プロコメ

2017.6.14

ダイヤモンドダイニングのM&A戦略

2017.6.14

㈱ダイヤモンドダイニングによる㈱商業藝術買収の経営判断

多田昌弘
多田昌弘 公認会計士・税理士 プロフィールを見る

飲食業同士のM&A

飲食チェーンの㈱ダイヤモンドダイニング(東証1部上場)は、広々とした小上がり席でくつろげるカフェ「chano-ma」、京都おばんざいをメインにした和食店「石塀小路豆ちゃ」の業態をはじめとした飲食店等を展開している㈱商業藝術の発行済全株式を18億円で取得し完全子会社化しました。

買収された㈱商業藝術は、平成5年の創業以来、上述の「chano-ma」「石塀小路豆ちゃ」の他、開放的な海沿いのゲストハウスウェディングの「CASA FELIZ」等、広島県をはじめ関東圏、中部圏、関西圏、福岡県など幅広いエリアで事業を展開し、平成29年3月末現在、国内にて 飲食直営店舗80店舗、結婚式場1店舗、美容室2店舗の合計83店舗を運営しています。

なお、㈱ダイヤモンドダイニンググループは、平成7年6月の創業以降、現在は飲食事業を中心に、アミューズメント事業、ウェディング事業へも事業領域を拡大し、平成29年3月末現在、国内外合わせて274店舗(持分法適用会社の株式会社ゼットンを含めると340店舗)を直営展開しています。

この買収にはどういった経営判断があったのでしょうか。

㈱商業藝術の平成28年9月期の売上高は7,616百万円、経常利益は163百万円、経常利益率は2.16%でした。買収の直近期の経常利益率を比較すると、平成29年2月期の㈱ダイヤモンドダイニングの経常利益率は4.7%であり、同社の半分以下のかなり低い状況でした。これが何を意味するかと言うと、仮に買収価格がDCF法をベースにして計算されているとすれば、㈱商業藝術の将来キャッシュ・フローが低水準であったため、売上規模の割には割安価格で買収できたのだと想像できます。

加えて、利益率が低いということは、買収後の改善施策によりまずは㈱商業藝術の業績を向上させることができれば㈱ダイヤモンドダイニング(連結)のROEがかなり向上することを意味します。平成29年2月期の同社のROEは16.6%(=親会社株主に帰属する当期純利益/(純資産-合計-新株予約権-少数株主持分))でしたが、買収後の㈱商業藝術が㈱ダイヤモンドダイニングと同じ2.1%の親会社株主に帰属する当期純利益率に改善したとすると親会社株主に帰属する当期純利益が162百万円増加するため、買収後のROEは20.8%に上昇します。

つまり、割安価格で買収できる会社を選び買収資金を低く抑えると共に、買収した会社の業績を改善することにより自社の企業価値向上を狙う意図の買収であったと推測できます。

具体的な改善施策は㈱ダイヤモンドダイニングの適時開示書類の平成29年4月27日「株式会社商業藝術(旧商号 Jellyfish.株式会社)の全株式取得(子会社化)に関するお知らせ」で説明されており次のとおりです。

「当社は、商業藝術社の株式を取得することにより、双方が持つブランド及びこれまでに培ってきた業態開発ノウハウ、立地戦略、教育システム、管理システム並びに仕入等を共有し、また、積極的に活用することで企業価値の更なる向上及びコスト削減等のシナジー効果を創出することが可能であると考えております。」

上記では、飲食事業を中心に各種のノウハウを共有することで既存事業の業績を向上することが可能と判断した旨が説明されております。

その他、㈱ダイヤモンドダイニンググループの今後の事業展開に与える影響として次の説明がされております。

「加えて、当社グループが積極的に参入していない、「中国地方での直営飲食店の展開」及び「商業施設等でのノンアルコール業態」を強みとした事業展開を行う商業藝術社が当社グループに参画することで、当社グループ内での、エリア展開領域の拡大及び事業領域の拡充を実現できると考えております。」

その後、「ひいては、当社グループの事業基盤の拡大による企業価値の向上につながるものと判断し」という記述が続き、この買収は今後の事業展開にも有利に働き、グループ全体の企業価値の向上につながると判断した旨が説明されております。

その他専門家コラム

最新のプロコメテーマ