» 東芝のM&Aに見る「のれんという夢」と、「減損処理という現実」

テーマ日本を代表する企業、東芝の今後の行方は

日本を代表する企業である東芝が窮地に立たされています。

米原発事業を展開する子会社のWH社を破産させることが決まり、そこからの止血が決まったものの、およそ1兆円と推定される赤字を計上し、大幅な債務超過に陥る見込みです。

一部事業会社の売却なども取り沙汰される中、東芝の今後を考えます。

「東芝のM&Aに見る「のれんという夢」と、「減損処理という現実」」

2017年4月21日
平川智章

M&Aアドバイザー
インクグロウ株式会社 事業戦略部 サブマネージャー M&Aシニアエキスパート 1984年1月生まれ 新卒で入社した会社で中小企業の販路拡大支援業務、フランチャイズの法人営業業務を行う。その後、グループより独立したインクグロウに転籍し、中小企業を中心としたM&A仲介業務を行っている。 北海道東北、関東、関西、東海など全国の企業から依頼を受け、M&A仲介業務を行っている。

 

「東芝が世界の原発市場に打ってでる」
「原発ルネッサンス」
「ウェスチングハウスのブランド力、信頼性を考えれば、6200億円は決して高い買い物ではない」

 

2006年に東芝がウェスチングハウスを買収した際に見出しに並んだ言葉です。当時も6200億円は高値掴みだという声はありましたが、東芝がここまでの状況になるのは誰も想像しなかったのではないでしょうか。

当コラムでは東芝が数千億の減損処理を行うことになった元凶である「のれん」について解説したいと思います。

 

【東芝のこれまでの流れ】

まずは改めて東芝の概況について復習いたします。
東芝のニュースには不正会計、上場廃止、経営破たんなど様々な見出しが並んでいますが、巨額損失で大きな割合を占めるのは2006年のウエスチンハウス買収をキッカケとする原発事業の減損処理です。当時、日本の原発には沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)とがあり、PWRの三菱重工、BWRの東芝・日立となっていました。ウエスチンハウスは、加圧水型(PWR)の企業であり当初同じ加圧水型の三菱重工が買収を検討していました。しかし、結果としては東芝が想定の倍以上の金額で買収を行いました。沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の両方を持ち、世界に打ってでるというのが東芝の目論見でした。しかし、リーマンショック、東日本大震災での原発事故などの流れの中、原発事業は思うような収益を上げられない結果となりました。

 

【「のれん」について】

ここから「のれん」についての話です。のれんというのは大まかに言えば「収益力を含めた企業価値と純資産の差」です。意外に思われるかもしれませんが、正か負かは別として全ての企業が持っています。普段は、収益力などが決算書上で明記されることはありません。しかし、M&Aで他社が収益力を加味した金額で買収すると、純資産との差である「のれん」が表面化することになります。

ウエスチンハウス買収については、東芝が世界に打ってでる将来性も加味して、大きなのれんが発生しました。こののれん評価は、高値掴みという声もありましたが、世界戦略への期待感もあり、好意的な声も多く聞かれました。実際に当社の株価は600円前後の水準から、2008年にかけて1000円前後まで上昇しています。日本ではのれんは20年以内で償却と定められていますが、期待した収益が上がらない場合、減損処理を行います。それが今回の数千億の赤字となりました。

 

【「のれんという夢」と、「減損処理という現実」】

「大規模買収」などと聞くと、夢があり期待が膨らむものですが、一方で、思うように収益が上がらない場合、大きな減損処理という現実になって現れる可能性があります。収益力に対して適正なのれんなのか、冷静な目で判断する必要があると思います。

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  • 「『東芝が買収したWHの企業価値の変遷』」

    吉村史明

    公認会計士

    吉村 史明 北海道出身。一橋大学(商学部経営学科)卒。 平成3年公認会計士2次試験合格後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所。金融商品取引法監査、会社法監査並びに株式公開支援業務に従事。平成7年公認会計士登録。平成12年監査法人退所後、公開準備会社に転職。公開業務終了後、独立。 現在は、税理士法人 AKJパートナーズにて、M&Aに関わる企業デューデリジェンス・組織再編・税務、不動産投資コンサルティングに従事。