» 株式会社徳間書店の買収の意味するもの

テーマカルチュア・コンビニエンス・クラブによる徳間書店買収について

2017年3月21日、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは3月21日付で徳間書店を買収した、と発表しました。

株式の保有比率を15%から97%まで引き上げたと発表されています。

このM&Aの目的や中身について考察します。

「株式会社徳間書店の買収の意味するもの」

2017年6月12日
藤原宏高

弁護士
弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。 2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。 これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

1 はじめに

株式会社徳間書店(以下「徳間」という)は、2017年3月21日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下「CCC」という)のグループ会社であるカルチュア・エンタテインメント株式会社(以下「CE」という)による株式取得により、CEの子会社となったと発表した。

CEは、CCCグループの中でも、特に「出版や映像、音楽などエンタテインメント分野における企画・制作を事業」としている。

徳間といえば、名門出版社として、これまで日本でも著名なアニメーションを育ててきた。その歴史を振り返ると、1984年に「風の谷のナウシカ」、1988年には、「となりのトトロ」を公開している。その後もヒット作に恵まれ、2005年には、スタジオジブリ事業本部を株式会社スタジオジブリに分離独立させている。

今日の出版不況は、このように著名な優良会社であった徳間まで飲み込んだということであろうか。

他方、CCCグループは、書籍や映像・音楽ソフトの販売・レンタル大手(TSUTAYA)としてその業容を拡大してきたが、事業の多角化を積極的に進め、出版事業にも進出し、いくつかの出版社を買収してきたといわれている。

コンテンツに依存する業態である以上、コンテンツを自ら開発・維持する必要性を感じたのかもしれない。

 

2 M&Aの形態

報道によると、CEが徳間の株式を取得した模様で、CCCグループ全体でこれまでに約15%の議決権を保有してきたものが、今回の買収で約97%の議決権を確保した模様である。徳間は非上場会社であり、かつ徳間の株主が誰かは公表されていないので、買収の詳細は知ることができない。

未公開企業の株価の算定は、1株当たりの純資産価格に加えて、EBIT(支払金利前税引前利益、Earnings Before Interest and Tax)を数年分加味することにより算出されることが多いが、事業が債務超過でかつ単年度のEBITがマイナスになると、企業価値はもっぱらこれまでのブランドに基づく暖簾によって評価されることになると思われるが、買い手の力の大きさによって価格は変わってくる。

 

3 買収の目的

CCCグループば、「60年の歴史を持つ総合出版社である徳間書店が、生活提案系出版社を複数有するCEの子会社になることで、徳間書店の培ってきた編集力やノウハウ、取引先との信頼関係をさらに活かし、CCCグループの各事業と掛け合わせた企画を生み出し、より立体的で、新しいライフスタイル提案を創出してまいります。」と発表している。

他方、徳間も、「CEグループ出版社との間で、出版事業の効率化、共同化を目指し、2014年に共同販売業務委託会社・株式会社C-パブリッシングサービスの設立や、昨年からは倉庫物流機能の合理化を進めてまいりました。現在の出版業界環境の中においては、出版事業の効率化は必然であり、今後はグループ各社との協業によりWeb、デジタルパブリッシング、BtoB、データベースマーケティングなど各事業の収益拡大にも取り組む予定です。」と発表している。

インターネットの急速な普及により、スマホが紙文化にとって代わる時代となりつつある今日、出版業界もこれまでの紙に依存する業態から、スマホ文化に対応した情報産業としてその業容の転換を図ることは必須と思われることから、M&Aによって経営基盤を強化したうえ、事業構造の大胆な変換をはかることはあるべき姿といえるのではないか。

徳間も、「本年度以降はメディアミックス戦略を強化するために映像コンテンツビジネスを強化し、ひいてはライツ事業を積極的に推進してまいります。」と発表している。

今回のM&Aが成功することを期待するばかりである。

以上

その他専門家コラム

  • 「CCCによる徳間書店買収のユニークな点は何か?  」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

  • 「徳間書店の子会社化は救済か?シナジー効果か?」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「出版業界における買収のメリット」

    家永勲

    弁護士

    家永 勲 弁護士法人ALG&Associates パートナー・弁護士 東京弁護士会所属 上場企業が手がけるM&Aにおける法務DDの責任者として対応するほか、会社法を活用した買収目的に適したスキームの策定等も実践し、M&Aに関わる法務問題を幅広く取り扱っている。 企業法務におけるトラブルへの対応とその予防策に関するセミナーのほかストレスチェックやマイナンバーなど最新の法改正に即したセミナーや執筆も多数行っている。