» 金融に舵をきるCAMPFIREに出資したネットマーケティング事業者の思惑とは?

テーマセプテーニHD、CAMPFIREと資本・業務提携契約締結

2017年1月10日、株式会社セプテーニ・ホールディングス(本社:東京都新宿区、代表取締役:佐藤 光紀、証券コード:4293)は、株式会社CAMPFIRE(本社:東京都渋谷区、代表取締役:家入 一真)と資本・業務提携契約を締結しました。

この資本業務提携で、CAMPFIREが第三者割当増資による新株式を発行し、その一部を株式会社セプテーニ・ホールディングスが取得します。

「金融に舵をきるCAMPFIREに出資したネットマーケティング事業者の思惑とは?」

2017年4月27日
河本秀介

弁護士
敬和綜合法律事務所所属。東京大学法学部卒業後、三菱重工業株式会社資金部における4年間の勤務を経て、2007年に弁護士登録。 以後、企業での勤務経験を活かした実践的な角度によるコーポレート分野のリーガルアドバイス、M&Aアドバイス、企業間訴訟などを幅広く手掛けるほか、IT法務や金融・ファンドの分野にも独自の強みを持つ。

1 セプテーニとCAMPFIREの資本業務提携

株式会社セプテーニ・ホールディングス(「セプテーニ」)は、2017年1月10日、株式会社CAMPFIREとの間に資本・業務提携契約を締結したことを発表しました。これによりセプテーニは、CAMPFIREが第三者割当増資により新たに発行した株式の一部を取得しています。
セプテーニは、複数のグループ企業を統括するホールディング・カンパニーであり、同グループはインターネット広告などの「ネットマーケティング事業」とマンガの配信などの「メディアコンテンツ事業」を中核的な事業としています。
一方で、CAMPFIREはクラウドファンディングの運営会社として国内大手の企業です。
一見するとビジネスの内容が大きく異なる両社が資本業務提携を行った思惑はどこにあるのでしょうか。
クラウドファンディング市場の急成長や、フィンテックと呼ばれるインターネット・テクノロジーを活用した金融の新潮流から眺めてゆくと、CAMPFIREがネットマーケティング事業者と共に金融分野に本格的に乗り出そうとする図が見えてくるように思います。

 

2 急成長を続けるクラウドファンディング市場

今般の資本業務提携を読み解くために、まずはCAMPFIREによる第三者割当増資の概要を見てみましょう。
CAMPFIREは日本国内におけるクラウドファンディングの運営会社として最大手とされる企業です。
クラウドファンディングとは事業などの資金を必要とする企業など(資金需要者)が、インターネットを通じて不特定多数の者に資金の提供を募る仕組みです。
クラウドファンディングには、小口の資金の提供を多数のネットユーザーから受けることにより、結果として大きな資金を集めることができるという強みがあります。この分野は近年、急成長しており、CAMPFIREも、自社のプラットフォームにおいて、2016年の1年間だけで過去4年分を上回る金額の資金提供を取り扱ったことを明らかにしています。
今回、CAMPFIREは第三者割当増資により総額3億3000万円の資金調達を実施しました。CAMPFIREの増資後の資本金額が4億5977万円であることからすると、市場の急成長を背景にした大規模な増資といえるでしょう。
また、第三者割当増資に応じてCAMPFIREの株式を引受けた出資者は、12の企業・個人投資家にわたります。それら出資者のプロフィールを眺めると、ファンドやベンチャーキャピタル以外にも、セプテーニを始めとする複数のインターネット関連会社が第三者割当増資に応じているのが印象的です。

 

3 本格的な金融に乗り出すCAMPFIRE

 (1) 第三者割当増資の目的は

CAMPFIREがこのような第三者割当増資を実施した目的はどこにあるのでしょうか。
CAMPFIREのプレスリリースによると、今回の第三者割当増資の目的は次の2点にあるとされています。

  ① 貸付型クラウドファンディングへの新規参入
  ② 人工知能を活用した貸付時の審査・与信システムの開発

 (2) 貸付型クラウドファンディングとは

「貸付型クラウドファンディングへの新規参入」とはどういうことでしょう。
クラウドファンディングは、呼びかけに応じて資金を提供した者(資金提供者)が得られるリターンの有無や内容によって、おおむね3種類に大別されます。

  ① リターンが想定されていないもの(「寄付型」)
  ② 資金提供に対するリターンが商品やサービスであるもの(「購入型」)
資金提供に対するリターンが株式や配当金などの金銭的な利益であるもの(「投資型」)

さらに、金銭的な利益をリターンとする「投資型」は、一般的に、資金提供の性質や対象によって次のように分類されます。

  ① 株式型
  ② ファンド型
  ③ 貸付型(融資型)

