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2017.3.1

売却株式の総額は100億円規模、ノバレーゼ創業者によるエグジット

2017.3.1

ノバレーゼ買収に見る特別支配株主の株式売渡請求制度

廣木康隆
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1 破格の公開買付価格

平成28年9月1日、投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ[1]が東商1部上場企業の株式会社ノバレーゼの株式について、TOB(株式公開買付)を行うと発表した。TOBがこのタイミングで実施されたこと自体も驚きではあったが、何よりも衝撃的だったのはそのTOB価格の高さであり[2]、なんと直近の株価の約2.4倍にも相当する1944円という価格だった[3]

TOB価格の高さもあり、結果としてポラリスはこのTOBによって93.28%の株式の買付に成功している。

2 破格の公開買付価格の効果

ポラリスがノバレーゼ株に1944円という高いプレミアムを付けた理由は、単に創業者との間で折り合いが付いた価格だったからかも知れないが、少なくとも高額プレミアムを付けた効果として、「特別支配株主の株式売渡請求制度」(会社法179条)を用いることによる、簡易且つ迅速な二段階買収(TOBによる株式取得=第一段階の買収を行い、その後完全子会社化を行う買収)の実現が可能となったことが挙げられる。

同制度は、平成26年の会社法改正によって新設された制度で、完全子会社化(スクイーズアウト)の手法の一つであるが、総株主の議決権の90%以上を有することが要件となっている。

ポラリスは、高いプレミアムを付けたことが功を奏して93.28%の株式の買付に成功し、特別支配株主の株式売渡請求制度を用いることが可能となった。そして、実際に同制度を用いて、TOBの発表から僅か3か月後の平成28年12月1日に完全子会社化を達成した[4]

3 特別支配株主の売渡請求制度の特徴

ポラリスは、買付株式の議決権が総株主の議決権の90%を下回る場合には、「株式の併合」による完全子会社化を予定していた。

しかし、「特別支配株主の売渡請求制度」の方が、株式の併合による完全子会社化と比べて、手続きが簡易(低コスト)であり迅速であるというメリットがある。「特別支配株主の売渡請求制度」の特徴は大きく2点ある。

第1は、株主総会決議が不要という点である。その結果、当然に、少数株主の株式を強制取得が実現するまでの期間が短くなるし、株主総会を開くコストも必要ない。一方、株式の併合の場合には、株主総会の特別決議が必要であるし、株式併合の効力発生後も端数株式の売却のための手続きが必要であり、強制取得実現までの期間が長くなり[5]、コストもより必要となる。

第2は、新株予約権も強制取得可能という点である。一方、株式の併合では、新株予約権を強制的に取得することはできず、後日、完全子会社の状態が失われてしまうおそれが残るし、その際にはまた完全子会社化のために期間とコストを要することになる。

4 このように、特別支配株主の売渡請求制度は、二段階買収の実現において他の制度にはない大きなメリットを有している。

同制度の利用において最大のネックは、言うまでもなく「総株主の議決権の90%以上」という要件であり、この要件の充足さえ確実なものとすれば、スムーズでコストもトラブルも少ない二段階買収の実現が短期間で実現する。

ポラリスがノバレーゼ株に1944円という高いプレミアムを付けた狙いの一つとしては、まさにこの点も含まれていたはずである。今後も二段階買収案件においては「総株主の議決権の90%以上」の実現を確実にするためにどのような方策を取るか、という視点が重要である。

[1]  形式的には同グループが組成したポラリス第三号投資事業有限責任組合が全株式を保有するNAPホールディングス株式会社。

[2]  平成28年実施のTOBにおけるプレミアム率では2位(1位は株式会社卑弥呼に対するTOBで、約2.5倍)。平成28年において2倍を超えるプレミアム率だったのは3件だけである。

[3]  1944円という金額は、市場価格平均法による金額の約2.4倍に相当し、類似会社比較法の上限額(1675円)を上回り、DCF法の中央値(1855円)を上回るという金額であった。

[4]  公開買付期間が平成28年9月2日~10月18日、決済開始日が10月25日、特別支配株主の株式売渡請求制度に基づく売渡請求日が10月27日、同制度による取得日が12月1日。ただし、売渡対価の支払いは12月1日よりも後に行われていると思われる。

[5]  特別支配株主の株式売渡請求制度による場合、概ね3か月程度、株式併合による場合、概ね4~5か月程度が多いようである。

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