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2016.12.7

鴻海(ホンハイ)によるシャープ買収について

2016.12.7

シャープと鴻海のM&Aについて

漆山伸一
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ホンハイ精密工業とは?

この会社の名前を皆さんご存知でしょうか? 言わずもがな、2016年にシャープ株式会社を買収した台湾の世界最大電子機器製造受託メーカーです。知りませんよね、少し紹介します。

ホンハイ精密工業は中華民国(台湾)に本社を置き、2005年には台湾中油を抜いて台湾一の売上額の企業となりました。2015年12月期の連結売上高は約16兆円にも及びます。郭会長が、町工場から1代で築き上げました。自社ブランドを持たず、下請けとして、電子機器の組み立てを行っています。一番の取り引き先は、アメリカのアップル。世界の名だたる企業の製品を組み立てています

シャープは7年前、自社ブランドの大型液晶テレビを製造・販売しようと世界最大規模の液晶ディスプレー工場(大阪・堺)を稼働させました。しかし、韓国勢との価格競争に敗れ、巨額の赤字を計上しました。この経営危機をきっかけに、ホンハイは5年前からシャープが建てた堺工場を共同経営しています。
ホンハイは組立てにあたり、ディスプレーなど、多くの部品メーカーと取り引きしています。今後、ディスプレーは、あらゆる電子機器に使われると見ており、自社開発できればさらに高い利益を得ることができると確信していました。そのために、シャープの技術を手に入れたいと考えていました。そこでシャープの買収にも自信をのぞかせていました。まさに下請けメーカーが、発注元のメーカを買収する下剋上のM&Aです。

 ホンハイVS産業革新機構

しかし当初、買収交渉を有利に進めていたのは、日本の産業革新機構です。国と民間が出資する投資ファンドです。機構は、大手電機メーカー3社の液晶事業を統合して、ジャパンディスプレーを設立、そこにシャープを加えれば、世界トップシェアとなり、競争力を取り戻せると考えました。この“日の丸液晶連合”、シャープにとっても、国が後ろ盾となる魅力的な提案でした。機構の案は、シャープに3,000億円を出資するのと引き換えに、銀行側にも3,000億円余りの追加支援を求めるものでした。これに対して、ホンハイは6,000億円を超える資金を用意、銀行側には、一切の負担を求めないと説明し、銀行の同意を取り付けました。そして、“100年続いたシャープを、皆さんと一緒に再生させたいと宣言し、結果ホンハイは買収交渉の一番手に躍り出たのです。

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ホンハイによるシャープ“買収”の示唆

今日世界市場を相手にしないとメーカーは成り立たない

ホンハイによるシャープの力の逆転は、実は今に始まったことではなくもうとっくに起こっていました。ホンハイという名前は、日本では知れていませんが、国際的にはある意味、シャープよりも有名な企業です。なぜ、そういう力をつける企業が台湾、中国で出てきたか。多くのメーカーが製品の設計、開発、製造で一番付加価値が低いのは製造とか、組み立てと考え、この部分は下請けにすべて任せていました。しかも、日本はコストを安くするためにと、中国にこれを全部出しました。しかしこれを全部まとめると、とんでもないスケールになります。ビックスケールになると、それを作る力がノウハウとして蓄積されます。今大量生産するとしたら、世界の中ではホンハイなくては全く製品が行き渡らない状況になってきています。日本も全部、ホンハイに頼っているっていうこういう状態が生まれてしまっています。結果膨大な利益をもたらすことになるのです。

海外企業のM&Aにおける駆け引きのうまさ

ホンハイも最終的にはシャープの3,888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を握る筆頭株主となりました。シャープの業績悪化や将来負債となる恐れのある偶発債務を踏まえ、出資を当初予定の4,890億円から1,000億円程度減らしました。それなら当初の機構の金額とほぼ変わらない数字になります、これも手元資金の余裕がもたらした結果であろう。日本人もグローバルな視点から、M&Aにおける駆け引きを行い、ある意味卑怯と思われても契約を成就する、そのぐらいの気迫が必要です。

これは何も大企業だけの問題ではなく、中小企業にも当てはまることです。私どものクライアントでも、海外企業との交渉に負けて撤退をせざるを得ない企業が多々あります。交渉です、交渉、多分練習が必要ですね。日頃のビジネスで磨いていきましょう。私も含めて・・・

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