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テーマバイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収

平成29年6月1日、株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP」という)及び株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下「やる気スイッチ」という)は、やる気スイッチの全株式を、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社に全株式を譲渡したと発表しました。

このニュースについてプロの視点で解説させていただきます。

「バイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収」

2017年7月12日
藤原宏高

弁護士

弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。
2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。
これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

1 バイアウトファンドとは

平成29年6月1日、株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP」という)及び株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下「やる気スイッチ」という)は、やる気スイッチの全株式を、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社に全株式を譲渡したと発表しました。

APは、バイアウトファンドと呼ばれている投資ファンドの運営会社で、多数の投資家から集めた資金をもってファンドを組成し、これまで株式会社エポック・ジャパン,株式会社 ICI 石井スポーツ,イチボシ株式会社、株式会社ネットプロテクションズなどに投資してきています。

バイアウトファンドは、投資家から集めた資金をもってファンドを組成し、ファンドが投資をしますが、5年から10年のサイクルで利益を得て回収するスキームのため、必ずファドは投資した資金を回収することが前提となっています(C D I  N E W S  L E T T E R  N O . 7 8 2007年06月 「ファンドに動かされる経営」と「ファンドを動かす経営」 田窪伸郎)。

APの発表では、2017年4月30日には、アドバンテッジパートナーズV号ファンドの募集を完了したようです(総額600億円の自己募集)。また、V号ファンドは、「日本で最も魅力的な市場セグメントであるミッドキャップ会社へのバイアウト投資を中心に、既に6社に投資しています。 投資先には、葬儀事業者である株式会社エポック・ジャパン、アウトドア専門小売業者である株式会社ICI石井スポーツ、オンライン決済サービスプロバイダーである株式会社ネットプロテクションズが含まれます 」と発表しています。

また、同様にAPの発表では、2017年4月28日には、株式会社カチタスの株式の34%(潜在株式ベース)を株式会社ニトリホールディングスに売却しています。

 

2 やる気スイッチの買収スキーム

両社の発表では、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社(以下「SPC」という)が、やる気スイッチの全株式を譲り受けたようです。

APのこれまでの投資でも,SPCを経由して株式の譲受を行うことが多いようです。今回のSPCには、やる気スイッチの松田正男社長および東証1部上場企業である株式会社リンクアンドモチベーションも一部出資しているようなので、将来このSPCを上場させる意図があるものと思われます。

なお、今回の買収金額は公表されておりませんが、一部では「数十億円と見られる」、「APを後ろ盾に事業規模を拡大し、5年以内の株式上場を目指す」との報道もあります(SankeiBiz 2017年6月2日 http://www.sankeibiz.jp/business/news/170602/bsd1706020500005-n1.htm)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3 買収の意図

APは、「やる気スイッチグループは今後、現役職員・APファンドが一体となって「第二の創業」を進めるとともに、将来の株式上場により、永続する企業として更なる発展を目指していく方針です」と発表しています。

「第二の創業」の意味は定かではありませんが、「リンクア ンドモチベーショングループが得意とする外国語ネイティブ講師の採用・育成・生活支援機能の提供を通じ、やる気スイッチグループが展開する英語教育関連事業の成長・発展への協力が期待されます。」とか、「APファンドは、やる気スイッチグループがこれまで築き上げてきた事業基盤を高く評価しており、今後、経営基盤の一層の強化と各ブランドの更なる発展を支援し、当グループの永続的な成長に貢献して参ります。」 と発表していることから、資本力及びグループ力を強化して、新たな創業を行うとの強い意欲が感じ取れます。

少子化時代の個別指導塾・英会話スクール等の単なる生き残り策ではなく、事業規模を拡大し、上場した上での安定経営を目指しているものと考えられます。もちろん、その際には、バイアウトファンドとしては、持株を放出して投資資金は回収されることになります。

以上

その他専門家コラム

  • 「やる気スイッチグループHDの買収とFCの動向」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「アドバンテッジパートナーズのやる気スイッチグループ買収の注目点は何か?」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。