» Rizapグループとぱどとの資本提携にみる再建型ファイナンスについて

テーマRIZAPグループが、フリーペーパー発行の「ぱど」を買収

2017年2月13日、RIZAPグループがフリーペーパーなどを発行する「ぱど」を子会社化すると発表され、3月31日にそれが完了しました。

ぱどが実施する第三者割当増資をRIZAPグループが引き受け、発行済み株式のうち約71%を保有することとなります。

RIZAPグループが何故今ぱどを買収するのかについて考察します。

「Rizapグループとぱどとの資本提携にみる再建型ファイナンスについて」

2017年4月5日
花澤健司

公認会計士
大手監査法人で会計監査業務および会計アドバイザリー(IPO、企業価値評価、企業再生及びM&Aのための財務デューデリジェンス)の業務に従事したほか、PE Fundおよび不動産ファンドに対して、M&Aアドバイス及び会計スキーム構築アドバイス、内部統制アドバイスに行った。2012年1月より独立開業、バイオベンチャーのCFOや資金調達支援といったコンサルティング以外の業務も積極的に行っている。

 

Rizapグループ株式会社と株式会社ぱど

Rizapグループ株式会社(以下、「Rizap」という。)と株式会社ぱど(以下、「ぱど」という。)は平成29年2月13日に資本業務提携契約の締結を発表した。その概要は平成29年3月末にRizapがぱどの第3者割当増資を引き受け、同社の子会社化するものである。合わせて業務提携として年間約5億円程度の広告出稿をぱどにRizapが依頼することも発表されている。

ここまではよくみかける資本業務提携であるが、今回の取引は第3者割当の株価に注目したい。今回の資本業務提携で、Rizapは一株当たり74円という株価で増資の引き受けを実施している。上場企業の場合は株式市場にて一株の取引時価があるため、一般的に第3者割当増資を行う場合はその株価を参考にすることが多い。では、ぱどの株価の推移はどの程度かというと2016年4月から見てみると同社の株価は182円から507円の間で推移しており、ぱどが意思決定を行った平成29年2月近辺でも280円台である。増資の株価74円は市場推移から見て約75%程度のディスカウントが入っている大幅な割安水準となっている。

この74円という株価はぱどのIR資料によると同社の2016年10月末時点の純資産額を基準としている旨が記載されている。一般的には株式市場の取引価格を参照し決定することが多いが、今回は純資産となったことについても、IR資料に記載があり、ぱどの財務状況が相当程度悪化し、会社に継続企業の前提に重要な疑義が生じていることに起因する。以下はぱどの最近の財務状況の動きであるが、直近2期間は経常赤字であり、かつ当期(平成29年3月期)についても第3四半期までは経常赤字が継続しており、同社の純資産は107百万円まで目減りしている。

 

 

 

 

 

価格の決定プロセス

また、同社のIR資料からは第4四半期についても赤字が継続し、最終的には連結純資産は54百万円まで毀損することが公表されている。そのような状況下にあってはRizapとしては増資する株価が市場価格水準では許容できず、彼らがファイナンスを検討していた当時の純資産を基準とする以外になかったということがIR資料にも記載されている。

筆者はこの価格の決定のプロセスについては、ぱどのおかれている状況を鑑み、ある程度は妥当であろうと考えている。一方で割安に取得したRizap側にリスクがないかというとそうでもない。Rizapが資金を提供するのは平成29年3月末であるため、3月末にRizapの連結子会社になる(=支配獲得日)と考えられる。連結会計基準では支配獲得日に子会社の資産及び負債の全てを支配獲得日の時価により評価することになる。仮にぱどの資産および負債が時価と簿価が同額であると仮定した場合、ぱどの純資産は上記のように54百万円となる。一方でRizapはぱどに対して10億円を拠出し、ぱどの株式の約70%を取得することになる。つまり、ぱどの純資産54百万円の約70%である約38百万円を10億円で取得することになり、差額の962百万円は会計上のれんとしてRizapの連結財務諸表に計上されることになる(税効果会計は考慮していないため、実際計上額とは異なる)。今回のような再建型のファイナンスを実施する場合には、相手方の財務状況が悪く、出資した金額と取得した資産の差額は多額になるつまりのれんが多額に発生するとことがよくあることである。のれんは会計上、資産に計上され、20年以内のその効果の及ぶ範囲にわたって配分(費用計上)されることになる。Rizapののれんの償却期間は10年であるが、ここではその償却期間が問題となるのではなく同社の財務がさらに悪化した場合にのれんの減損が発生する可能性があることである。再建型のファイナンスの場合、もともと経営状況は芳しくないため、ファイナンスをして、一時的には財務状況は改善したとしても、経営状況が継続して悪い場合は、のれんの減損がいつでも発生しかねない状況となり、Rizap社の業績に多大な影響を与える場合がある。

最も今回の資本業務提携はRizapとぱどの業務のシナジー効果も高いことが見込まれてこと業務委託契約としてRizapから5億円程度の広告出稿が予定されている等Rizap、ぱどともにwin-winな関係にあることが予想されるため、想定されるシナジー効果が実績として反映されれば、のれんの減損リスクは減っていくと考えられる。

このように、財務体質が悪化している企業を買収する場合は、計上されるのれんの金額は多額になり、かつ、買収先の業績次第では買収元の親会社への財務に与える影響もあるために再建型のファイナンスを行う場合には買収先の買収後の事業計画をしっかりと評価していく必要があると考える。

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    弁護士 飯島康央 紀尾井町法律事務所所属。2000年4月弁護士登録。2015年度第二東京弁護士会副会長。2015年6月からパルシステム生活協同組合連合会員外監事を務めています。 離婚や相続問題、交通事故や消費者事件などの他、企業間の法的トラブルに関する訴訟事件や契約書の作成、審査、債権回収、労務問題など、中小企業の法務支援にも力を注いでいます。

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    2006年弁護士登録、2012年アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士登録。クロスボーダーM&Aを含むM&A案件と国際取引、国際紛争、国際倒産処理手続等の渉外案件を中心に取り扱う。現在三宅坂総合法律事務所のパートナーとして、国内案件のみならずASEAN諸国や中国・インドなどにおけるクロスボーダーM&A等提携取引の事例と相談を多く手がけている。

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    明治大学法学部卒業後の昭和61年から弁護士活動開始。結婚出産子育てを経て、平成9年より豊島区池袋にて弁護士活動を再開。その後、東京税理士会に登録して税務分野に拡大。法人化を機会に平成26年東京銀座に進出。現在は、弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京の代表として、銀座本店と池袋支店で弁護士5名・税理士2名の体制にて、相続税務や事業承継を含む相続全般・不動産関係に特化した事務所を経営する。

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    平成8年京都大学法学部卒、平成10年京都大学大学院法学研究科卒。 平成12年4月弁護士登録。平成17年6月税理士登録。日系企業のアジア進出支援に定評のある弁護士法人マーキュリー・ジェネラルの代表パートナー。 国内外の企業法務、M&A、事業再生等に豊富な経験を有し、社外役員を務める会社も多数あり、各分野に関する講演歴等も多数にのぼる。