» ㈱ダイヤモンドダイニングによる㈱商業藝術買収の経営判断

テーマダイヤモンドダイニングのM&A戦略

ダイヤモンドダイニングは、2017年6月1日、商業藝術の全株式を取得し、子会社化することを発表した。取得価格は18億円。ダイヤモンドダイニンググループは、飲食事業を中心にアミューズメント事業やウェディング事業へも事業領域を拡大している。商業藝術を子会社することで、双方が持つブランドやこれまでに培ってきた業態開発ノウハウ、教育システム等の経営資源を活用し合うことで、事業の拡大並びに経営の効率化を目指す。

 

 

 

 

「㈱ダイヤモンドダイニングによる㈱商業藝術買収の経営判断」

2017年6月14日
多田昌弘

公認会計士・税理士
多田総合会計事務所代表。東京大学経済学部経営学科卒。PwCコンサルティング㈱でERPや連結会計システムの導入コンサルティングに従事後、公認会計士二次試験に合格し監査法人トーマツに入所。法定監査や上場準備監査、M&Aのデューデリジェンスに従事。2004年に独立開業し、ゴルフ場や製造業のPMI(M&A後の統合業務)に従事。IT企業やヘルスケア企業の税務顧問、財務アドバイザリーを数多く務める。

 

飲食業同士のM&A

 

飲食チェーンの㈱ダイヤモンドダイニング(東証1部上場)は、広々とした小上がり席でくつろげるカフェ「chano-ma」、京都おばんざいをメインにした和食店「石塀小路豆ちゃ」の業態をはじめとした飲食店等を展開している㈱商業藝術の発行済全株式を18億円で取得し完全子会社化しました。

買収された㈱商業藝術は、平成5年の創業以来、上述の「chano-ma」「石塀小路豆ちゃ」の他、開放的な海沿いのゲストハウスウェディングの「CASA FELIZ」等、広島県をはじめ関東圏、中部圏、関西圏、福岡県など幅広いエリアで事業を展開し、平成29年3月末現在、国内にて 飲食直営店舗80店舗、結婚式場1店舗、美容室2店舗の合計83店舗を運営しています。

なお、㈱ダイヤモンドダイニンググループは、平成7年6月の創業以降、現在は飲食事業を中心に、アミューズメント事業、ウェディング事業へも事業領域を拡大し、平成29年3月末現在、国内外合わせて274店舗(持分法適用会社の株式会社ゼットンを含めると340店舗)を直営展開しています。

 

 

この買収にはどういった経営判断があったのでしょうか。

 

㈱商業藝術の平成28年9月期の売上高は7,616百万円、経常利益は163百万円、経常利益率は2.16%でした。買収の直近期の経常利益率を比較すると、平成29年2月期の㈱ダイヤモンドダイニングの経常利益率は4.7%であり、同社の半分以下のかなり低い状況でした。これが何を意味するかと言うと、仮に買収価格がDCF法をベースにして計算されているとすれば、㈱商業藝術の将来キャッシュ・フローが低水準であったため、売上規模の割には割安価格で買収できたのだと想像できます。

加えて、利益率が低いということは、買収後の改善施策によりまずは㈱商業藝術の業績を向上させることができれば㈱ダイヤモンドダイニング(連結)のROEがかなり向上することを意味します。平成29年2月期の同社のROEは16.6%(=親会社株主に帰属する当期純利益/(純資産-合計-新株予約権-少数株主持分))でしたが、買収後の㈱商業藝術が㈱ダイヤモンドダイニングと同じ2.1%の親会社株主に帰属する当期純利益率に改善したとすると親会社株主に帰属する当期純利益が162百万円増加するため、買収後のROEは20.8%に上昇します。

つまり、割安価格で買収できる会社を選び買収資金を低く抑えると共に、買収した会社の業績を改善することにより自社の企業価値向上を狙う意図の買収であったと推測できます。

具体的な改善施策は㈱ダイヤモンドダイニングの適時開示書類の平成29年4月27日「株式会社商業藝術(旧商号 Jellyfish.株式会社)の全株式取得(子会社化)に関するお知らせ」で説明されており次のとおりです。

「当社は、商業藝術社の株式を取得することにより、双方が持つブランド及びこれまでに培ってきた業態開発ノウハウ、立地戦略、教育システム、管理システム並びに仕入等を共有し、また、積極的に活用することで企業価値の更なる向上及びコスト削減等のシナジー効果を創出することが可能であると考えております。」

上記では、飲食事業を中心に各種のノウハウを共有することで既存事業の業績を向上することが可能と判断した旨が説明されております。

 

 

その他、㈱ダイヤモンドダイニンググループの今後の事業展開に与える影響として次の説明がされております。

「加えて、当社グループが積極的に参入していない、「中国地方での直営飲食店の展開」及び「商業施設等でのノンアルコール業態」を強みとした事業展開を行う商業藝術社が当社グループに参画することで、当社グループ内での、エリア展開領域の拡大及び事業領域の拡充を実現できると考えております。」

その後、「ひいては、当社グループの事業基盤の拡大による企業価値の向上につながるものと判断し」という記述が続き、この買収は今後の事業展開にも有利に働き、グループ全体の企業価値の向上につながると判断した旨が説明されております。

 

その他専門家コラム

  • 「ダイヤモンドダイニングの商業藝術買収の戦略とは」

    小林幸与

    弁護士・税理士

    明治大学法学部卒業後の昭和61年から弁護士活動開始。結婚出産子育てを経て、平成9年より豊島区池袋にて弁護士活動を再開。その後、東京税理士会に登録して税務分野に拡大。法人化を機会に平成26年東京銀座に進出。現在は、弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京の代表として、銀座本店と池袋支店で弁護士5名・税理士2名の体制にて、相続税務や事業承継を含む相続全般・不動産関係に特化した事務所を経営する。

  • 「ダイヤモンドダイニングのM&A戦略」

    飯島康央

    弁護士

    弁護士 飯島康央 紀尾井町法律事務所所属。2000年4月弁護士登録。2015年度第二東京弁護士会副会長。2015年6月からパルシステム生活協同組合連合会員外監事を務めています。 離婚や相続問題、交通事故や消費者事件などの他、企業間の法的トラブルに関する訴訟事件や契約書の作成、審査、債権回収、労務問題など、中小企業の法務支援にも力を注いでいます。

  • 「ダイヤモンドダイニングの拡大戦略 ~商業藝術の買収~」

    中野友貴

    弁護士

    クレア法律事務所所属弁護士。 2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。 著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。