プロコメ

2017.7.12

バイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収

2017.7.12

バイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収

藤原宏高
藤原宏高 弁護士 プロフィールを見る

1 バイアウトファンドとは

平成29年6月1日、株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP」という)及び株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下「やる気スイッチ」という)は、やる気スイッチの全株式を、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社に全株式を譲渡したと発表しました。

APは、バイアウトファンドと呼ばれている投資ファンドの運営会社で、多数の投資家から集めた資金をもってファンドを組成し、これまで株式会社エポック・ジャパン,株式会社 ICI 石井スポーツ,イチボシ株式会社、株式会社ネットプロテクションズなどに投資してきています。

バイアウトファンドは、投資家から集めた資金をもってファンドを組成し、ファンドが投資をしますが、5年から10年のサイクルで利益を得て回収するスキームのため、必ずファドは投資した資金を回収することが前提となっています(C D I  N E W S  L E T T E R  N O . 7 8 2007年06月 「ファンドに動かされる経営」と「ファンドを動かす経営」 田窪伸郎)。

APの発表では、2017年4月30日には、アドバンテッジパートナーズV号ファンドの募集を完了したようです(総額600億円の自己募集)。また、V号ファンドは、「日本で最も魅力的な市場セグメントであるミッドキャップ会社へのバイアウト投資を中心に、既に6社に投資しています。 投資先には、葬儀事業者である株式会社エポック・ジャパン、アウトドア専門小売業者である株式会社ICI石井スポーツ、オンライン決済サービスプロバイダーである株式会社ネットプロテクションズが含まれます 」と発表しています。

また、同様にAPの発表では、2017年4月28日には、株式会社カチタスの株式の34%(潜在株式ベース)を株式会社ニトリホールディングスに売却しています。

2 やる気スイッチの買収スキーム

両社の発表では、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社(以下「SPC」という)が、やる気スイッチの全株式を譲り受けたようです。

APのこれまでの投資でも,SPCを経由して株式の譲受を行うことが多いようです。今回のSPCには、やる気スイッチの松田正男社長および東証1部上場企業である株式会社リンクアンドモチベーションも一部出資しているようなので、将来このSPCを上場させる意図があるものと思われます。

なお、今回の買収金額は公表されておりませんが、一部では「数十億円と見られる」、「APを後ろ盾に事業規模を拡大し、5年以内の株式上場を目指す」との報道もあります(SankeiBiz 2017年6月2日 http://www.sankeibiz.jp/business/news/170602/bsd1706020500005-n1.htm)。

3 買収の意図

APは、「やる気スイッチグループは今後、現役職員・APファンドが一体となって「第二の創業」を進めるとともに、将来の株式上場により、永続する企業として更なる発展を目指していく方針です」と発表しています。

「第二の創業」の意味は定かではありませんが、「リンクア ンドモチベーショングループが得意とする外国語ネイティブ講師の採用・育成・生活支援機能の提供を通じ、やる気スイッチグループが展開する英語教育関連事業の成長・発展への協力が期待されます。」とか、「APファンドは、やる気スイッチグループがこれまで築き上げてきた事業基盤を高く評価しており、今後、経営基盤の一層の強化と各ブランドの更なる発展を支援し、当グループの永続的な成長に貢献して参ります。」 と発表していることから、資本力及びグループ力を強化して、新たな創業を行うとの強い意欲が感じ取れます。

少子化時代の個別指導塾・英会話スクール等の単なる生き残り策ではなく、事業規模を拡大し、上場した上での安定経営を目指しているものと考えられます。もちろん、その際には、バイアウトファンドとしては、持株を放出して投資資金は回収されることになります。

以上

その他専門家コラム

最新のプロコメテーマ