊の一員として従事していたことがあり、それを踏まえて成功要因を探っていきたい。

 

財務デューデリおよび事業の価値評価の重要性は無視できるものではないが私の専門領域は後述するセールス型(営業型)M&AにおけるPMI(買収後統合)をにらんだビジネスデューデリなのでその視点で書かれてことに注意いただきたい

 

M&Aのタイプ

私見ではあるが以下のタイプがあると考えている。必ずしも完全にわかれるものではなく、以下のセールス型にアセット型の要素がはいったハイブリットなタイプなども当然あるわけだが、どの要素が主要なファクターかということでのタイプ分けである。

 

・アセット型(資産獲得型)

 

・ビジネス型

‐戦略型(経営企画型)

‐セールス型(営業型)

 

アセット型はブランド名や特許・ノウハウなどの無形資産、店舗網・工場などの有形資産を獲得することが主たる目的なM&Aである。極端な話、企業文化や人材は付随物であり興味がないというタイプである。このケースの場合、価値評価は非常に重要である一方、PMI(買収後統合)は単なる遊休資産の売却や人員整理などリストラが主になり統合は実質的には不要である。ただ、この分野で継続的に成功している企業について私は寡聞にして存じ上げないのでここではこの程度にとどめたい。

 

ビジネス型

戦略型(経営企画型)

ビジネス型においては被買収企業のビジネスは存続して買収企業の価値向上に貢献する。そのなか戦略型というのは基本的にトップダウンで戦略的見地から現在グループでは手掛けていない新たな事業を買収するタイプである。「経営企画型」と書くと経営企画部門が主導すると誤解するが彼らが行うのは経営者の構想を可視化(数値化、図表化)して役員会や投資家等に理解をしてもらうことで基本的には経営者主導である。私は個人的にはこれは天才の行うM&Aでありこれの成功・失敗について事前に論じるのは難しく、私が論ずるレベルのはるか上を行っていると思っている。ソフトバンクの日本のボーダーフォンやアーム買収は典型的な例で天才が行うディールである。一方一般的なサラリーマン経営者が行うと全く制御不能で痛い目にあうことが多い。典型的な例としてパナソニックが行ったハリウッドの総合エンターテイメントグループMCAの買収があげられよう。1990年に買収したものの経営方針が全くかみ合わず、5年後にはほぼたたき売り状態で1600億の損失を出してカナダのシーグラムに売却する羽目になっている。

実はGEのCEOジャック・ウェルチも大口の案件としては2度ほどこの戦略型のM&Aをやっている。メディア事業のNBC買収は成功を収めたものの投資銀行キダーピーポディ買収ではGEの歴史に残る大失敗となった。言い換えるとジャック・ウェルチでさえ大失敗をするほど難易度は高いわけである。

要するにトップの能力に依存するのでトップの力量がある企業のみがこの手のディールを成功させることができるという何とも言えない結論となる。

 

 セールス型(営業型)

実はGEの買収はこのセールス型(営業型)が非常に巧みなところがある。なぜセールス型(営業型)と呼ぶかというと特にGEにおいては以下の考え方になるからである。営業とは基本的に1件1件顧客を獲得していく活動であるが、M&Aは投網で掬うように一気に顧客ベースを拡大する広い意味での営業活動と考えているからである。このセールス型(営業型)では買収したビジネスはほぼ完全に従前から持っていたビジネスと統合する必要がありGEにおけるM&Aはこの型が多い。戦略型の場合、被買収会社は比較的自律的にビジネスを進めていくケースが多いが、このケースの場合はほぼ完全に統合して買収会社の経営方針に従ってもらう形となる。特にデータを取っているわけではないがM&Aで一番多いタイプはこのタイプではないだろうか。

このタイプのM&Aの成功の秘訣としてはM&Aに習熟したチームの存在と、PMIを念頭に置いたデューデリジェンスがあげられる。カスをつかまされるのは問題だが、価格を買いたたくことよりもテコ入れしてビジネスの将来価値を上げる方がはるかに大切である。なぜこの分野でGEが強さを発揮しているかの詳細については次回以降で述べていきたい。

 

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    家永勲

    弁護士

    家永 勲 弁護士法人ALG&Associates パートナー・弁護士 東京弁護士会所属 上場企業が手がけるM&Aにおける法務DDの責任者として対応するほか、会社法を活用した買収目的に適したスキームの策定等も実践し、M&Aに関わる法務問題を幅広く取り扱っている。 企業法務におけるトラブルへの対応とその予防策に関するセミナーのほかストレスチェックやマイナンバーなど最新の法改正に即したセミナーや執筆も多数行っている。

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    平川智章

    M&Aアドバイザー

    インクグロウ株式会社 事業戦略部 サブマネージャー M&Aシニアエキスパート 1984年1月生まれ 新卒で入社した会社で中小企業の販路拡大支援業務、フランチャイズの法人営業業務を行う。その後、グループより独立したインクグロウに転籍し、中小企業を中心としたM&A仲介業務を行っている。 北海道東北、関東、関西、東海など全国の企業から依頼を受け、M&A仲介業務を行っている。