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テーマ日産自動車と三菱自動車のM&A

2016年5月、三菱自動車を日産自動車が傘下に加えました。

当時の三菱自動車はデータ不正問題に揺れており、また日産自動車の出資金額も2,300億円と巨額になったことから、日本はもとより世界にも大きなインパクトを与えました。

このM&Aは具体的にはどんな手法が用いられたのか、この買収にはどんな意味があるのか、これから日本の自動車産業はどこへ向かっていくのか。

プロの視点で解説をしていきます。

「日産自動車と三菱自動車のM&Aについて」

2016年11月30日
照井 久雄

中小企業診断士
インクグロウ株式会社 取締役 事業戦略部長 中小企業診断士 1978年7月生まれ 経営コンサルタントとして提携フランチャイズ本部の立ち上げをした後、証券会社で公開引受業務や中堅中小企業の資金調達の支援を行う。 その後、中小企業を中心としたM&A業務に従事し、2013年にインクグロウ株式会社に入社。現職として数多くのM&Aを成功に導く。

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区 社長:カルロス ゴーン)は20日、三菱自動車の発行済み株式の34%を取得し、三菱自動車の筆頭株主となったと発表しました。また、同時に、日産は三菱自動車の取締役候補として、次期会長候補に選出されたゴーンを含む4名を推薦しました。

取締役人事についてs_gwe0dlvd9e0-benjamin-child

来る12月14日の臨時株主総会を開催し、三菱自動車の役員構成は、取締役のうち3名が退任、4名が残り、新たに、日産自動車側から4名の取締役が招聘されました。また、会長には、カルロス・ゴーンが就任する予定であります。

このように、M&Aを実施した場合には、取締役人事を最初に考えることが重要となります。これは、中小企業のM&Aでも同様です。当然のことながら、株主総会で決議するべきことを除き、会社の運営の重要な意思決定については、取締役会で決定することなので、その取締役会を掌握するということが重要となります。今回のM&Aでもまさに、カルロス・ゴーンが

代表取締役会長となり、ほか、3名の日産側の取締役を招聘することにより、常勤の三菱系の取締役4名と人数的に拮抗する形となります。これにより、取締役会をある一定掌握できることとなります。また一方で、今までの事業運営を維持するために、全部の取締役を交代することにもリスクがあります。そのような意味では、社長は変更せずにサポートする形でシナジー効果を発揮するような人事となってます。

こちらも、中小企業のM&Aでもよくある事例でして、社長などを残し、そこをサポートする形でさらに事業を大きくするという形です。このようにM&Aを行うことで現場に負担や不安がなく、新体制の移行がスムーズにいくことが出来ます。

一方で、改革を行おうとすると、現経営陣だけであるとどうしてもしがらみが発生してしまいます。そのしがらみを解き、成長路線にもっていくことが

新経営陣には求められることでもあります。

 

125-1株式のシェア率について

今回のM&Aでは、株式シェア率が、34%となっております。

M&Aを行う際には、それぞれ、100%、67%、51%、34%というのがそれぞれに意味を持つことになります。

100%シェアについては、文字通り完全に所有することになります。67%シェアを保有すれば、株主総会の特別決議を決裁することができます。51%シェアを保有すれば、株主総会の普通決議を決裁することができます。今回のように34%保有となれば、特別決議の決裁を否認することが出来ます。このように、M&Aを行う際の株式のシェア率というのはそれぞれに、非常に重要な意味があり、戦略的に取得するシェアを検討する必要があります。

これも上記取締役の招聘と同様、中小企業のM&Aでも非常に重要な観点となります。

参考までに、

主な特別決議で決議すること

新株の発行、監査役の解任、定款の変更、事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、解散、組織再編行為など

主な普通決議で決議すること

取締役の選任や解任、その報酬決定、剰余金の配当など

があげられます。

 

自動車業界の今後 z5criqvzkus-maria-soledad

最後に、今後の自動車業界について考えていきたいと思います。現在の自動車業界の販売台数トップ5は以下のようになっております。(2015年1月から12月)

1位トヨタ 1015万1000台

2位フォルクスワーゲングループ 993万台

3位GM 984万台

4位ルノー日産アライアンス 852万8000台

5位現代自動車グループ 776万台

今回、ルノー日産アライアンスグループに三菱自動車が加わると、約959万台になり、1位のトヨタから4位のルノー日産アライアンスグループが拮抗した状態となります。また日産自動車の強みでもある、EVなどを三菱自動車に技術供与していくことにより、東南アジアに強い三菱自動車の生産、販売などが伸びる可能性もあります。また、コストカッターとしても知られるカルロスゴーンが、三菱自動車の無駄なコストをカットすることや、今までの体質を改革することでさらに強い三菱自動車が生まれる可能性もあります。今後、この両社がどのように発展していくのか非常に楽しみでもあります。

 

 

その他専門家コラム

  • 「日産と三菱自動車のM&Aについて」

    吉村史明

    公認会計士

    吉村 史明 北海道出身。一橋大学(商学部経営学科)卒。 平成3年公認会計士2次試験合格後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所。金融商品取引法監査、会社法監査並びに株式公開支援業務に従事。平成7年公認会計士登録。平成12年監査法人退所後、公開準備会社に転職。公開業務終了後、独立。 現在は、税理士法人 AKJパートナーズにて、M&Aに関わる企業デューデリジェンス・組織再編・税務、不動産投資コンサルティングに従事。

  • 「三菱自動車と日産自動車 資本提携の行方」

    中野友貴

    弁護士

    クレア法律事務所所属弁護士。 2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。 著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。