プロコメ

2017.2.8

元気寿司、シンガポールのフランチャイジーを子会社化

2017.2.8

『元気寿司、シンガポールのフランチャイジーを子会社化』に見る戦略

吉村史明
吉村史明 公認会計士 プロフィールを見る

東証1部上場の元気寿司㈱が、海外フランチャイズの相手方であるシンガポール現地法人を子会社化する旨、リリースしました。

2016年11月21日、東証1部上場の元気寿司㈱が、海外フランチャイズの相手方であるシンガポール現地法人を子会社化する旨、リリースしました。これは見てのとおり海外事業を強化する戦略であると言えます。元気寿司㈱は、中期事業計画で以下の目標を掲げています。

国内事業 139店舗 → 平成31年3月期に200店舗体制構築
海外事業 151店舗 → 平成31年3月期に250店舗体制構築

国内よりも海外に強い会社であるようです。

ここで、元気寿司㈱の直近のディスクローズ情報を見てみましょう。平成28年9月期の第2四半期報告書のセグメント情報を見てみると、以下のようになっています。

海外事業は、アメリカ以外はフランチャイズビジネスなので、フランチャイズ収入主体となり、売上高は少ない割に利益率は高いことになります。セグメント利益総額についても、海外事業の方が高いようです。
元気寿司㈱の海外151店舗の地域別構成は下記のとおりです。

  • 米国(子会社直営):17店舗
  • 中国(フランチャイズ):47店舗
  • 香港(フランチャイズ):73店舗
  • シンガポール(フランチャイズ):4店舗
  • その他のアジア(フランチャイズ):10店舗

ここで、4店舗しか展開していないシンガポールをあえて直営子会社としました。これは、今後東南アジア各国で海外店舗を増やしていく戦略であるものと考えます。日本企業が東南アジアで事業展開を試みる場合、シンガポールに地域統括会社を設立し、その下に各国に事業展開していく方法が一般的です。シンガポールに地域統括会社を置くメリットは以下のように言われております。

  • 英語が公用語であること
  • 政権が安定していること
  • 法制が安定していること
  • 治安が安定していること
  • 医療が充実していること

逆に言えば、他のアジア諸国の場合、以下のようなデメリットが指摘されております。

  • 政権が変わると許認可の審査がストップする(例えば最近のミャンマー)
  • 突然新しい法律が施行され、海外進出の際に想定していたスキームが使用できなくなる
  • 公用語が難しい(例えばタイ)
  • 役人が賄賂を要求してくる
  • 誘拐リスクがある

など

元気寿司㈱の展開している店舗は、いわゆる「回転寿司」ではありません。当社自身がサブのロゴで「回転しない寿司」という文言を使用しているぐらいです。

国内市場は、くら寿司、はま寿司、スシロー、かっぱ寿司など、いわゆる100円均一の回転寿司が世を席巻しています。100円の皿に2個乗っているので実際の単価は1個50円という驚異的な安さなのですが、機械を導入して人件費を抑えることにより、採算を合わせる戦略が功を奏しています。国内市場ではどうしても「回転寿司」が、「回転しない寿司」よりも優位に立っていると言えるでしょう。

その一方で、海外の場合は事情が違います。海外に店舗を作る場合、機械が故障した場合のメンテナンス体制などを構築することは容易ではありません。自然、機械の導入により人件費を抑制する戦略は取りづらくなり、「回転寿司」の優位性は国内市場に比較して薄まります。例えて言えば、海外に住んでいるリタイア組の富裕層が、暇つぶしのために全自動マージャン卓を購入したとしても、壊れたときに修理業者を呼べないので、結局手積みマージョンになってしまう、というのと同じ現象です。つまり海外市場は、「回転しない寿司」にとっては国内よりも戦いやすい市場であると言えます。

私は、元気寿司の海外展開を強化する戦略は、戦いやすい市場を選択して独自の経営基盤を確立するための妥当な戦略であると考えます。今後は、イギリスやオーストラリアでの店舗展開も考えているようです。

文責:税理士法人AKJパートナーズ
代表社員・公認会計士  吉村 史明

その他専門家コラム

最新のプロコメテーマ