プロコメ

2016.12.7

鴻海(ホンハイ)によるシャープ買収について

2016.12.7

鴻海(ホンハイ)は本当に大規模な人員削減をするのか?

中原 陸
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何故人員削減が話題に上がるのか?

M&Aにおいて、譲渡対象企業の従業員の取り扱いはとても繊細でかつ重大な問題です。今年8月にシャープへ3,888億円の出資を完了させて同社議決権の約66%を取得し、グループ傘下に入れた鴻海(ホンハイ)ですが、当時より7,000人規模の人員削減を行うという噂が飛び交っており、その動向が注目されます。

譲渡の理由や譲渡時の企業の状態によって、引き受ける企業の対処は当然にして変わります。財務健全な優秀な会社を買収したとすれば、それを実現しているのは今の経営陣と社員ですから、そこにむやみに引き受け企業が手を加えようものなら、逆に状態が悪化してしまいかねません。例えば、外食でM&Aを通じた成長が目覚ましいクリエイト・レストランツ・ホールディングスは、連邦経営をうたい、優秀な企業を経営者ともどもグループ傘下に収めます。そして、同社の大手企業ならではの経営資源を提供することで、各経営者の手腕をフルに発揮してもらい、これまで以上の成長を実現させる、という考え方です。M&Aから僅か1年程度でのスピード上場となった磯丸水産を展開するSFPダイニングはその顕著な成功事例でした。

さて、一方で業績が悪化している企業の買収となると、引き受け手としては当然その企業の改革・改善に着手しないといけません。業績悪化をもたらしたのは現経営者ですから、現経営者がそのまま引き継がれることは稀です。そして、収支を改善するために従業員の人員削減が検討されることがあります。果たしてシャープは7,000人規模の人員削減を行うのでしょうか。

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人員削減のメリットとデメリット

メリットは人件費削減~大企業におけるその効果は絶大~

人員削減によるまず一番のメリットは人件費削減です。シャープの平均年収は700万円超のようですが、仮に7,000人の人員削減が行われると、年間約500億円もの人件費削減となります。2016年3月期のシャープの決算は約1,619億円の赤字ですから、この人件費削減によって赤字の約3分の1を打ち消すことができるだけのインパクトがあります。尚且つこれは単発の削減ではなく、同じ人件費水準を維持する限り効果が持続することになります。仮に10年維持したとすれば5,000億円ものコスト削減効果に繋がることとなります。

デメリットは人材流出~優秀な人間ほど流出しやすい~

一方でデメリットとしては、優秀な人材が流出してしまう、ということが一番に考えられます。シャープは2011年より構造的な収支悪化に苦しんでおり、約3,760億円もの最終赤字を出した2012年と約2,223億円の最終赤字を出した2015年にそれぞれ約3,000人ずつの人員削減をすでに行っています。また、業績回復の見通しがなかなか立たないことや、今回のM&Aの話も影響して自主退職の人間も増え、2012年3月期(人員削減前)の従業員数は約5万7千人でしたが、2016年3月期においては約4万3千人まで減っています。即ち僅か4年で人員が4分の1減ってしまったことになります。この退職した約1万4千人の中に、たくさんの優秀な人間がいたであろうことは想像に難くありません

実際、シャープから日本電産、ジャパンディスプレイやサムスンなどへの転職があると言われており、液晶産業の主要プレイヤーであるシャープですから、優秀な人材は引く手あまたの状態となっている可能性があります。そのような環境下で、希望退職が選択肢として提示されれば、優秀な人材の転職への後押しになってしまいかねません。

鴻海としてはシャープの業績改善のためにあらゆる手段を講じている最中と思われます。人員削減は基本的には最終手段として考えることであり、尚且つもし実施するとすれば僅か5年程度の期間で3回目となりますから、上記のデメリットを飲み込んででもとにかくコストを抑えないといけないという、余程厳しい状態に置かれていることの表れだと読み取れます。

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整理解雇の手順

従業員の権利は法で守られているため、会社の業績が悪くなったから簡単に解雇というわけにはいきません。判例としては、整理解雇には以下の4手順が必要と言われており、大手企業は2つ目の手順の「解雇回避努力」に当たる、「希望退職」を募って人員削減するのが一般的と言えます。

1.整理解雇の必要性
2.解雇回避努力義務
3.被解雇者選定の合理性
4.説明、協議義務

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