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2016.12.26

コロワイドがフレッシュネスバーガーを買収

2016.12.26

業界の厳しさはM&Aを求める

小黒健三
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義父の経営する地方の外食チェーンで勤務していた時期がある。年商30億円、地方でもそれなりの規模であり、ここでずっと働く気もあった。そんな甘い考えを見透かしていたのか、義父が言っていた言葉がある。「30年そのまま続く外食はない。それは無謀な挑戦だ。俺はやりたいけどね。」

周囲に似た店舗が乱立し、すぐに消えていった。彼は、経営が悪化した店舗の一部を買い上げ、再生する手腕で事業を拡大した。買収は、事業を続ける必要条件らしかった。本当に厳しい業界だと思った。

そんなに安いのか?

2016年12月1日、外食大手コロワイドがフレッシュネスを買収した。M&Aのニュースで最初に確認するのは買収価格であろう。新聞等の記事によると、数億円という。

数億円? 私は目を疑った。そんなに低いのか?

フレッシュネスバーガーは、創業が約25年前、大学生の頃、高級なハンバーグが出たなと思った。社会人になり、彼女が留学から一時帰国していたときに、「東京にもこんなバーガー屋があるよ。」と、自慢した。ジャンクフードらしかぬ、優しく、素材と健康への配慮。そこに都会を感じた。

そうした歴史、プレゼンス、150店を超える事業をもちながら、譲渡価格は都心の超高級マンション1戸と大差ないのか。

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収益力から見る

買収対価を3億円としよう。ネットデットなし、EBITDA乗数5倍とすると、年間6千万円が正常収益力となる。年商約50-60億円というからEBITDA利益率で1%。決して高い利益率ではない。負債があり収益は実はもう少しよいのかもしれないが、莫大な利益だったとは想定しにくい。

買収側のコロワイドはどうか。2016年11月発表の第2四半期短信から、IFRSベースでの2019年3月期通期の連結売上予想は2,403億円、営業利益は87億円。営業利益率で3%、EBITDA率で7-8%が目線になる。業界一位のゼンショーにしても、年間連結売上が5,000億円超に対し営業利益100億円、営業キャッシュフローで200億円程度だから、乱暴なベンチマークながら、こうみると優良な大手外食において営業利益率3-4%、EBITDA率でその倍、という感じかもしれない。

設備投資が常に必要な業態も考慮すると、日本の外食の利益率はやはり高いとはいえない。

M&Aが動くとき

外食は単価が低く、少しの環境変化で経営は悪化する。単価が落ちることも、その要因である。

ほんの数%の単価下落でも、多くの外食は厳しい状況になる。生き残りの規模拡大を目指さざるを得ず、提携や事業譲渡も視野に入る。その売却額の期待目線も落とすしかない。

外食では、買い手も高い対価は払えない。本件ではコロワイドも、既存のFCや、地域の事業基盤を使ったフレッシュネスの急速な事業展開など、シナジー戦略も比較的見えやすい。それでも、産業構造上、それは膨大な利益拡大を約束しないから、案件が低いことは外食でのM&A成立の前提になってくるのである。論理的に考えて、小売単価が下落したとき、外食のM&Aは最も起きやすい、となる。

サントリーがこの夏にファーストキッチンをウェンディ―ズ・ジャパンに売却した。サントリーはサブウェイも手放している。サントリーは、日本企業離れしたM&A巧者であり、それは外食の潮流を示唆している。つまり今、ファーストフードは再編の渦中にあり、しばらくそれは続くと断言できる。

日本マクドナルドは中国での食材問題もあり、低価格戦略に出た。そうした代表的なプレーヤーがその動きにでれば、周囲のプレーヤーも値上げは難しくなり、実質的に値下げの傾向となる。その状態は、業界にとって、ただでさえ多くない利益を打ち消すぐらいのインパクトがある。品質の高さに比して、日本の外食はあまりに安すぎるのである。その中でさらに低価格競争がきたら、どうなるだろうか。

だから、「そこに、そこだけにいてほしい」という私達の心とは裏腹に、外食は移動を繰り返す。

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