プロコメ

2016.11.30

日産自動車と三菱自動車のM&A

2016.11.30

三菱自動車と日産自動車 資本提携の行方

中野友貴
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資本提携手続きの完了

2016年10月20日、日産自動車と三菱自動車の資本提携手続きが正式に完了したことが発表されました。発表によると、日産自動車が2373億円を出資し、三菱自動車の第三者割当増資を引き受け、三菱自動車株式の34%を取得したとのことです。これにより、三菱自動車は、日産自動車の傘下に入りました。

34%の株式の取得の意義は?

株主総会の決議には、普通決議と特別決議などがあります。普通決議は、役員の選任などを行う決議であり、株主の議決権の過半数の賛成をもって行う決議です。特別決議は、定款の変更などを行う決議であり、株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって行う決議です。三菱グループが17%の株式を保有する一方、日産自動車が34%の株式を取得して筆頭株主になります。日産自動車は、3分の1以上の割合の株式を保有することになりますので、単独で特別決議の成立を阻止することができるようになります。これにより、日産自動車は、株主としての立場によって、三菱自動車の経営に強い影響力を持つことができます。

三菱自動車の燃費不正問題という背景

2016年4月20日、三菱自動車は、軽自動車4車種について、燃費試験のデータを不正に操作し、燃費データを良く見せるという不正を行っていたことを発表しました。また、その後の調査の結果、過去10年間で販売した29車種について不正があったことが判明しました。このような三菱自動車の燃費不正問題が明るみに出る中で、2016年5月に資本提携が基本合意に達したことが発表され、10月20日に手続きが完了することになりました。一般に、このような不正が発覚している企業と資本提携を行う場合、思わぬ損失を被ることが予想されます。

もちろん、このような損失を被ることがないように、一般に、資本提携を行う際には、デューデリジェンスという手続きを経ます。デューデリジェンスとは、専門家等を活用して、相手方企業を調査する手続きをいいます。出資者は、デューデリジェンスを行って、相手方の事業や財務、法務において問題点がないか、あるとすればどのような問題点があるのかを把握します。デューデリジェンスで問題が発覚した場合、最終合意の締結から撤退することを検討したり、最終合意において発覚した問題点を踏まえた契約を締結したりすることになります。

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資本提携の目的は?

今回の資本提携では、資本提携の手続きが完了したので、日産自動車としては、このようなデューデリジェンスを経たうえで、資本提携を行うべきであるという決定を行ったことになります。燃費不正問題の存在や資本提携に伴う費用の支出など、日産自動車には一定のリスクがあることは否めませんので、日産自動車には、それを超える資本提携のメリットが必要になります。一般に、M&Aを行う目的としては、販路や顧客の拡大や、生産拠点の取得、仕入れ・販売コストの低減、技術力の強化、市場支配率の向上、信用や知名度の獲得、人脈・人材の強化などといったシナジーの獲得が挙げられます。

今回の資本提携についても、日産のカルロス・ゴーン氏は、①部品の購買や生産拠点の共有化、②プラットフォーム(車台)の共用、③新技術(自動運転技術、環境対応車など)の開発の協業、④三菱自動車が強みを持つ東南アジアでの販路拡大、⑤三菱自動車の得意分野(SUVやプラグインハイブリッド)の活用などのシナジーを挙げて、今後の提携によるメリットを説明しています。

両者のこれまでの関係は、三菱自動車による日産自動車への小型車のOEM(相手方ブランドの製造)供給や、2015年に三菱自動車と日産自動車、NMKV社(三菱と日産で設立したジョイントベンチャー)間で次期型軽自動車の開発・企画等の提携合意など、緊密な関係にありました。今回の資本提携についても、このような関係性を踏まえたシナジーの拡大を目指されるものでしょう。

今後の自動車業界を映す鏡か?

これらのシナジーがどのように実現されるのかについては、未知数ではあります。しかし、今後の自動車業界は、IoT化や電動化、自動運転化など先端技術の活用が必須になることによりコストが増大することが予想される一方で、シェアリングエコノミーの台頭などにより需要が低減する恐れもはらんでいます。このような今後の自動車業界を踏まえると、日産自動車としても三菱自動車としても1社の規模では、今後の業界の変動に対応できない可能性があり、今回の提携は、そのような業界の変動を映す好例ともいえるのではないでしょうか。

日産自動車と三菱自動車の提携がどの様に進んでいくのかのみならず、自動車業界の変動にも注目していきたいと考えます。

以上

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