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2017.3.8

アサヒビールが世界最大手のビール会社から一部事業を買収

2017.3.7

アサヒビール、旧SABミラーの東欧事業を買収

家永勲
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昨年、アサヒビールホールディングス株式会社が、中東欧5ヶ国の事業会社および「Pilsner Urquell」をはじめとする有力なブランドの知的財産権の譲渡を受けるという、大規模な国際的M&Aが実施されました。

当該M&Aの取引価額が、日本円にして約8883億円という高額であったことが報道においても広く取りざたされており、このような巨額なM&Aの実施において役員がいかなる情報に基づき、判断に至ったのか非常に気になるところです。

今回は、M&Aにかかる経営判断が会社法上の役員責任においてどのように判断されているのかについて、見ていこうと思います。

株式価格の決定と経営判断の関係について

過去に、日本国内におけるM&Aの実施にかかる取締役らの責任について、裁判所が判断したケースが存在します。特に、参照される判例として、平成22年7月15日に最高裁が下した判決が存在します。

事案の概要は、持株会社による事業会社の完全子会社化に当たって、持株会社が、合意により事業会社の株式の買い取りを進めていたところ、株式の価額が第三者による評価の約5倍であったことを理由に、株主が、取締役らの善管注意義務違反を理由として損害賠償責任を負担すべきとして提訴したという事案でした。

一見すると、第三者による評価の約5倍という株式の価額は、不合理なようにも思われますが、このような決断を行った役員らの責任を問うことができるのかが問題となりました。

最高裁は、「事業再編計画の策定は、完全子会社とすることのメリットの評価を含め、将来予測にわたる経営上の専門的判断にゆだねられていると解される。」と判断し、その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役の善管注意義務に違反するものではないと判断基準を整理しました。

これは、アメリカ等においては、「Business Judgment Rule(経営判断の原則)」と呼ばれる、役員らの経営責任の問い方を日本の会社法に基づく役員の賠償責任を整理したものといわれています。

この判例においては、事案に即して、取締役は、「完全子会社化するという目的」のために、①株式の評価額以外にも、②取得の必要性、③財務上の負担、④株式取得を円滑に進める必要性の程度等をも総合考慮することを認めています。

本件巨額買収における役員らの判断について

本件買収については、事前の予測からは、推定評価額は約6900億円などと報道されており、買収決定の報道直後にはアサヒビールホールディングスの株価が続落するなどの影響が出ていました。

しかしながら、経営判断の原則に即して考えてみると、その目的や本件買収における取引過程を踏まえると、著しく不合理とはいえるものではないといえるでしょう。

まず、本件買収における目的は、アサヒビールホールディングス株式会社が「グローバルプレイヤーとして独自のポジションを確立する」という長期ビジョンの達成に向けて、「国際事業の成長エンジン化による『稼ぐ力』の強化」という戦略の一環として実行されています。とすると、買収対象としては、自社が保有していない強みとして十分なブランド力を有しているなど代替困難な価値を有していることは重要であると考えられます。また、本件買収は、入札方式によって行われたとの報道からすると、代替困難なブランド力を獲得するために必要な価額を決定しなければならず、推定的な価値よりも高額となることもやむをえない方式であったともいえます。

以上のようなことを踏まえると、価格決定の側面だけをみて、推定評価額よりも高額であったとしても、海外におけるブランド力の強化の重要性(特に、西欧における事業基盤を既に獲得していた点とのシナジー効果などの予測)という目的やその獲得の必要性を踏まえて、将来的な点も含めて財務上の負担を正確に予測して行われたとすれば、役員らの責任が生じる可能性は低いといえるでしょう。

以上

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