2017年6月1日に株式会社ダイヤモンドダイニングは、株式会社商業藝術の発行済み全株式の取得手続きを完了し、同社を完全子会社としました(買収価額18億円)。これにより、商業藝術は、ダイヤモンドダイニンググループの傘下に入りました。
ダイヤモンドダイニングは、飲食店「わらやき屋」や「九州熱中屋」などの飲食事業のほか、アミューズメント店「BAGUS」などのアミューズメント事業を行う会社です。今回のM&A前の時点で、グループ傘下に273店を保有しています。
一方で、ダイヤモンドダイニンググループの傘下に入る商業藝術は、カフェ「chano-ma」、和食店の「茶々」ブランドをはじめとし、飲食事業を中心に約80店舗を展開しています。
本件のM&Aの目的としては、エリア展開の拡大がまず挙げられます。
外食産業の主要なターゲット層は、店舗近隣に居住する人が中心であるため、外食産業の業績は、店舗の展開エリアに強く依存します。
ダイヤモンドダイニンググループ傘下の店舗のうち約240店舗は、関東地方に所在しており、これまでには中国地方での店舗出店はありませんでした。一方で、商業藝術は、広島県を中心の一つとして、関西、福岡など広いエリアで事業を展開しています。
ダイヤモンドダイニンググループがこれまで展開していない中国地方を中心に事業を展開している商業藝術を傘下にすることにより、商圏を拡大することが今回のM&Aの目的の一つとされます。
次に、ブランドポートフォリオの拡大が挙げられます。
マルチブランドを展開するダイヤモンドダイニンググループは、居酒屋、コンセプトレストラン、ビアバーなどアルコール提供店舗の出店を中心に行っており、商業施設内でのノンアルコール事業への積極的な出店を行っていませんでした。今回、カフェ事業を広く展開する商業藝術を傘下にすることにより、アルコール提供店舗に依存することなく、景気変動・風評被害などのリスクに対応しやすくなります。
ダイヤモンドダイニンググループは、マルチブランドの強みを活かすべく、集客・販促手段としてDDマイルを整備していますので、ブランドポートフォリオの拡大は、DDマイル会員の増加にも寄与するものと思われます。
もちろん、ノウハウ・ブランドに関するシナジーの創出も目的の一つとして挙げられるでしょう。ただし、「業績が立地に依存しやすい」という飲食事業の特性を踏まえると、やはり上記の2点が主要な目的であると思われます。
このような目的による今回のM&Aにより、2018年2月期通期(2017年3月1日~2018年2月28日)の連結業績予想が上方修正され、売上高予想317億円のところ40%増の445億円に、営業利益予想15億円のところ20%増の18億円となっています。
ダイヤモンドダイニングによるM&Aは、ダイヤモンドダイニングが2015年4月に発表した「3ヵ年中期連結経営計画」によると、2015年2月期~2018年2月期を成長投資拡大期として位置づけ、2019年2月期以降の投資果実刈り取り期への助走期間としています。
今回のM&Aは、これに示された、関西圏でのドミナント化拡大・非アルコール業態によるポートフォリオ拡充という方針に従ったものといえます。いずれも重点項目として挙げられており、ダイヤモンドダイニングとしては、方針に従った買収であったと評価できるでしょう。
投資果実刈り取り期として位置づけられる2019年2月期までに、更なる店舗拡大施策やM&A展開、今回のM&Aのシナジー創出方法などに注目がされます。