このうち、「貸付型」は、資金提供者は融資の形で資金需要者に資金提供し、リターンとして貸付の利息を得ることになります。
また、資金提供者からの匿名組合出資の形で運営会社が資金を集め、集めた資金を運営会社が資金需要者に融資するスキームも(広義の)「貸付型クラウドファンディング」と呼ぶことがあります。
この場合、小口の資金を多数者から募るのは匿名組合ですから、本来は「ファンド型」と整理するのが正確かもしれませんが、わが国で「貸付型クラウドファンディング」と呼ばれるものの多くは、匿名組合を組成する広義のものです。
CAMPFIREは「第二種金融商品取引業登録を受ける予定である」と公表していますので、CAMPFIREが想定する貸付型クラウドファンディングも広義のものである可能性が高いと思われます。

投資型のクラウドファンディングの場合、通常は、運営会社に金融商品取引法や貸金業法に基づく許認可等が必要とされます。また、そのような許認可等を経た後は、それらの法律の定める規律に従った事業運営を行わなければなりません。

クラウドファンディングの分類と必要とされる許認可等(例示)

 

 

 

 

 

 

(3) 金融に舵をきるCAMPFIRE

CAMPFIREは、業界大手でありながら、いままで「購入型」のクラウドファンディングのみを手掛けていました。
今後は、市場の急成長を背景に、必要な許認可(第二種金融商品取引業や貸金業の登録)を取得して、貸付型クラウドファンディング事業に参入することを表明しています。
購入型クラウドファンディングも広い意味では一種の金融といえますが、今後は、より一層金融色の強いサービスを提供することが指向されているようです

 

4 セプテーニがCAMPFIREに出資した思惑とは?

 (1) コンテンツビジネスでのコラボレーション

それでは、CAMPFIREと資本業務提携を行ったセプテーニの思惑はどういったところにあるのでしょうか。
セプテーニは、中核事業の一つを「メディアコンテンツ事業」としており、傘下のコミックスマート株式会社が、スマートフォンを中心としたマンガ配信サービス「GANMA!」を提供しています。
今回の資本業務提携の内容として差しあたって公表されているのは、「GANMA!」で配信されている作品のノベルティグッズの制作費用をクラウドファンディングで募集するというものです。
クラウドファンディングは、作品を積極的に支援しようとするファン層があるコンテンツビジネスと親和性が高く、今後もクラウドファンディングを活用した第二弾、第三弾の取り組みが期待されます。

 (2) フィンテック分野のシナジーはあるか?

さらに大胆な予想をすると、CAMPFIREが将来的に金融分野への本格参入を考えていることからすると、セプテーニとの資本業務提携によって得られるシナジーは、もしかするとコンテンツビジネスに留まらないかも知れません。
前述の通り、CAMPFIREは、今回の第三者割当増資を実施したもうひとつの目的として、人工知能を活用した貸付時のプロジェクト審査や与信システムの開発を挙げています。
金融の分野では、昨今、フィンテック(Fin Tech)と呼ばれるインターネット・テクノロジーを活用した金融取引が大きな潮流となりつつあります。例えば、株式の売買でも、コンピュータのアルゴリズムにより、1秒間に数千回という超高速の受発注を自動的に繰り返すような取引が当たり前になってきています。
CAMPFIREが、貸付型クラウドファンディングへの参入と同時に「人工知能を活用した与信システム」の開発に乗り出すことを表明しているのは、このようなフィンテックの潮流が多分に意識されていると思われます。
そのようなCAMPFIREのニーズに対して、前述の通り、セプテーニの中核事業にはネットマーケティングが含まれています。
CAMPFIREが人工知能を活用した金融システムを開発するにあたり、セプテーニのネットマーケティング事業で得られた市場動向や消費者の意思決定データ(いわゆるビッグデータ)に加え、それらを処理・利用するノウハウが活用されるということも考えられます。
今回のプレスリリースには全く触れられていないのですが、もしかすると、セプテーニとCAMPFIREの資本業務提携の背景に、フィンテック分野でのコラボレーションが意識されているのではないかと推測します。
今後ますます成長を続けるクラウドファンディングやフィンテックの分野に、ネットマーケティングのノウハウがどのように活用されてゆくのか、見守りたいと思います。

その他専門家コラム

  • 「クラウドファンディングの草分け、株式会社CAMPFIREが第3者割当を実施」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

  • 「セプテーニ・ホールディングスの先行投資の行方」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「株式会社セプテーニ・ホールディングスと株式会社CAMPFIREとの資本・業務提携契約について」

    藤原宏高

    弁護士

    弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

  • 「セプテーニとCAMPFIREの資本・業務提携について」

    家永勲

    弁護士

    家永 勲 弁護士法人ALG&Associates パートナー・弁護士 東京弁護士会所属 上場企業が手がけるM&Aにおける法務DDの責任者として対応するほか、会社法を活用した買収目的に適したスキームの策定等も実践し、M&Aに関わる法務問題を幅広く取り扱っている。 企業法務におけるトラブルへの対応とその予防策に関するセミナーのほかストレスチェックやマイナンバーなど最新の法改正に即したセミナーや執筆も多数行っている。